<コラム>中国が対ベトナム・フィリピン関係を急速修復、狙いは「台湾・蔡英文政権締め付け」か

如月隼人    2017年5月20日(土) 9時50分

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中国がベトナムやフィリピンとの関係を急速に回復させている。中国は蔡英文政権下の台湾に圧力をかけることを、目下のところ最優先課題と認識していると言ってよい。資料写真。

中国にとって、南シナ海の問題を理由に米艦隊がやってくれば、台湾問題についても圧力を受けることになる。また、中国が対立する国が台湾と接近する事態が現実化したのでは、習近平政権が「外交に失敗」と一般庶民から、さらには共産党内部の対抗勢力から批判される恐れもある。

そのため中国は、外交において米国などとの経済問題を除いては「台湾締め付け」に精力を注ぐと考えられる。

中国も、台湾の蔡英文総統が今さら「92コンセンサス」を簡単に認めるとは思っていないだろう。とすれば、台湾における蔡英文政権の支持率をできるだけ低下させ、次回の総統選で民進党を政権の座から降ろし、中国と融和的な政権を発足させることを狙うはずだ。そのために外交攻勢は有効だ。国際社会で台湾が孤立すればするほど、台湾での民進党政権に対する不安や不信は増していく。

なお、中国は台湾に接近する国に対しても厳しく反発するはずだ。最近では日本の安倍政権が台湾への接近を図っているとして強く警戒している。現状では中国として容認できる範囲にとどめるのかどうかを見極めようとしていると考えられる。

なお、中国による台湾に対しての締め付けについては、台湾観光客や台湾の農産物買い入れの事実上の規制は強化したとしても、中国に進出している台湾企業への圧力はあったとしても一定の限界内に留まる公算が高い。対中ビジネスに携わる台湾企業や台湾人は、中国にとって中台関係を緊密化する「味方」であり、「中国の政策による被害者」にしてしまったのでは協力関係を失うことにつながる上に、自国の関連産業にも悪影響が出かねない。しかも対中投資が政治環境に大きく左右されると判断されれば、「外国資本の中国離れ」を促進する恐れもあるからだ。

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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