「お降りのお客様は飛び降りてください」=中国で高速鉄道をめぐる争いが表面化

月刊中国ニュース    2017年11月5日(日) 16時0分

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北京と九龍を結ぶ「京九高速鉄道」をめぐり表面化した地方都市の争い。そこには中央と地方政府、そして住民の網の目のように絡み合う目算と思惑があった。写真は河南省を走行する高速列車。

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「九問」はさらに、「東線案は『地級市を考慮すべし』とする高速鉄道建設の原則からも逸脱している。雄安―商丘間にある5つの地級市のうち、唯一濮陽市のみ駅の設置予定がない。かわりに設置予定の山東省陽谷県省境付近の陽谷駅は、経済拠点からも遠く、旅客数も少ない」とも述べている。8月8日、濮陽市鉄道建設調整弁公室は「ネットユーザー宛て公開書簡」で、現在提案されている雄安-商丘間のルートと設置駅はFS・技術論証の段階にあり、最終決定ではないと発表、「当弁公室は市の要求を積極的に伝え、台前西駅設置実現に向け、さらに努力していく」とした。

■業績を上げたい地方政府、高速鉄道を渇望する住民

取材では、中国高速鉄道網の拡大にともない、「高速鉄道をめぐる『資源』を政治経済上の利益に変える手腕がますます評価されるようになった」との意見が多く聞かれた。国家発展改革委員会専門家グループの一員であり、鉄道部科学研究院の元責任者は、ここ数年、一部の地方が高速鉄道駅の獲得に躍起になる状況が確かに存在しており、これには主に二つの理由があると語った。「ひとつは一部の官僚が政治業績を上げるため他地域との競争に血眼になっている点、もうひとつは高速鉄道を正しく理解しておらず、高速鉄道がすべての問題を解決してくれると勘違いしている幹部や市民が多い点だ」。

中国鉄道のGSM-R(国際的な鉄道無線通信システム)主席専門家を務める北京交通大学の鍾章隊教授は言う。「高速鉄道の経済効果は著しく、ヒト・モノの流れを強力にリードする。都市のイメージアップにも大きく貢献するし、不動産業も活性化する。地方官僚が高速鉄道頼みで政治業績を上げようとする所以だ」。

国家発展改革委員会のFS論証会に多く参加してきた前述の鉄道部研究院の元責任者も、「ルート選定や駅の設置をめぐって鉄道建設サイドと地方政府との間に対立が生じるのは、論証会では日常茶飯事」だという。

京九高速鉄道の駅招致をめぐっては、濮陽市以外にも多くの地方都市が並々ならぬ熱を上げた。昨年の両会(全人代と全国政治協商会議)期間中には、安徽省六安市の市長が六安駅の設置を提起したし、今年の全人代では、山東省の代表31人が地域活性化のため、聊城市とカ沢市の中間にある梁山県に駅設置を求める意見書を提出している。

隣接する都市間では、高速鉄道駅の争奪戦はさらに激しいものとなる。鄭渝高速鉄道(河南省鄭州重慶市を結ぶ鉄道)の計画が2009年に持ち上がった際、5年にわたって繰り広げられた湖北省十堰市と襄陽市との争いはその最たるものだ。政治的な業績に加え、市民からの圧力も、現地の為政者が高速鉄道招致に躍起になる理由のひとつとなっている。滬昆高速鉄道(上海市と雲南省昆明市を結ぶ鉄道)の計画段階では、湖南省の邵陽市と婁底市が激しく競ったが、その際、10万人の邵陽市民から「鉄道が招致できなければ書記も市長も辞職せよ」との訴えが起こり、結局、両方の市に駅が設置されることになった。

■一本の鉄道ですべてを解決するのは不可能

「高速鉄道の敷設は厳格な科学的計画に基づくべきであり、地方の利益を優先させるべきではない」。取材ではこんな答えが多く聞かれた。

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