<コラム>中国が対ベトナム・フィリピン関係を急速修復、狙いは「台湾・蔡英文政権締め付け」か

如月隼人    2017年5月20日(土) 9時50分

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中国がベトナムやフィリピンとの関係を急速に回復させている。中国は蔡英文政権下の台湾に圧力をかけることを、目下のところ最優先課題と認識していると言ってよい。資料写真。

中国がベトナムやフィリピンとの関係を急速に回復させている。両国と「一帯一路」など経済協力を強化し、さらに18日には東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国高官との会議で「南シナ海行動規範」の枠組み制定で合意した。中国は蔡英文政権下の台湾に圧力をかけることを、目下のところ最優先課題と認識していると言ってよい。

まず注目すべきは、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席が5月11日から15日まで中国を公式訪問して「一帯一路国際サミット」に出席し、中国との共同声明を発表したことだ。同声明は南シナ海など領有権や権益が絡む両国が対立をエスカレートさせないことを盛り込んだ。一方で、経済関係においてはベトナムから中国への農産物輸出を拡大することや、中国企業のベトナムへの投資を加速する方針を示した。

さらに、「ベトナムは一つの中国政策を支持し、(台湾海峡)両岸関係の平和的な発展と中国統一の大業を支持する。いかなる形式の『台湾独立』分裂活動にも断固として反対する。ベトナムは台湾と、いかなる公式関係も発展させない」との内容を改めて盛り込んだ。

フィリピンのドゥテルテ大統領も「一帯一路国際サミット」に出席。15日に習近平国家主席と会談した際には南シナ海の問題を平和的な対話を通じて適切に処理するとの考えを示した。またドゥテルテ大統領は同会談で、中国からインフラ建設のため5億元(約80億円)の大型開発援助を取り付けた。また18日には、貴州省貴陽市で開催された中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国高官による会議が「南シナ海行動規範」の枠組みを制定することで合意した。

中国とASEANは2002年「南シナ海行動宣言」を取り決め、南シナ海の領有権や各種権益を巡る対立のエスカレートを防止するために、航行や飛行の自由を認め、無人の島や岩礁などに居住したり建設作業を行わないことを申し合わせた。

しかし同「宣言」は拘束力を持たず、中国やベトナム、フィリピンは相手国の動きを「宣言に違反する」と非難しつつ自らは埋め立てや駐屯する軍の増員を進めた。

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