<コラム>日韓請求権協定、一般の韓国人はどう見ている?

木口 政樹    2018年11月6日(火) 21時20分

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韓国の最近の話題をあれこれサマライズしてみたい。写真は韓国・ソウル。

日本政府ならびに日本人の心情としては、1965年の請求権協定を覆す判決じゃないかと批判したい気持ちが強かろう。韓国でもそのような立場でものを言う人がいるくらいだ。「解決している問題なのになんでまた今になって蒸し返してくるのか」という人(韓国人)が実際にいるのだ。

しかし一般的な韓国の人の立場としては、1965年の協定で全て解決済みと考えている人は少数派であろう。何事であれ、徹底して白黒をはっきりさせるというのがこちらのスタイルだ。

「#MeToo」問題にしても、日本での盛り上がりはそれほどでもないけど、こちら韓国は今年の1月に女性検事の暴露を皮切りに、あとからあとから徹底して提起されてきた。今もその動きは続いているし、それは非常にいいことだと筆者は思っている。こういう問題をうやむやにして流してしまうよりは、徹底して根絶できればそれに越したことはないからだ。

この完膚なきまでたたきのめす徹底的傾向は、韓国の誇らしき特性である。一歩間違えば世の中から総スカンをくらうものとなることも銘記すべしとは思うけれど。「少女像」ならぬ「徴用工像」の設置を考えている市民団体もある。韓国政府がどのような扱いをしてくるか、注目せざるを得ない。

【板門店のJSA非武装化】

10月25日、板門店のJSA非武装化が完了した。JSAとは「Joint Security Area」のことで、共同警備区域と訳されている。このJSAをめぐっては、70年代の「斧・蛮行事件(ポプラ事件)」を皮切りに、最近では2017年の北朝鮮軍のオ・チョンソン氏の脱出事件など、さまざまの事件が起こっている。

「斧・蛮行事件」というのは、1976年8月18日、米軍6人と韓国軍5人が民間労働者5人とともにポプラの枝を除去する作業をしていた時、北朝鮮軍の奇襲攻撃を受けた事件。 この奇襲で板門店共同警備区域内のUN軍側第3警戒所付近で作業していた米軍将校2人が斧で殺害され、警備兵9人が重軽傷を負った事件である。この事件を契機として板門店共同警備区域が南と北に分かれた。

このJSAが非武装化され、11月の中旬ごろからは観光客が自由に観光できる体制となる。非核化問題は依然として進展する流れが見えてこないし、南北共同で北朝鮮の鉄道線路の点検をするという合意も現時点ではどっかに消えてしまった感が強い中、このJSAの非武装化は歴史的に見てもかなりのウエイトを占める価値を持つ。

4月の南北首脳会談の後、米朝首脳会談も成功を収めるなど表面的にはえっさほいさの大繁盛みたいに見えながら、なかなか軌道に乗らない北朝鮮問題ではあるけれど、アリさんの歩みほどにはプラスの方向に進んでいると見てよいものと思われる。JSAの非武装化がその好例。

今年に入ってからの北の動きを見ていると、金正日氏のときとは違って金正恩氏になってやはりかなり変わってきたな、これまでとは違うな、と思われることも多々あったけれど、どうしてどうして、北はそんなに簡単に一筋縄ではいかないことは痛いほどわかった。

やっぱりそれでも違うことは違う。金正恩氏はやると決めたことはやる男である。そのへんのところをうまく見極め、駆け引き上手に渡り合っていけば、絶対不可能と思われた南北統一も、夢のまた夢という次元の話でもなくなってくるであろう。宇宙船が無限遠からターゲット惑星の軌道に静かに静かに入っていくように、南と北も、無限遠から統一の軌道に知らずのうちに入っているのかもしれない。

■筆者プロフィール:木口 政樹

イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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