日本僑報社 2024年5月5日(日) 7時0分
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もう一人のルームメイトが、「大きい声を出して読んだら、あとから、日本人が道を尋ねてくるかもしれないよ。」と冗談を言った。写真は大唐芙蓉園。
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疫病の冬はようやく終わりを迎え、いつもの春が訪れた。今や世界各国がアフターコロナの時代に入り、人々の生活も徐々に元に戻りつつあり、海外旅行客者も2019年の観光客数まで戻ってきた。そして、私は中国のSNSのソーシャルネットワーキングプラットフォームで日本を旅行したり、日本旅行の攻略を探したりする人が増えているのを目にした。
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5月の連休は、観光客の多い観光地を避けるため、ルームメイトの趙さんと一緒に曲江遺跡公園に行くことにした。公園といっても名実ともに有名な観光地なので、そこにも観光客がたくさん訪れることがあり、趙さんによると、先月友達とここに来たとき、たくさんの韓国人に会ったそうだ。なので、もしかしたら外国人に会う確率が高いかもしれないと思うと、とても興奮していた。
普段は外国人に会うことが少なく、外国人は本当に映画やドラマで演じているような人達なのだろうかと期待に胸を膨らませていた。前に進み続けると、公園の案内板が見えてきた。日本語科の学生なので、これらの観光地の名前がどのように翻訳されているのか知りたいと思い、案内板の前に立ち、それらの日本語翻訳を声に出して読んでみることにした。
もう一人のルームメイトが、「大きい声を出して読んだら、あとから、日本人が道を尋ねてくるかもしれないよ。」と冗談を言った。すると、驚いたことに、その冗談が 現実となり、読み終えたとたん、一人の日本人が現れた。私たちは日本語を習っているとはいえ、実際に学校以外で使ったことはなく、自分の日本語が通用するのかドキドキしていた。
その日本人は、私たちが案内板を訳したのが日本語だったことに気付き、道を尋ねてきたのだが、突然の出来事にパニックになってしまい、質問を聞き逃してしまった。そこで、もう一度、ゆっくりと質問してもらえるようにお願いした。すると、その日本人は、「あの、すみません。ここから大唐芙蓉園までの行き方を教えていただけませんか。実は、携帯電話の充電が切れてしまったので、地図で調べることができないんです。」とゆっくりと質問してくれた。
それから、私たちは、ゆっくりと相手に伝わるように落ち着いて説明するようにした。「いいですよ。そこへは、この道に沿って北門まで行って、それから外に出て、道を渡ると大唐芙蓉園に着きますよ。」「隣にデパートがあって、そこにはモバイルバッテリーがあるはずだから、そこに行けば充電できると思いますよ。」と付け加えて、説明してあげた。
続いて、その日本人は、「あ、そうですか。本当にありがとうございます。」「日本語が、本当にお上手ですね。」と褒めてもらった。私たちは照れながら、大きく手を振り、「そんなことはないですよ。日本語科で日本語を勉強しているのですが、まだまだです。」と答え、彼の後姿を見送ることにした。
この会話が終わった後、ようやく胸のドキドキが落ち着いてきた。そして、意外にも普通に日本人と接することができたことに驚き、しかも、自分が日本語で日本人を助けたことに誇りを持つことができた。その瞬間、大学で外国語を専攻してよかったなとつくづく実感した。
インターネットの普及により、自由に海外の友人を作ることが可能になった。しかし、ネット上の仮想体験は本物に近い経験ができたとしても、実体験には及ばない。会って話してこそわかることもあれば、相手の目を見て 感情を捉えることもできる。真の意味で遠い国を近くに感じるためには、実際に自分の目で見て、耳で聞いて、体験しなければならない。そうすることにより、真の相互理解を得ることができると思う。これは私が今後も追い求めていくものであり、そして、日中交流に対する切実な期待でもある。
■原題:桜が咲く時に会いましょう ■執筆者:王奕文(長安大学)
※本文は、第19回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「囲碁の智恵を日中交流に生かそう」(段躍中編、日本僑報社、2023年)より転載・編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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