八牧浩行 2014年11月12日(水) 5時30分
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「マイナンバー(国民共通番号)制」が、2016年1月から日本で導入される。当初は税、社会保障、防災分野だけだが、段階的に医療・福祉・金融・旅券分野まで利用範囲が拡大される。大きな利便性が期待できるが、個人情報漏えい防止など課題も多い。写真は東京・八重洲。
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「マイナンバー(国民共通番号)制」が、2016年1月から日本で導入される。当初は税、社会保障、防災の三分野だけだが、段階的に医療・福祉・金融・各種免許・旅券分野まで利用範囲が拡大される。大きな利便性が期待できるが、個人情報漏えいの懸念の払しょくなど課題も多い。アジアでは韓国で既に導入されているが、大半の国は未導入。14億人の人口を抱える中国も研究しているとされ、日本で成功すれば導入への機運が高まろう。
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◆戸籍、健康保険…各種カードと一元化
共通番号制度は、複数の機関に存在する個人の情報が同じ人物の情報であることを確認・証明するもの。所得や社会保障の受給実態を把握し、個人や世帯の状況に応じた社会保障給付を実現することが目的。低所得階層に負担割合が大きい消費税増税の弊害を和らげるための「給付付き税額控除制度」の必須ツールでもある。年金などの社会保険料や税務などの情報を一括管理することにより、行政サービスの効率化や社会保険料の未納を防ぐ狙いもある。
利用範囲は2016年1月1日の導入時に、税と社会保障、防災の3分野に限定されるが、順次様々な事項が追加される。戸籍や旅券(パスポート)事務、預貯金付番(ペイオフ時の名寄せ、口座名義人の特定・現況確認など)のほか、医療・介護・健康情報の管理・連携、自動車登録事務などが対象だ。具体的には、ICチップが埋め込まれた個人番号(マイナンバー)カードと、健康保険証、地方公共団体の印鑑登録カードや施設利用カードなどとの「一元化」を目指す。国や自治体が発行する印鑑登録カードや施設使用カードも順次、個人番号カードに置き換えるよう促す。
◆治療投薬管理で医療費を抑制
政府はマイナンバーを2018年度から医療分野にも活用、医療機関や介護施設が個人の医療情報を共有し、無駄な検査・投薬を避けられるようにする。マイナンバーは健康保険証に掲載し、医療機関のカルテ、問診や診療報酬明細書(レセプト)などのデータと連結。個人は自分の番号を入力すれば、パソコンやスマートフォンで過去の診療や投薬の履歴を見ることができる。
政府は集めた医療情報を原則として名前を伏せてビッグデータとして活用。レセプト、検体検査や手術記録、問診情報など幅広いデータを分析することで疾病ごとに標準的な診療を把握することが可能となる。健康保険組合などが過剰な検査や診療をチェックしやすくなるため、医療費の抑制につながる。本人が同意した場合は個人情報として活用。投薬や検査が重複しない治療が可能となる。緊急時でもマイナンバーがあれば病歴などを簡単に把握できる。
医療機関にとっても業務の効率化などメリットは大きい。ネット上で患者が問診を受けるシステムを導入し、患者がスマホなどから症状や生活習慣、性別・年齢を入力して来院前に送れば、病院での待ち時間を短くできる。検査が重複する弊害もなくなるという。さらに医療ビッグデータは国内の製薬企業にも開放し、難病などの新薬開発に生かす。(八牧浩行)
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■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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