<写真特集>新疆で法隆寺「鉄線描」壁画の源流「屈鉄線」壁画を発見・保護・研究

小島康誉    2024年12月7日(土) 16時0分

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新疆タクラマカン沙漠で発見した如来図壁画、「西域のモナリザ」。

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昨年9月の東京展を皮切りに、福岡・宮城・愛媛・岡山と巡回した「世界遺産 大シルクロード展」は、最終会場・京都文化博物館で来年2月2日まで好評開催中。筆者が日本側隊長を務めた「日中/中日共同ダンダンウイリク遺跡学術調査隊」が2002年に新疆タクラマカン沙漠の古代遺跡で発掘し保護・研究した如来図壁画「西域のモナリザ」も出陳されている。筆者はそれに合わせ、佛教大学で調査全容をPPT講演。対面・オンライン合わせ約460人参加され好評だった。

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日本とほぼ同じ面積の大沙漠に残存するダンダンウイリク(丹丹烏里克)遺跡は西域南道の小都市チラ(策勒)北方約120kmに所在。名称は「象牙の家」を意味し、唐代には「傑謝」と称せられ、8世紀頃に衰退した。1896年ヘディンが発見、1900年スタインが大規模発掘、1928年トリンクル隊が踏査、1996年新疆文物考古研究所隊が踏査、1998年バウマーが無許可調査。そして2002年日中/中日隊が調査(中国国家文物局許可)開始、日本人公式初到達だった。新疆文物局の盛春寿局長・新疆文物考古研究所の張玉忠副所長など中国側7人、筆者など日本側8人、駱駝使いなど16人が車両乗換地点から駱駝41頭で3日かけ遺跡に到達した。


露出した壁画を発見、保護のため緊急発掘。2006年まで4次の現地調査を敢行し、広大な遺跡(東西約2km・南北約10km)を総合調査した。新疆文物局・新疆文物考古研究所・国家博物館・北京大学・中国石油東方公司、佛教大学・六甲山麓遺跡調査会・奈良大学・奈良女子大学・岡墨光堂などの文化財管理・考古学・建築学・仏教美術史・文化財保存・模写・測量などの専門家が参加した。


多くの方々の尽力により、次のような成果をあげることができた。◆寺院・住居・円形城壁・炉・窯・果樹園など70ヵ所の遺構と遺物散布地約30ヵ所を確認し、GPSなどで経緯度を登録し、遺跡分布図を作成した。◆光波測量により、各遺構・周辺地形図を作成した。◆大量の国宝級壁画を発見・発掘し保護と研究を行った。◆銅貨など多くの遺物を収集し研究を開始した。◆いくつかの遺構を発掘し貴重な知見をえた。◆数ヵ所の寺院址を試掘し状況確認をおこない内容豊富な壁画を撮影し、保護のため埋め戻した。 ◆これらの結果、西域における「仏教聖地」としての全容を明らかにした。◆これらの成果は報告書や佛教大学・北京大学でのシンポジウムなどで公開した。


井上正元佛教大学教授は「内容は豊富、西域壁画の最高傑作のひとつ、文献にある『用筆緊勁にして、屈鉄盤絲の如し』そのものを見ているようだ」、安藤佳香佛大教授は「新出壁画にみられる法隆寺金堂旧壁画の源流を思わせる鉄線描には、ホータンの王族に出自をもつ名画家・尉遅乙僧の画風をしのばせるものがある。精彩に富む瞳の動きは、拝者の眼と心に深く訴えかけてくる。世界的名画の出現であるといっても過言ではない」とコメントしている。


現地調査にはNHKと中国中央テレビが同行取材し「新シルクロード」などで、西域の「屈鉄線」壁画が法隆寺「鉄線描」壁画へ影響を与えたルートなども放送された。保護処理完了した壁画の一部は「新シルクロード展」に出陳され、そして現在「世界遺産 大シルクロード展」最終会場・京都文化博物館で展示中。はるか離れた新疆の大沙漠で日本人が発見・保護・研究に関わった法隆寺「鉄線描」壁画の源流「屈鉄線」壁画を参観ください。


王毅中国駐日大使(当時)も参観:上記「新シルクロード展」東京展開幕式では王毅大使(現:中央政治局委員・外交部長)もスピーチ。その後参観される王大使に盛春寿新疆文物局長が「彼とこの壁画を発掘し保護処置を行った」と筆者を紹介。王大使は日本語で「新疆の文化財保護に尽力いただき感謝します」と手を差し出され、熱い握手をしたのを思い出す。
















※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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