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24年間続いた「無印良品」商標争奪戦が節目を迎えた。写真は上海市内の無印良品。
日本と中国の企業間で24年間続いた「無印良品」商標争奪戦が中国最高人民法院の裁定により節目を迎えた。57件の訴訟案件が物語る複雑な攻防の経緯を見ていこう。
中国最高人民法院は「無印良品」商標に関する重要な裁定を下した。この裁定により、中国企業の北京棉田紡織品有限公司の商標権が最終的に確定されることとなった。
争いの発端は2001年にさかのぼる。中国企業が「無印良品」の商標を登録し、後に北京棉田に譲渡された。これに対し、日本の良品計画は04年から継続的に法的手段に訴えたが、決定的な証拠を提示することができなかったと目される。
法廷で争点となったのは、中国企業が商標出願を行った00年4月6日以前において、日本企業が中国で商標を使用していたか、あるいは一定の影響力を有していたかという点だった。しかし、良品計画側はこの立証を充分に行うことができず、結果として中国企業の商標権が認められた。
北京棉田の勝利は単なる先願主義の結果ではない。同社は家庭用繊維製品分野において大規模な事業展開を行っており、オンライン・オフライン合わせて多数の店舗を運営している。
さらに重要なのは、同社の商標申請と使用がすべて法的規範に準拠していた点だ。これらの実績が法廷での正当性を裏付ける決定的な要素となった。
一方、日本の良品計画も決して劣勢に置かれてきたわけではない。同社は中国においてほぼ全分野にわたって商標を登録しており、第24類(繊維製品)以外では強固な権利基盤を築いている。
現在の商標権の帰属状況は極めて複雑だ。北京棉田が第24類(繊維製品)の「無印良品」商標を保有する一方、日本の良品計画はその他のほぼ全分野で商標権を有している。
この状況は両社の間で激しい法的攻防を生み出している。北京棉田は良品計画の一部商標について「3年間不使用」を理由とした取り消し申請を行った。一方、良品計画は北京棉田を商標侵害や不正競争で訴えるという、まさに目には目をの激しい戦いを繰り広げてきた。
特筆すべきは第35類(サービス分野)商標に関する判決だ。この事案では、裁判所は北京棉田側の不正競争を認定し、傘下企業に「無印良品」の文字を削除するように命じた。これは商標争いが企業の事業活動そのものに直接的な影響を与えていることを示している。
14年から現在まで、両社間の訴訟件数は57件に達している。これらの案件の大部分は商標の許諾、権利確認、侵権、不正競争に関するものだ。
注目すべきは両社が頻繁に原告と被告の立場を入れ替えていることだ。これはそれぞれが相手方の弱点を見つけては法的手段に訴えるという「攻守交代」の戦術を物語っている。
この継続的な法的争いは、単なる商標権の問題を超えて、両社の事業戦略の根幹に関わっている。法廷での勝敗が直接的に事業展開の可能性を左右するからだ。
この商標争いが最も深刻な影響を与えているのは消費者だ。両社の店舗デザイン、サービスイメージ、販売商品があまりにも類似しているため、多くの消費者が混乱を感じている。
ソーシャルメディアでは「どちらが正規品でどちらが模倣品なのか判別できない」という声が相次いでいる。この混乱は消費者の購買意欲を削ぐだけでなく、ブランドに対する信頼性にも悪影響を与えることになりかねない。
実際、多くの消費者が「無印良品」と聞いて連想するのは日本の良品計画だ。ところが、中国国内の店舗で北京棉田の商品を購入している可能性は高い。この認識のギャップが消費者の困惑を一層深めている。
中国で両者のブランドを区別する方法は存在する。北京棉田の店舗では、中国語で「無印良品」と単独で表記されているか、時に「Nature Mill」という英語表記が併記される。
一方、日本の良品計画は「無印良品」という漢字を単独で使用することが中国では禁じられており、「MUJI」という表記を添える必要がある。
法的観点から見ると、両社には消費者の混乱を回避する義務がある。消費者の知る権利を保障するため、製品、包装、宣伝材料において、自社ブランドの出所と他社との相違点を明確に表示する責任を負っている。
00年4月6日
海南南華実業貿易公司が「無印良品」商標の登録を申請
01年
商標が正式に登録され、日本の良品計画が異議申し立てを行う
04年
商標が北京棉田紡織品有限公司に譲渡される
05年
良品計画が中国本土に初の店舗を開設
14~24年
両社間で累計57件の訴訟が発生。内容は商標の使用許可、権利確認、侵害など多岐にわたる
25年
中国最高人民法院が北京棉田の商標の合法性を維持する判決を下す
最高人民法院の裁定が出たとはいえ、この争いが完全に終結する可能性は低そうだ。両社共に巨大な利益が関わっており、新たな法的手段を模索することも想定される。
この事案は、グローバル化が進む現代において、知的財産権の重要性と複雑さを浮き彫りにした。企業にとっては商標戦略の重要性を、消費者にとってはブランド識別の必要性をそれぞれ示す典型的なケースとなっている。
今後、類似の争いを避けるためには、企業の早期の商標登録戦略と、消費者の商標制度に対する理解向上が不可欠になってくる。この24年間の攻防は、現代商業社会における知的財産権の複雑さを象徴する事例として、長く記憶されることになりそうだ。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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