高野悠介 2025年1月4日(土) 15時20分
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中国の2025年の新エネルギー車市場を展望してみよう。写真はBYDの「秦L DM-i」。
直近の各種販売データから、中国の2025年の新エネルギー車市場を展望してみよう。
中国では14~19年に新エネルギー車(EV、PHEV、燃料電池車)メーカーが60社以上設立された。登記だけに終わったペーパーカンパニーは400社を超えた。これら「造車新勢力」と国有、民営の従来型企業(ガソリン車を製造している企業)、外資合弁企業、さらに異業種参入組による大混戦が展開されたが、どうやら収束に向かいつつある。
中国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、24年11月の乗用車販売台数は前年同月比18%増の244万6000台だった。ただし24年1~11月の累計は2028万1000台で、前年同期比5%増にすぎない。24年11月の新エネルギー車は前年同月比52%増の127万7000台、24年1~11月累計は前年同期比41%増の960万5000台だった。乗用車販売台数は9月が4.5%増、10月が11.3%増、11月が18%増と上昇した。買い替えを促す「汽車置換補貼政策」が実施されたにもかかわらず、全体では微増に終わった。
第一財経によると、過去10年に中国各社の生産能力増強計画は1030万台、計画投資総額は6065億8000万元に及んだ。実際は389万台、1070億元ほどに着地しそうというが、業界はこの10年、空想レベルの設備投資計画を立て、常にその修正に追われていた。
その一方、これらの投資は21年以降の新エネルギー車ブームをけん引し、国内独立系ブランドのシェア拡大に貢献した。22年は49.9%、23年は55.0%、24年1~10月は65.8%に達し、10月単月では初めて70%を超えた。外資系ブランドのシェアは急速に縮小していった。
24年11月の新エネルギー車の販売台数ランキングには42社が掲載されている。トップ10は以下の通り。
1位 BYD 50万4003台
民営、1995年設立、中国のトップ自動車メーカー。自動車、電池のほか、IT関連製品を生産。
2位 吉利汽車 12万2453台
民営、1986年設立、1997年に自動車生産に参入。傘下にボルボなど出資企業多数。
3位 上汽通用五菱 11万3998台
国有大手の上海汽車、GM、広西汽車の3社合弁。コンパクトカーに特化し、存在感を放つ。
4位 長安汽車 9万8494台
国有大手。マツダ、フォードと合弁を持つ。EVブランドは「深藍汽車」。
5位 テスラ中国 7万8856台
中国初の外資100%自動車メーカー。上海ギガファクトリーがテスラ成功を支える。
6位 奇瑞汽車 7万2323台
地方政府の自動車プロジェクトから発展し1997年に設立。中国最大の独立系自動車メーカー。輸出台数は中国トップ。
7位 理想汽車 4万8740台
造車新勢力の最大手。2015年設立、2020年ナスダック上場。PHEVで先行。
8位 広汽埃安 4万2301台
国有大手・広州汽車のEV子会社。2018年に1号車を発売。
9位 零跑汽車 4万169台
造車新勢力。2015年設立、創業者はIT業界出身。
10位 東風汽車 3万8729台
各種の国有自動車関連企業を合併、改組して1992年設立。日産、ホンダと合弁企業を持つ。
トップ10は民営2社、造車新勢力2社、国有系4社、外資合弁1社、外資1社という構成だ。BYDと吉利の民営大手2社で全体の半分弱を占める。
16位 上汽大衆 1万5832台
上海汽車とフォルクスワーゲンの合弁、1985年設立。外資合弁企業第1号として大成功した。
23位 華晨宝馬 7921台
華晨汽車とBMWの合弁、2003年設立。遼寧省政府肝煎りの新しい国有企業。
24位 上汽通用 6651台
上海汽車とGMの合弁、1997年設立。ビュイック、シボレー、キャデラックなどを生産。
25位 一汽豊田 5676台
第一汽車とトヨタの合弁、2000年設立。主力はカローラ、RAV4など。EV用新工場が稼働。
27位 一汽大衆 4482台
第一汽車、フォルクスワーゲン、アウディの3者合弁、1991年設立。主力はジェッタ、アウディなど。
34位 東風日産 1664台
国有の東風汽車と日産の合弁、2003年設立。主力はティアナ、シルフィ、エクストレイルなど。
35位 広汽本田 1551台
広州汽車とホンダの合弁、1998年設立。主力はアコード、オデッセイ、シティ、フィットなど。
37位 悦達起亜 821台
国有の江蘇悦達集団、韓国・起亜自動車、東風汽車の3者合弁、2002年設立。2021年11月に東風汽車が合弁事業から撤退。
40位 広汽豊田 425台
広州汽車とトヨタの合弁、2004年設立。主力はカムリ、カローラクロス姉妹車のフロントランダー、ヤリスなど。EV新工場でSUV2車種、ミニバン1車種を計画中。
42位 東風本田 188台
東風汽車とホンダの合弁、2003年設立。主力はCR-V、シビックなど。
別データによると、10月の新エネルギー車のシェアは国内従来型企業が77%、造車新勢力が16%で、両者を合わせた中国ブランドが93%を占めた。テスラは3.4%、その他は3.6%だった。一汽豊田はEV新工場が稼働したため増加した。
24年1~9月の新エネルギー車の内訳は、純EVが前年同期比20.3%増の329万1000台、PHEVが同83.2%増の296万4000台だった。構成比はEVが52.6%、PHEVが47.4%だが、逆転するのは時間の問題だ。PHEVは60%を超えるとみられる。また、中国の同期の世界シェアはEVが63%、PHEVが78%に上る。
これに対し、外資合弁企業の新エネルギー車の構成はEVが87%を占めた。広汽豊田、広汽本田の新規EV工場稼働、フォルクスワーゲンの投資加速表明など、外資系の投資は進展しているが、どれだけPHEVを考慮しているかは分からない。
25年もPHEVの勢いは継続するだろう。国内、外資を問わず、PHEVを投入できないメーカーは厳しい戦いが続きそうだ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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