高野悠介 2024年7月8日(月) 18時0分
拡大
中国の自動車市場で外資系が苦境だが、フォルクスワーゲンやトヨタはどのような戦略を立てているのだろうか。写真はトヨタ「bZ3」。
11月11日に行われる中国最大のECセール「ダブルイレブン(双11)」の上半期版、6月18日の「618セール」は前年割れに終わった。ネット通販各社は低価格を打ち出したが、期待値には遠く及ばず、デフレ経済を改めて印象付けた。自動車もその限りではなく、今やセール商品の象徴だ。今回は特に苦戦する外資系自動車メーカーの近未来戦略を探ってみたい。
2024年1~5月の外資合弁メーカーの販売台数ランキングトップ10は以下の通り。
上汽大衆 41万9821台 4.44%増(前年同期比、以下同) フォルクスワーゲン
一汽大衆 36万2121台 0.83%減 フォルクスワーゲン
広汽豊田 27万3684台 16.38%減 トヨタ
一汽豊田 25万4643台 7.27%減 トヨタ
東風日産 24万6574台 7.92%増 日産
広汽本田 18万3063台 11.48%減 ホンダ
東風本田 16万6215台 10.66%減 ホンダ
上汽通用 15万1992台 18.94%減 GM
北京現代 7万9443台 14.14%減 ヒョンデ
長安福特 4万5515台 1.57%減 フォード
2019年の外資系ブランドのシェアは51.4%だった。それが今年は28.8%に下がり、国内ブランドが過去最高の57.5%に達した。わずか数年で完全に逆転し、外資系はかつてない苦境に立たされている。こうしたデータから、中国メディアは「日系は危険、韓国とフランスは瀬戸際、ドイツはもう一戦できる」と評した。ただし、ブランドとセグメントにより、置かれた状況はさまざまだ。以下にフォルクスワーゲンとトヨタの2トップの話題をピックアップする。
フォルクスワーゲンは1~5月累計で前年実績をクリアした数少ない外資ブランドだ。上汽大衆では、新エネルギー車(電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)の販売台数が前年同期比2倍の5万台近くに上り、これが業績に寄与した。
中国市場にはゴルフヴァリアント、パサート、ティグアン、ラヴィーダ、マゴタン、タイロンの主要車種に新エネルギー車をラインナップ済み。今後さらに中国本土での開発を加速させるため、6月末に上海汽車と新しい製品プロジェクトに関する多くの技術協力契約を締結した。具体的には、プラグインハイブリッド車3車種、純EVモデル2車種を開発し、2026年以降に順次市場へ投入する。
また、フォルクスワーゲングループのアウディと上海汽車は中国市場向けのスマートデジタルプラットフォームを共同開発する。新世代のインテリジェントコネクテッドカーを開発し、こちらは2030年以降の発売となる予定だ。
内燃エンジン車では、一汽大衆が多くのファンに愛される定番ファミリーカーのゴルフの新型を年内に発売する。1.5Lターボエンジンを投入し、エクステリアをリファインする。現行型の価格は12万9800~22万9800元(約286万~506万円)だが、据え置きまたは値下げとなるかに注目が集まっている。
トヨタ初の純EV「bZ4X」はリコールなどいろいろと物議を醸したモデルだった。広汽豊田と一汽豊田の双方で生産したが、次の「bZ3」はトヨタ、BYD、一汽豊田の3者提携により、一汽豊田が生産した。6月上旬に配車アプリ大手「栄浩出行」に5000台を納車した。27年間バッテリー事故のないトヨタのハイブリッド技術と経験、充実したサービス網を評価した結果という。
トヨタは江蘇省常熟市の研究開発センターをトヨタ智能電動研発センターに改称した。合弁会社のエンジニアらが中心メンバーとなり、電気自動車(EV)事業の中国本土化を加速する。そして2024年中に新しいbZシリーズを発売する。BYDと提携のクロスオーバーSUV「bZ Sport Crossover」、広汽集団と提携したSUV「bZ Flex Space」とセダンの3車種だ。これについて、「一汽豊田と広汽豊田はBYDと広汽集団のファウンドリーのようだ」と評するメディアもある。
広汽集団は新エネルギー車ブランドの広汽埃安(Aion)を立ち上げ、ヒット車を出している。2024年上半期の販売台数は17万7000台で、鴻蒙智行(ファーウェイ系)の19万4000台と争っている。
広汽豊田は広汽埃安の技術を採用する。具体的には、2代目AION V 覇王龍のプラットフォームを使用するAYS-Tプロジェクトがスタートした。広汽集団はトヨタとのbZシリーズの新開発を通じて世界のEV開発の頂きに上ることもできると報じられている。
内燃エンジン車では、一汽豊田は7月上旬にゴルフに先駆けてカローラを一新した。合計6モデル、価格は11万6800元~15万5800元(約257万~343万円)で、実質値下げになっているという。新型ゴルフへのプレッシャーとなりそうだ。
高級車部門も華々しいセール合戦が起きている。BMWのEVセダン「i3」の希望小売価格は35万3900元(約779万円)だが、実勢価格は20万元(約440万円)を切っているという。30万元クラスのアウディA4Lも今や20万元強で買えるようだ。BYDや鴻蒙智行も高級EVを投入し、シェアを上げ始めている。
そんな折、トヨタの上海進出がうわさされている。レクサスのEV工場建設を上海市と交渉中だと報じられた。テスラが突破口を開いた外資100%の条件を希望しているという。この工場計画の成否はどうあれ、トヨタの高級車シフトは正解だろう。しかし、そのフィールドでも厳しい競争が待っている。外資系、国内系、新エネルギー車、内燃エンジン車、ファミリーカー、高級車などあらゆるシーンで複合的な価格戦が展開されている。どこが生き残るのか、ここ1~2年ではっきりしそうだ。
フォルクスワーゲンもトヨタもパートナーとの提携を強化し、中国でのEV開発体制を強化している。主要車種の新エネルギー化を進めるフォルクスワーゲンか先行しているのは間違いなく、提携もフォルクスワーゲン主体で進めている。トヨタは早期のラインナップ充実を図るため、提携相手のノウハウを生かす方向だ。こうした外資同士の対決も加わり、価格競争は激化する一途だ。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
この記事のコメントを見る
Record China
2024/7/5
2024/7/4
2024/7/2
Record Korea
2024/6/9
2024/6/6
2024/6/7
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る