<コラム>中国で「世にも奇妙」な政治イベント=台湾2.28事件を「愛国運動」と評価

如月隼人    2017年3月9日(木) 20時0分

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やや旧聞になってしまったが、中国で「世にも奇妙」な座談会が行われたのでご紹介したい。

奇妙なのは、中国側が2.28事件を「愛国民主運動」と評価したことだ。その経緯を素直に読む限り、2.28事件は中国の支配に対する闘争だった。中国側が2.28事件を評価することも、国共が鋭く対立していた時代ならば理解できる。民衆が国民党当局に反発することは、国民党の能力欠如が原因と主張できるからだ。

しかし現在の中国は、台湾側の「中国と距離を置く」動きを極端に警戒している。台湾における「反中国運動」の先駆けとも言える2.28事件を、なぜ高く評価するのか。その理由は、中国政府の対台湾窓口機関である国務院台湾工作弁公室の2月22日の発表にあった。

同発表は2.28事件について「台湾同胞が専制統治に反抗し、基本的権利を勝ち取ろうとした正義の行動であり、中国人民の解放闘争の一部分だった」と論じた上で「長期にわたりこの事件は台湾の独立分裂勢力に意図的に利用されてきた。彼らは歴史事実を歪曲し、省籍の矛盾を挑発し、台湾のエスニックグループを引き裂き、社会の対立を作り出し、台湾独立分裂活動を目立たせてきた。その下心は実に卑劣である」と主張した。

中国では、民進党を含む台湾の独立派が2.28事件を「反中国」の気運を高めるため政治的に利用しているとの見方があった。上記発言は、中国当局の見方に沿った非難だ。

一方の台湾では1995年の李登輝総統以来、歴代総統が2.28事件について謝罪してきた(実際には李総統は2.28事件では命を危険にさらされた1人だった)。そして蔡英文総統は就任後初の今年の2月28日の記念式典で、同事件の責任を追及する方針を示した。

中国側(大陸側)が最も嫌がるのは、台湾において2.28事件の関心が再び高まることが、台湾社会における中国警戒感を高めることだ。そのため、論理に無理があっても「外省人と本省人(台湾人)の対立」との構図を否定し、「専制統治に対する民衆の戦い」との側面を強調していると考えてよい。

3月5日現在、中国大陸メディアは蔡総統の「事件の責任追及」発言をあまり伝えていない。中国当局にとっては同問題が関心を集めること自体が不利であるため、報道機関に圧力をかけている可能性もある。(3月5日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大学教養学部基礎科学科卒。日本では数学とその他の科学分野を勉強し、その後は北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。中国については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結局は得」が信条。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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