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早く着くと高くなる。そんな新制度が上海の地下鉄に導入される見通しだという。
早く着くと高くなる。そんな新制度が上海の地下鉄に導入される見通しだという。背景にあるのは市域鉄道と地下鉄路線の乗り換えだ。時間を価値と見なす運賃体系は、市民の移動だけでなく、駅のあり方までも変えていく可能性がある。
上海の軌道交通に新しい料金制度が導入されるという。これまでの移動距離に応じて料金を決める方式に加え、移動時間のしきい値の判定によって料金を変動させる。背景には市域鉄道(空港連絡線)と地下鉄間の乗り換えがある。
6月28日からは中春路(9号線)に続いて景洪路(15号線)でも相互の乗り換えに改札を出る必要がなくなる。すると乗客が市域鉄道と地下鉄のいずれを移動手段としたのかを運営者が判別するのが難しくなる。
事情通が行うネット投稿によると、仮に佘山(9号線)から景洪路までの所要時間が30分未満なら市域鉄道を利用したとみなされ、それ以上なら地下鉄のみで移動したとみなされる。中春路(9号線)で下車し市域鉄道に乗り換える場合の所要時間はおよそ15分で料金は11元(約220円)。一方、桂林路(9号線)で地下鉄15号線に乗り換える場合は6元(約120円)。30分をボーダーに5元(約100円)の差額が生じるという。
所要時間が1分違うだけで5元が課金されるというのは割に合わないが、仮に15分の速着で5元の加算というのであればどうだろう。上海市の時給最低賃金が2024年基準で24元(約480円)であることに留意すると、この差額は妥当な水準かもしれない。
もちろん、高いと見るか安いと見るかは人それぞれの価値観の問題だ。東京、大阪、名古屋などの私鉄では「特快」「急行」「普通」の区別なく同一料金だと考えると、差額があること自体に疑義を示したくなる人もいるだろう。それでも、公共交通機関の利用料金が割高な日本と比べれば、市域鉄道の料金は良心的でリーズナブルな域ともいえそうだ。
その一方で、所要時間によって料金の高低が決まる制度には抜け道が存在する。市域鉄道を使って15分早く目的駅に到着しても、駅構内でしばらく時間をやり過ごしてから改札を出れば、5元分を加算されずに済むというわけだ。
さすがに無目的にむざむざ時間をつぶす人はいないだろうが、15分という時間は立ち食いスタンドで麺をすすって食べるにはちょうどいい。あるいは、上海南駅のように「早い、安い、うまい」の代名詞たる吉野家が構内にある場合は、改札を出る前の消費が5元分のクーポン券に転化することに相当する。
「上海市軌道交通線網計画(2025–2035)」によると、上海市は2035年までに1643 キロの軌道交通網(うち地下鉄は1000キロ強)を構築し、駅と都市機能を一体化させていく構想を掲げている。駅を生活、消費、雇用の拠点に据える「都市設計の再編」が進んでいるのだ。
駅はもはや単なる通過点ではない。人が「時間を使う」空間、すなわち商業、飲食、余暇の新しい拠点へと変貌している。時間に値段をつける制度は、利用客に「その時間をどう使うか」という問いを突きつけており、それぞれの価値観に基づいた行動の選択を求められていくことになる。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)
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