余晋林 2016年8月15日(月) 23時40分
ポートレイトをメインに創作を続ける写真家の余晋林が捉えた秋の自然風景は、初めて目にする光景に湧きあがる高揚感が生き生きと鮮やかな色彩になって現われている。それはすでに写実としての写真作品を超えて彼自身の心象風景を映し出した絵画作品のような趣だ。
20年近いキャリアの中で、ポートレイトをメインに創作を続ける写真家の余晋林(ユー・ジンリン)。常に新しいアイディアと強い個性を追求する作家だが、初めて着手した風景写真は、パリっとした画面の中に温かみある自然の色彩が溢れる作品に仕上がっている。
08年秋の作品「碧雲の空、黄葉の大地、格別の秋景」で、余晋林は十数年にも及ぶキャリアの中で三脚とリモートレリーズを初めて用い、初めて訪れた北京で、初の風景写真に挑戦した。作者にとって多くの“初めて”が重なった作品には、未知のものに対する高揚感が、生き生きと鮮やかな色彩になって表れている。しかし、作者の心の高まりに反して、秋の大地は思いのほか寡黙に、落ち着き払って作者を迎えたという。肌に感じる空気の冷たさ、その静寂に秋の美しさを享受しながらも、彼がシャッターを切った風景にはこの上もない躍動感やほとばしる喜びが溢れている。それはすでに写実としての写真作品を超えて、彼自身の心象風景を映し出した絵画作品のような趣だ。
日の光を受けて光の粒子と化した黄葉が、遠近感を飛び越えて、画面の最前面に突き刺さってくる。油彩画のようなテクスチャーと相まって、生命の宿す体温を孕んだような暖かい作品となっている。(文/山上仁奈)
●余晋林(ユー・ジンリン)
中国・江西省出身の写真家。江西省南昌市在住。「琳十二」の名でも活動している。プロカメラマンである父親の影響を受け、卒業後に写真家の道に進む。05年よりデジタルカメラを使用。記録写真ではなく、芸術性を重視している。代表作に「碧雲の空、黄葉の大地、格別の秋景」「夢が始まった場所」「仮面の女体」など。
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小野Jesse
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