安倍首相の総選挙前倒し、その狙いは?―中国メディア

Record China    2014年11月21日(金) 15時46分

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18日、安倍首相は首相官邸で記者会見し、21日に衆院を解散すると表明した。衆院選は「12月2日公示―14日投開票」の日程で実施する。写真は国会議事堂。

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2014年11月19日、安倍晋三首相は今月18日夜、首相官邸で記者会見し、21日に衆院を解散すると表明した。衆院選は「12月2日公示―14日投開票」の日程で実施する。前回2012年12月16日の選挙で選ばれた衆院議員の4年の任期は2016年12月までで、次の選挙は同月に行われるはずだった。今年12月に選挙が行われるのは、2年前倒しでの選挙となる。日本の衆院選は、各政党が政権を争う選挙で、首相を選ぶ選挙ともなる日本の政界で最も重要な選挙である。安倍首相が衆院解散と総選挙前倒しを突如打ち出したのはなぜなのか。(文:厖中鵬(パン・ジョンポン)中国社会科学院日本研究所研究者)

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第一の理由としては、「アベノミクス」が不利な局面に直面していることに対応しなければならなかったことが考えられる。2012年12月末の第二次安倍内閣発足後に推進された「アベノミクス」は、長年続いた不景気の泥沼から日本を脱出させることが狙いだった。だが今年4月、安倍首相が消費税を5%から8%に上げて半年余りの現在、日本経済は復興の兆しを見せないどころか、足踏みを続けており成長力を欠いたままである。増税の後遺症が拡大すれば、株価の下落や経済減速などでさらなる不景気を招きかねない。不景気は「アベノミクス」への庶民の失望を拡大させ、庶民の失望や不満は安倍政権の根幹を直接揺るがす。

日本の政界では増税は常に難題だった。1989年に竹下登内閣が消費税3%の導入を決めた際には、自民党は同年の参院選で大敗した。1997年に橋本龍太郎内閣が消費税を5%に引き上げると、自民党は翌年の参院選で惨敗した。2012年には野田佳彦首相が内閣改造して消費税増税を進めたが、結局は退陣を余儀なくされた。安倍首相の衆院選前倒しに踏み切ったのも、増税が「導火線」だ。日本の消費税増税法案は、2014年4月と2015年10月の二段階で消費税率を8%と10%の順で引き上げることを規定している。第一段階の増税効果は芳しくなく、第二段階の増税も大きな議論を呼んでいる。もし10%への増税が計画通り実施できなければ、公約違反だとの批判が起こる。増税を実施すれば、低迷した日本経済にとっては冒険的な措置となり、経済のさらなる悪化を招きかねない。

このジレンマの下、安倍首相は解散総選挙という禁じ手で「アベノミクス」への庶民の批判をかわすことを余儀なくされた。「増税」に反対意見があるなら、総選挙という厳粛な手段で有権者の判断を仰ぐ必要がある。安倍首相の自民党が勝てば「アベノミクス」実行が支持されたことになり、自民党が負ければ「アベノミクス」は日本経済を救う特効薬としては認められなかったということになる。

第二の理由としては、安倍内閣の閣僚のスキャンダル続出のマイナス影響を減殺する狙いが想定される。安倍内閣は今年9月に改造を行ったが、入閣したばかりの新人に相次いでスキャンダルが持ち上がり、極右勢力との関係が取り沙汰されたり、出所不明の政治献金が問題化したりした。とりわけ経済産業大臣の任命では安倍首相の責任は否定できない。9月に任命された小渕優子大臣は政治献金問題で辞職し、代わって就任した宮沢洋一氏にも就任3日足らずでスキャンダルが暴露された。宮沢氏のスキャンダルは金銭だけでなく、口に出すのもはばかられるスキャンダルにもかかわっており、宮沢氏個人の問題以上に安倍内閣と首相本人の人材起用の誤りとしてもクローズアップされている。野党が追及すれば、安倍首相の顔は立たなくなり、首相としての威信は損なわれる。増税に対する関心が全国的に高いのを利用して「増税の是非」を争点に解散総選挙に打って出れば、野党と世論の注意を総選挙に移し、閣僚スキャンダル続出のマイナス影響を最小化できる。

第三の理由としては、政権基盤を強化し、長期政権の実現に備えるという意図が考えられる。安倍内閣の支持率は発足当時から大きく下がり、45%から54%にとどまっている。安倍首相やその周辺からは、少なくとも6年以上の長期政権を期待する声があるが、不景気と閣僚スキャンダルの続出によって、このままの安倍内閣では支持率が下がるばかりであることが予想される。支持率が30%以下の「危険水域」に入れば、野党の倒閣の機運も高まる。これを避けるにはすばやい措置が必要で、解散するなら早い方がよい。支持率の安定している今に乗じて解散総選挙を行えば、野党の足並みは乱れ、野党は十分な準備期間なしに総選挙に突入することになる。総選挙で安倍首相の自民党が勝てば、安倍首相の指導力と求心力は高まり、長期政権の実現に堅固な政治的土台を与えることになる。

▼日本の政界は選挙へ、見所は?

第一に、今回の衆院選挙は、沖縄駐留米軍の普天間基地の移設問題が焦点の一つとなる。沖縄県知事選では、宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する無党派新人の翁長雄志・前那覇市長が、移設手続きを進めて三選をねらった現職・仲井真弘多氏らを破り、新沖縄県知事に選ばれた。与党自民党が強く押していた仲井真候補の落選は衆院選にも影響を与える。ごたごたが続いていた普天間基地移設問題は、有権者の注目も高く、翁長知事は総選挙でも基地問題をアピールし、普天間基地移設問題の決着をはかるものと見られる。基地移設問題は、根本的には日米軍事同盟関係にかかわる問題であり、総選挙での基地議論を米国がいかにとらえ、普天間基地移設を日米がいかに処理するかが、大きな見所の一つとなる。

第二に、今回の衆院選挙が日本の未来の政局に与える影響。日本の政界では現在、自民党が優位を占めており、予想外の事態が起こらなければ、安倍首相の自民党が勝利する可能性が高い。ただ自民党と野党の得票率の分布は注目に値する。自民党が野党を大きく引き離して勝つのか、自民党と野党の議席数の差はそれほど開かないのか。日本の未来の政局はいかなる動きを見せるか。「ポスト安倍時代」の幕開けとなるとすれば、自民党内で誰が後継者となるのか。注目すべき点はたくさんある。

第三に、今回の衆院選挙は、安倍首相の進める「集団的自衛権の解禁」も焦点の一つとなり、軍備の拡大や強化に向かう安倍首相の路線を試す機会となる。選挙の過程で、各政党と有権者が集団的自衛権解禁という敏感な問題をいかに議論し、将来の憲法改正の問題にいかに取り組むかが見所となる。また総選挙後、安倍首相が再任した場合、軍備の拡大や強化の路線がどう変化し、どう継続していくかも注目点と言える。(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)

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