日本僑報社 2024年9月1日(日) 9時30分
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日本での新生活。懇親会の日を境に誰も話かけてくれないという寂しい現状に気づいた。私はまたどこか間違っていたのだろうか。
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3月12日、快晴。私は両親に高く手を振り、日本へ旅立った。新しい出会い、人生の新しいページを開く喜びが心の底から湧き出し、私はひたすら新生活を楽しみにしていた。
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新学期が始まって間もなく懇親会が開かれ、皆と歓談し、趣味とか、日常生活とか、恋愛事情にまで話が及んだ。最後は連絡先を交換し、最高のエンディングで懇親会は終了した。やはり日本の皆は優しいなという余韻に浸り、何日も浮かれていた。しかし、その後私はすぐ懇親会の日を境に誰も話かけてくれないという寂しい現状に気づいた。私はまたどこか間違っていたのだろうか。
「なんで日本に来ようと思ったの?」
「自己紹介の時、アニメが好きって言ってたよね。どんなアニメが好き?好きなキャラクターは?」
「絵を描くのが好きって言ってたけど、どんな絵を描くの?」
もう一度あの夜を思い返してみると、なぜか皆が親切に質問してくれた記憶しか残っていない。逆に私からみんなへ関心を持ってした質問は、たぶん一つもなかった。強いて言えば、青森出身の隣の子に「青森のリンゴって本当においしい?」と聞いたぐらいだった。今思えば、おかしいぐらいに恥ずかしがっていた。あの夜の私はAIのごとく回答していただけで、せっかく向こうが興味を示してくれたのに、自分からは何にも聞けず一歩も踏み出せなかった。あれから声をかけてくれないのもごく自然のことだ。
しかし、これで諦めるのか、皆の好意を、せっかく先生が設けてくれた懇親会を全て台無しにするのか、それは嫌だ!諦めきれない私は、もう一度皆のことを知るならどうすればいいかと考えつつ、交換してもらったSNSのアカウントをめぐり始めた。この人はこういうインフルエンサーをフォローしているな、このプロジェクトに所属しているのかと呟きながら、突然、あやみという女の子からのメッセージを見てはっとした。
「ジンジンは美術館好きなん?」それは連絡先を交換した夜のメッセージだった。改めて見ると彼女も私の関心のあるものを見てくれていたと気づいた。しかし、その時の私はただ「好きだよ!日本の美術館、ずっと行きたかった」と返しただけで、「あやみも美術館とかに興味あるの?」とすら聞かなかった。自分の不甲斐なさを痛感し、またあやみの好意に報いたくて、すでに嫌われたかな、これだと唐突かなと不安に思いながら、最新の美術館の情報を送り、「あやみはこういうの興味ある?ゴールデンウィークに、もし時間があったら、一緒に美術館に行かない?」と誘い出した。
「めっちゃ行きたい!ゴールデンウィークだったら29日は空いてるよ!」ただこれだけの返事に、わたしは「よっしゃー!」と声をあげた。幸いなことに、あやみは親切で優しい人で、その日はゆっくりと話せた。話を聞くと、あやみは元々外国人に興味があり、何度もクラスにいる外国人留学生に話しかけてみたが、残念なことに反応は冷たいものだったという。
何度も自分から一歩踏み出したあやみは本当に偉いと思った。そして勇気を振り絞り、彼女を誘い出したことを本当によかったと思った。何よりも嬉しかったのは、あやみのことをもっと知れたことだ。たとえ全く違う環境で育ってきたとしても、嬉しいことは分かち合え、苦しいことは労わりあえる。コロナという未曽有の世界的な災いの記憶すら共有できた。
小さい頃から私は常に新学期を楽しみにしていた。新しい人と出会うことで、必ず成長できるし、人生がさらに豊かになると思っていたからだ。今まで私も人に恵まれ、信頼できる仲間も何人もいるが、いつの間にか友情の始まりはお互いに一歩踏み出すことだと忘れていた。
日本へ向かう飛行機に踏み出す一歩、好意を寄せてくれる女の子に報いるための一歩、これからの一歩先に何があるだろう。
■原題:一歩、また一歩
■執筆者:肖晶晶(大連外国語大学)
※本文は、第19回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「囲碁の智恵を日中交流に生かそう」(段躍中編、日本僑報社、2023年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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