米の関税攻勢に屈服したベトナムと反撃した中国、台湾はどうする?―台湾メディア

Record ASEAN    2025年4月6日(日) 20時0分

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台湾メディアの信媒体は5日付で、ベトナムと中国による、トランプ米政権が打ち出した高額な輸入関税への対応策を紹介し、台湾が取るべき策を考える記事を発表した。写真はベトナム国内の様子。

台湾メディアの信媒体は5日付で、ベトナムと中国による、トランプ米政権が打ち出した高額な輸入関税への対応策を紹介し、台湾が取るべき策を考える記事を発表した。記事は改めて、トランプ大統領の発想にあるのは「取り引き」による利益獲得で、道義などは存在しないと指摘した。

ベトナムは「トランプ新関税政策」に屈服した最初の国に

トランプ大統領が4日に発表したベトナムへの追加関税は46%だった。するとベトナムは翌5日、米国との二国間交渉を開始する意思を示し、協定が成立すれば米国製品に対しゼロ関税を適用すると約束した。この譲歩は、トランプ大統領の貿易戦略に対する重大な妥協であると同時に、ベトナムが今回の関税再編で、世界で初めて明確に屈服した国になったことを意味する。

トランプ大統領はすぐさま、自ら立ち上げたSNSのTruth Social(トゥルース・ソーシャル)に投稿し、ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長との電話会談は「非常に実りあるものだった」と評価し、ベトナムが米国への関税撤廃の誠意を見せたことを強調した。ベトナムのホー・ドゥック・フォック副首相は官僚と輸出業者を緊急に招集し、米国からのハイテク製品の輸入拡大を表明、さらに為替と金利の調整を通じて経済の安定を図ると説明した。ベトナム政府はまた、46%関税の発動を3カ月延期するよう求めるための交渉チームを米国に派遣して協議を行う計画を示した。

「46%関税には耐えられない」と、現実的判断

トランプ大統領による新たな関税政策発表当日の4日、ベトナム株式指数のVNインデックス(VNIndex)は1日で5%以上下落した。水産業協会(VASEP)は、米国から輸入する水産物の関税を0%にして圧力を和らげるよう訴えた。ファム・ミン・チン首相は、トランプ政権の関税政策は「両国の良好な関係にそぐわない」と述べ、即座に専任チームの設置を命じて迅速に対応するよう指示した。

ベトナムの立場からすれば、輸出主導の同国の経済モデルでは、米国市場の長期封鎖に耐えることはできない。2025年通年での経済成長率8%という目標が関税によって頓挫すれば、連鎖的な影響が発生する。無関税を「差し出し」てでも交渉の余地を得ることは、ベトナムにとって緊急の戦術だ。

しかしこの流れは、まさにトランプ大統領の思惑通りだ。トランプ大統領は高関税率によって各国に圧力をかけ、米国との二国間交渉を強いることで、米国がそれぞれの取引において主導権を握り、最大限の利益を引き出すことを狙っている。

トランプ大統領の「中国はしくじった」の真意とは

一方で中国政府は、米国の全ての輸入品に34%の関税を課すと発表した。また、米国の関税政策は世界貿易機関(WTO)ルールに違反している」として、アメリカをWTOに提訴したと発表したほか、レアアース7種類の輸出を規制すると発表した。トランプ大統領は中国の「反撃」について、「中国はしくじった。パニックに陥ったからだ。彼らにとってやってはならないことをやってしまった」とトゥルース・ソーシャルに投稿した。

米国はこれまでにも経済問題で「中国締め付け」を続けており、中国製品への関税率は従前の分を含めれば54%に達する。中国政府は米国の政策を強く批判してきた。政府報道官は「貿易戦争に勝者なし」などの発言を繰り返し、米国自身も大きな損害を受けると指摘しつづけてきた。一方で、「最後までおつきあいする」などと、一歩も引かない構えを見せてきた。しかし、隣国のベトナムが米国に対して最初に屈服したことで、その他の国や地域の間に「ドミノ現象」が発生し、中国の対米関税の威力は半減する可能性がある。これが、トランプ大統領の「中国はしくじった」の真意だ。

台湾TSMCの投資引き出しは「取り引きの芸術」の真髄

台湾積体電路製造(TSMC)による米国への巨額投資はベトナムの事例に比べても、トランプ大統領の「取り引きの芸術」のさらに精妙な発揮だった。TSMCは3月初め、米国に対して1000億ドル(約14兆6000億円)を追加投資すると発表した。TSMCによる対米投資は累計1650億ドル(約24兆円)に達する。これは半導体産業史上、最大規模の海外投資案件だ。一見すると企業の経営判断のように見えるが、背後にはトランプ大統領による関税の圧力、補助金の誘因、国家安全保障法の複合的な働きがあった。

トランプ大統領はTSMCに対して、生産ラインを米国に移転せよとは直接命じず、政策による「てこ」を使って、TSMCの対米投資を「自発的選択」に見せかけた。米国は技術移転と雇用機会を手に入れ、TSMCは市場参入と政策保護を獲得した。これが双方にとって利益となるかどうかは今後の検証が必要だが、トランプ大統領の思考は明確だった。

トランプ大統領は1987年出版の著作の「The Art of the Deal(「取り引きの芸術」、邦題は「トランプ自伝 アメリカを変える男」)の中で、「取引のカギは、あなたが何を望むかではなく、相手が何を差し出す用意があるかだ」「取引で最悪なのは、相手にこちらが急いでいると思わせることだ」などと論じた。TSMCの事例では、米国が受け身の姿勢を取りつつ、主導権を握ることに成功した。そしてトランプ大統領は、単純に投資を求めるのではなく、世界中の重要企業に米国を中心と見なすよう求めている。

トランプ大統領の「強気の取り引き」可能にする要因とは

米国は台湾製品に対して32%の関税を課すと発表した。4月9日の発効予定だ。この措置は一見、貿易戦争の一部のように見えるが、実際にはトランプが巧妙に設計した交渉の布石だ。ベッセント米国務長官は、「米国は各国が提案を持ち込むことを歓迎し、条件が十分であれば協議の余地がある」と明言した。すなわち台湾に対する32%関税は最終的な結論ではなく、台湾を交渉の場に引きずり出すための「煙幕」だということだ。

トランプ大統領にとって「超強気」が可能な最大の背景は米国市場の規模と安定性だ。3億500万人の人口を持ち世界の消費力の4分の1を占める米国は、どの国にとっても容易に放棄できない市場だ。米国市場を放棄することは、現在の利益を失うだけでなく、この強大な市場に二度と戻れなくなることを意味する。そのため、中国や欧州の多くの企業が損失を出してまでも米国との貿易ルートを維持しようとしている。台湾も同様の選択を迫られている。

だが、単に米国製品を購入するだけでは、この危機に対応できない。トランプ大統領の目標は貿易収支の均衡だけではなく、投資、工場設立、技術移転、雇用創出にまで及んでいる。トランプ大統領はWTOの多国間枠組みを好まず、単独交渉を交渉を好む。なぜなら、一対一の交渉ならば駆け引きの中で、台湾のような小さな存在は米国の圧倒的な優位に対抗できないからだ。トランプ大統領はWTOからの脱退すら宣言しかねず、世界の貿易ルールを根本から変える可能性もある。

台湾の対策からベトナム人のような「知恵と決断」見えてこず

台湾への「32%関税」については、頼清徳政権の対応が極めて重要だ。卓栄泰行政院長(首相)は4日、財政部、経済部、農業部、労働部などの政府部門のトップを率いて記者会見を開き、九大分野にわたる20項目の対策を発表した。総予算は工業部門に700億台湾ドル(約3100億円)、農業部門に180億台湾ドル(約797億円)の計880億台湾ドル(約3900億円)で、産業と社会の多様なニーズに応じるための支援策を示した。

だが、卓首相が打ち出したこの案は大胆な改革精神を欠き、従来型の補助金政策に過ぎない。しかも、これらの産業への補助がトランプ政権から改めて不公正貿易の追加要因と見なされる可能性は否定できない。

トランプ大統領は実業家としての経歴から交渉を愛し、圧力をかける術に長けている。相手を極限まで追い詰めることで譲歩を引き出すのだ。ベトナムに対する46%、台湾に対する32%という高率の関税発表も、各国に「交渉のテーブルにつけ」と迫るためのものだ。

「取り引きの芸術」を読み解ければ解決策は見つかる

問題は、ベトナムはトランプ大統領の意図を見抜き、即座に反応したが、台湾には国際交渉の人材がいるかどうか不明であることだ。トランプ大統領の戦術を見抜き、それに対抗する戦略を立てる力があるのかどうかが問われている。

台湾政府は受け身で「心配するだけ」「補助金をばらまく」だけの姿勢に陥ってはならず、むしろ積極的に動くべきだ。交渉の材料にできる可能な対策としては、対米投資の拡大、市場開放、技術協力の約束があり、さらには他の小規模経済国と連携して集団提案を行うことが考えられる。トランプ政権の関税による脅しは確かに強硬だが、米国自身も全面的な貿易戦争の影響に長くは耐えられず、そのことから、交渉の余地が出て来る。

トランプ大統領の「取り引きの芸術」は世界の秩序を再構築しつつある。トランプ大統領の哲学は道義を語らず、得失のみを問う。長期的な約束を求めず、目先の利益だけを見る。台湾にとって、32%関税は危機であると同時にチャンスでもある。その鍵は、従来型思考から抜け出し、取り引き人としての姿勢でトランプ大統領と対峙できるかどうかにかかっている。

トランプ大統領は交渉を愛し、米国の強みを活用する術に長けている。台湾に対して突きつけられた32%の関税は威圧的に見えるが、交渉の余地は残されている。台湾にとって、これは単なる貿易戦争ではなく、「取り引き」を理解しているかどうかを試される重要な瞬間だ。「取り引きの芸術」を読み解くことさえできれば、解決策は見つかる。なぜなら「トランプ大統領の世界」には永遠の敵などなく、「永遠の利益」しか存在しないからだ。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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