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電池メーカーのコピーが中国ネットをざわつかせた。
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電池メーカーのコピーが中国ネットをざわつかせた。受けを狙った一文も、時代の感覚に背を向ければ「軽薄」と断じられる。「24時間戦えますか」が死語となった今、ユーモアと不謹慎の境界線は紙一重だ。
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福建省南平市の南孚電池が高速鉄道の座席テーブルに掲出した広告がネット世論を沸騰させた。問題となった広告コピーは「上司と出張するのが大好き。南孚電池のように持久力抜群で超長持ち。乗ってから降りるまでずっと仕事の話をしても全然疲れない!」というものだ。
一部のネットユーザーはこれを「ブラックユーモア」と受け取る向きもあったが、「気持ち悪い」「現実離れ」との批判が目立った。長時間労働を美化し、上司への過度な追従を賛美するコピーは、もはやジョークとして通用しない。
中国の広告法が求めるのは「健康的で良好な社会風俗に合致する表現」。受けを狙うために打った広告が「地雷原」を踏み抜くこともある。
コピーが炎上するのは中国企業だけではない。外国企業も幾度となく炎上してきた。
2003年 トヨタ「プラド」広告問題
獅子が車に敬礼する描写やランドクルーザーが旧式トラックをけん引するイメージで中国消費者が反発し、現地紙で謝罪広告を掲載した。
2020年 シャオミの日本向け動画炎上
寿司型の電池を食べた人物が爆発してきのこ雲が立つ描写が「被爆」を想起させると批判された。
2021年 ソニー新製品発表日問題
中国で敏感な歴史的事件の日に新製品発表日を設定し、罰金処分を受けた。
2025年 スウォッチ「つり目」広告
つり目ポーズの広告で人種差別だと批判された。
また、ドルチェ&ガッバーナ(D&G)がプロモーション動画に箸を使ってイタリア料理を食べる中国人女性モデルの様子をコミカルに描き、非難を受けたこともある。
広告は社会の倫理観を映す鏡だ。南孚電池の広告炎上は、その鏡に映る時代の姿をくっきり示した。
日本ではバブル期に栄養ドリンク「リゲイン」の「24時間、戦えますか。」が企業戦士の合言葉となり、1989年に流行語大賞に選ばれた。だが、働き方改革関連法で残業規制が導入され、今やこのフレーズは「ブラック企業」の象徴として葬り去られている印象がある。
中国も事情は似ている。IT業界で広まった「996」(朝9時から夜9時まで週6日勤務)は奮闘の証とされたこともあったが、19年にアリババのジャック・マー(馬雲)氏が擁護発言をした際には若者の反発を買い、炎上の嵐に見舞われた。
もはや「がむしゃらに働け」と叫ぶコピーは社会から喝采を得るどころか袋だたきに遭う。むしろ広告の勝負どころはワーク・ライフ・バランスやウェルビーイングをどう描くかに移っているのではないか。
今回の広告炎上事件では「擦辺式営銷」(エッジボール。規制や倫理のギリギリを狙ったマーケティング)という手法が再び俎上に載った。性的暗示や挑発的な表現は一時的に注目を集めるが、長期的にはブランド価値を削る毒にもなり得る。
広告コピーは軽妙な言葉の運用と智慧の結晶に見える一方、綱渡りのリスクマネジメントでもある。受けを取るつもりが、笑えない炎上に変わる瞬間はあまりに早い。南孚電池の一件は、広告表現がいかに社会の空気と地雷原を同時に読み解く作業であるかを教えてくれる。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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