2024年12月11日、日本華僑報網は、この10年における韓国の政治と経済について論じたフィンロジックス株式会社の神月陸見社長による文章を掲載した。

文章はまず、韓国ではこの10年、政治的な変動が韓国経済に影響を与えたとし、例として2016年に発生した朴槿恵（パク・クネ）大統領の「親友による政治干渉」スキャンダルでは国内外投資家の韓国市場への信用が低下して株価が乱高下したことに言及。混乱した経済状況は、腐敗撲滅と国民生活改善を掲げて翌年発足した文在寅（ムン・ジェイン）政権による財政支出拡大とイノベーション産業推進で徐々に安定していったと伝えた。

また、輸出に大きく依存している韓国経済は、米中貿易戦争や日韓貿易紛争、朝鮮半島問題といった外交問題により幾度も試練にさらされてきたとも紹介。中国とは16年に高高度防衛（THAAD）ミサイルで関係が悪化して化粧品や観光、文化といった産業が大打撃を受け、日本とは歴史問題に加えて19年の日本政府による対韓輸出規制で関係が一層冷え込み、同盟関係にある米国とは自由貿易協定の改定で対米輸出が増えた一方で譲歩も強いられ、北朝鮮問題では米国による制裁の影響を受けて南北間の協力が制限を受けたとしている。

さらに、韓国政府はこの10年で高齢化、グローバル競争、技術革新といった課題に対処すべく経済構造の改革を推進し、5Gネットワーク、半導体、AI分野での成長を促した一方で、従来型製造業の競争力低下や新興産業が十分な雇用を生み出せていない現状から、特に若者を中心とする失業率の上昇という課題が顕在化したほか、不動産価格の高騰や所得格差の拡大が国民の不満を招いたとも指摘した。

このほか、新型コロナウイルスの感染拡大も韓国経済に大きな衝撃を与えたものの、補助金の給付、金融緩和政策、ワクチン接種の推進といった迅速的な対応が経済と社会の安定を支えたと紹介。コロナ対策では国際的にも高い評価を受け、国内の政権支持率向上にも寄与したと伝えている。

文章は、政治と経済が互いに影響し合う中で韓国経済がグローバル化や地域情勢の変化に対応してきた一方で、さまざまな課題も山積していると指摘。今後、国内経済の強靭（きょうじん）性をさらに高めるためには、政治的安定を維持しつつ、より包摂的な成長を実現すること、外交政策では中立的かつ戦略的な姿勢を取り、輸出市場の多様化や貿易依存度のバランス改善を図ることが必要との見方を示した。（編集・翻訳/川尻）