<激化するEV開発競争>日本車はドイツ・中国勢に劣後=専業メーカー先行、巻き返せるか 

アジアの窓    2022年1月27日(木) 6時50分

拡大

自動車業界の中では、EV専業メーカーが既存の自動車メーカーを凌駕しているように見える。この流れが今後も続くのか?あるいは出遅れた伝統的メーカーが巻き返しを図れるのか?写真は中国のテスラ販売店。

世界各地で頻発する自然災害の原因が、排出された二酸化炭素の温室効果による地球の平均気温の上昇にあると知らされて以来、二酸化炭素を排出しない電気自動車が、俄然注目されるようになった。昨年11月のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議で自動車に課せられた目標は、「2040年までにZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)100%」の達成である。

世界の自動車市場のEV化はどの程度進んでいるのか?以下の数値は、昨年の販売台数だが、ドイツ、中国と比較すると、日本のEV化の遅れが特に目立つ。

全体 / 対前年比 / EV / 台数 / シェア

ドイツ / 262万台 / 10.1%減 / 35万台 / 13.6%

中国 / 205万台 / 4.5%増 / 24万台 / 11.9%

日本 / 367万台 / 3.5%減 / 2万台 / 0.6%

(1)日本市場の現状

◆日本ではどういう人がEVを買っているのか?

*環境問題に意識が高く金銭的に余裕のある人。

*現存ガソリンスタンド(GS)の寿命が来るが、規制強化によって建て替えコストが高くなりGSの廃業が進む。田舎だけでなく都会でもGSが減リ、給油が不便となるため自宅駐車場での充電を考える人が増える。

*全国ベースで15%存在する太陽光発電設備を自宅に設置している層。特に設置後10年経過すると、売電価格が約50円/kWhから10円/kWhに下がるため自家消費電力を増やしたい層。

EV購入時に同時購入するV2H(家庭用電源への有効活用)設備は補助金対象なので、EV購入が増える。

◆EVユーザーにとってのデメリット

*一番大きなデメリットは航続距離、ただし新しいEVは軽を除くとほぼ 全車400km以上を確保しており、通常の使い方ならほぼ問題にならない。

*二番目のデメリットは充電時間。急速充電でも30分は必要。水素の3分、ガソリンの5分に比べると長い。ただし毎日自宅の駐車場で、夜間に充電すれば年に数回の遠出の時のみ問題。

*他の燃料に無いデメリットとしては駐車時の放電がある。テスラで1~4%/1日と言われており、4%とすると25日で満充電1回分の電力が無駄になる。

*デメリットの最後は電力の逼迫の要因となりうる点だ。というのは、一般家庭の電力消費量は夏場でも1日15kWh程度。EVの電費を6.5km/kWhと仮定して月1000km走るとすると1日当たりの電気消費量は約5kWh。EVが3台増えると1所帯分の消費電力が増える計算になる。

◆EVユーザーにとってのメリット

*走行コストの安さ:HEV(ハイブリッドEV)でもICE(内燃機関)でもガソリンを使うと燃費がリッター20kmとして7.5円/km。リッター30kmだと5円/km(ガソリン1L=150円の前提)。水素のミライだと9円/kmだが、EVはリーフの例で、4円/km。だいぶ安い。

*税金面での優遇:いまのところ2回目の車検まで重量税はタダ。自動車税も初年度はタダ。

(2)日本市場でのEV化の動き

*現在日本でのEVは、日産リーフが中心で、他はテスラがほとんど。来年は日産&三菱協業の軽EVとトヨタ&スバル協業の小型SUVが発売されるが、生産体制に制約がある。

*トヨタが大幅に上方修正したEV計画を発表:2030年のEV世界販売目標を250万台から350万台に。レクサスは2035年に100%EV化する計画である。

*韓国現代は、欧州カーオブザイヤーを獲った「IONIC5」で日本市場再上陸を計画中。

(3)日本でのEV化の動きを阻害している要因

1,少ない選択肢:日本では、HEVやPHEVなどのEVは出回っているものの、ZEVであるBEV(バッテリーEV)となると、日産リーフと米国のテスラしかない。

2,雇用問題:EVは従来のICE車に比べ、かなり部品点数が少なくなり、人手もそれに比例して少なくて済む。既存の自動車メーカーにとってEVへの切り替えには労働問題が絡んでくるため、慎重にならざるを得ない。

3,輸出:日本の自動車メーカーの輸出先には、東南アジア、アフリカ、南米等が含まれており、広がっており、これら地域のEV化はそれほど進んでおらず、ICE車を必要としている。

◆EV専業メーカーが先行、改良余地多い

自動車としてのEVにはまだかなりの改良の余地があるように思うが、自動車業界の中では、EV専業メーカーが、既存の自動車メーカーを凌駕しているように見える。この流れが今後も続いていくのか、あるいは出遅れた伝統的メーカーが巻き返しを図れるのか、多様な業種からの参入者を交えた競合となるため、今までにない競合になると思われるが、どのような競合が展開されるか、注目していきたい。

■筆者プロフィール:多賀谷秀保 「アジアの窓」顧問

元三菱自動車工業社長。東京大学経済学部卒。オランダ、ドイツ、米国の12年にわたる駐在を通じ、海外市場の開拓、および、他社との提携に尽力。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携