<米大統領選>「ハリス旋風」いつまで続く=黒人支持や移民問題がカギ―トランプ陣営の攻撃激化も

山崎真二    2024年10月6日(日) 8時0分

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米大統領選が終盤に差しかかる中、民主党大統領候補となったハリス副大統領が上げ潮ムードに乗っている。

米大統領選が終盤に差しかかる中、民主党大統領候補となったハリス副大統領が上げ潮ムードに乗っている。最後までこの勢いが続くかどうかは黒人の支持や移民問題が焦点になりそうだ。

人口中絶問題では支持伸ばす可能性

「ハリス旋風」とも呼ぶべき現象が一段と目立つようになったのは、ハリス氏が共和党大統領候補のトランプ前大統領との討論会で「勝利」したと米主要メディアが報じてからだ。主要世論調査機関の調査ではハリス氏が支持率でトランプ氏を若干リードするケースが増えている。24日にCNNなどが伝えた世論調査によれば、ハリス氏の支持率は48%でトランプ氏の47%を上回った。ロイター通信と有力調査会社IPSOSが23日に公表した調査結果ではハリス氏の支持率は50%でトランプ氏の44%を引き離している。今年の大統領選の七つの激戦州を見ると、トランプ氏がアリゾナ州とジョージア州で僅差でリードしているが、他の5州では互角かハリス氏有利という展開になっている。

CNNのコメンテーターの一人は「ハリス氏は今後、人口妊娠中絶問題をテコにさらに支持を伸ばすだろう」と語っている。人口中絶は今年の大統領選の重要争点の一つ。ハリス氏はトランプ前政権時代に米最高裁が人口中絶の権利を認めないとしたことを厳しく批判し、中絶権擁護の必要性を積極的に訴えてきた。ハリス氏が女性としてこの権利を主張するのは断然、迫力があり、確かに女性からの支持が一層伸びる可能性は十分ある。

黒人の支持拡大には疑問視も

周知の通り、ハリス氏は父親がジャマイカ出身のアフリカ系、母親がインド系で有色人種とあって、とりわけ黒人有権者の間で人気が高いとされている。事実、米主要世論調査では、ハリス氏は黒人の有権者の支持率でトランプ氏を圧倒的にリードしている。だが、黒人の支持が今後も続くかどうか疑問視する見方が出ている。

米有力シンクタンク「ブルッキングス研究所」の研究員は「ハリス氏が大統領候補になった当初は黒人有権者の間で副大統領ということ以外、あまり知られていなかったが、徐々にメディアがその人物像を報じるようになり、一部黒人から反発や批判が出始めている」と指摘する。ハリス氏はかつてサンフランシスコ市の検事を務め、その後カリフォルニア州の司法長官になったが、検事時代に犯罪容疑者に厳しい対応を取り、軽微の罪を犯した黒人容疑者にも容赦しなかった過去が明らかにされている。

例えば、黒人に対する暴力や差別の撤廃を訴える運動「ブラック・ライブズ・マター」の指導者の一人はハリス氏の検事時代の行為を批判し、今後支持するかどうかは同氏の言動次第とCNNのインタビューに答えている。さらにハリス氏の夫が裕福な白人であり、夫妻の総資産が700万ドル(約10億1000万円)を軽く上回っていると報じられたことから「低所得層の多い黒人の仲間ではない」と反発する声が黒人の間で聞かれる。

移民問題でトランプ陣営の攻撃激化も

もう一つ、「ハリス旋風」を押しとどめる要因になるとみられるのは同氏の移民問題への取り組みだ。バイデン政権下でハリス副大統領が移民政策を担当したのは誰もが知るところ。トランプ陣営はハリス氏の移民対策が完全に失敗だとし、激しく攻撃している。バイデン政権下でメキシコ国境に押し寄せる不法移民が急増したのは事実。ハリス氏は最近、CNNテレビとのインタビューで不法移民を厳しく取り締まると述べ、従来の寛容方針を修正したとも受け取れる発言をしている。

だが、トランプ氏はハリス氏が「変節し、責任逃れを図っている」と非難。今後、移民問題を中心に巻き返し攻勢に出るとも伝えられる。ハリス氏が自身の副大統領候補に選んだミネソタ州のワルツ知事もトランプ陣営の攻撃の的になるのは間違いない。ワルツ氏は不法移民者に寛大な措置を取ったことで知られている人物だからだ。米国の有権者の半分以上が移民の減少を望んでいるとの世論調査結果もあるだけに、移民問題がよりクローズアップされるようになった時、ハリス氏がどのように対応するかが注目される。

また、ハリス氏がバイデン大統領のイスラエル支援策を基本的に支持していることから、パレスチナに同情的な若者の支持が減少するとの指摘もある。「ハリス旋風」が本当に11月5日の大統領選投票日まで続くか、まだ不透明要素が多いようだ。

■筆者プロフィール:山崎真二

山形大客員教授(元教授)、時事総合研究所客員研究員、元時事通信社外信部長、リマ(ペルー)特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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