<コラム・莫邦富の情報潮干狩り>中国の試乗ブームに見る無人運転タクシー時代の到来

莫邦富    2021年1月15日(金) 6時0分

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新しい技術に飛びつきやすい中国も車両の無人運転時代を迎える足取りを速めている。写真は北京。

それでも、利用希望者が多く、予約アプリにアクセスしてもなかなか予約がうまく成立できないケースが目立つ。マッキンゼー社の予測によると、中国は世界最大の無人運転市場になる可能性があり、2030年までに無人運転車の総売上高は2300億ドル(約23兆9000億円)、無人運転による移動サービスの売上額は2600億ドル(約27兆円)に達するという。

■20年は無人運転タクシー試乗元年、では商業運営はいつに?

中国のメディアも、無人運転タクシーの商業化運営にはまだ相当時間がかかるとみている。なかには、商業化運営の実現は早くても3年程度かかり、それまでは赤字との我慢比べが必要だと指摘する声もある。

19年9月、長沙市で無人運転タクシーのテスト運営を開始した。第1陣の45台は検索エンジンを主要業務としたバイドゥ(百度)が開発にかかわったApollo Robotaxiである。ただ、利用者が指定されていた。20年4月になって、これまでのテストの成果を受けて、一般市民への試乗開放に踏み切った。

19年11月末、広州市の広州開発区と黄浦区の144.65平方キロメートル範囲に及ぶエリア内の道路を無人運転タクシーの試験運行に開放した。これは中国の第一級都市で無人運転移動サービスを開始した初の実例となる。

20年6月末、ネットタクシー会社の滴滴も無人運転業界に参入し、上海市嘉定区で無人運転タクシーの試乗を始めた。

各地の無人運転タクシーの外観はほぼ同じだ。車体上部には、レーザーレーダー、GPSアンテナ、前方カメラ、側方カメラ、後方カメラ、超音波レーダー、ミリ波レーダーなどの高さ約60センチのセンサー設備が搭載されている。車の助手席には安全ボックスが置かれており、その中には消火器などの道具が備え付けられている。乗客は後部座席にしか着席できないようになっている。

こうした市場の動きを受け、交通運輸部(国土交通省に当たる)も、安全を確保する前提の下、法に基づきコンプライアンスに準拠して試行を展開し、自動運転技術の発展と応用の推進を加速すると積極的な態度を示し、広州、長沙、上海、武漢、滄州、北京、蘇州などの都市で展開されている無人運転の試験運営を積極的に支援している。

20年8月6日、世界初の自動運転の商業化規則である「無人運転タクシー運営規範と安全管理要求」が立案され、滴滴、百度などの中国企業が関連部門と検討している。現在、30余りの省・区・市が無人運転開放道路試乗業務の展開を許可している。

こうした動きを見て、20年は中国にとって無人運転タクシー試乗元年と記録されるだろうという声も出ている。25年までに無人運転タクシーの本格的な商業運営が実現できるだろうというのが大方の見方だ。無人運転車時代の訪れが確実に一歩一歩と近づいてくる。

■筆者プロフィール:莫邦富

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。
知日派ジャーナリストとして、政治経済から社会文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定着させた。また日中企業やその製品、技術の海外進出・販売・ブランディング戦略、インバウンド事業に関して積極的にアドバイスを行っており、日中両国の経済交流や人的交流に精力的に取り組んでいる。
ダイヤモンド・オンラインにて「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」、時事通信社の時事速報にて「莫邦富の『以心伝心』講座」、日本経済新聞中文網にて「莫邦富的日本管窺」などのコラムを連載中。
シチズン時計株式会社顧問、西安市政府国際顧問などを務める。

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