認知症の母を連れて出勤する教師、許可した校長にも称賛の嵐―中国メディア

Record China    2024年4月28日(日) 11時30分

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孫元金さんは山東省済南市内の中学校教師だ。孫さんが勤務の状況は他の教師と異なる。認知症の母を連れて職場に通っているのだ。ネットを通じてこの話が広まると、多くの人が称賛するようになった。

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孫元金さんは山東省済南市内の中学校教師だ。孫さんが勤務の状況は他の教師と異なる。認知症の母を連れて職場に通っているのだ。ネットを通じてこの話が広まると、多くの人が称賛するようになった。多角的な配慮をした上で特例を認めた校長を含めて「これこそ本当の教育だ」といった書き込みが相次いだ。中国教育報などが伝えた。

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母の認知症で教職を続けられるかの瀬戸際に

机に向かっていた孫さんは、職員室の壁の時計を上目遣いで見た。そろそろ授業の時刻になる。開いていた教科書を閉じた。立ち上がった。しかしすぐに職員室の外に出たわけでない。カップを持って、室内の給湯器に向かった。戻って来ると、今まで自分が座っていた椅子のすぐ後ろの椅子に腰をかけている高齢の女性に、湯が入ったカップを渡した。そして、女性の耳元で小声で何かささやいてから、ようやく職員室を後にした。

女性の名は韓樹芳さん。71歳になる孫さんの母親だ。孫さんの父は早く亡くなった。そのため、女手一つで孫さんを育て上げた。おかげで孫さんはしっかりした教育を受け、念願だった教職に就くこともできた。しかし韓さんは認知症にかかってしまった。判断力を失った母親を家に一人で残して、出勤するわけにはいかない。孫さんにとって「人生の危機」だった。


母親の異変に気付いたのは3年前だった。記憶力の低下だけでなく、外出すると迷子になった。病院ではアルツハイマー病と診断された。

母子家庭の孫さんの家では、それまで母親の韓さんが大黒柱だった。生活は苦しかったが韓さんはへこたれなかった。野良仕事をしたり露店を出したりで収入を得た。孫さんによると、厳しい状況の中で、韓さんは母親らしさを増していったという。息子を守り、息子にしっかりとした教育を受けさせた。家庭の困難のために学業に支障が出るたことは、一度もなかった。

応援したかったが感情だけに溺れなかった校長

孫さんが念願かなって教師になったことで、韓さんは老後を楽に暮らせるはずだった。だが病気になってしまった。孫さんのことは自分の息子と認識できるが、他人については、それが誰だか分からなくなった。母親一人を家に残して出勤することは無理だ。孫さんは思い切って、学校側に母親を同伴して出勤する許可を願い出た。学校には厳しい規則や制度がある。孫さんによると「認めてもらえるかどうか、不安がなかったと言えば、うそになります」と説明した。

孫さんが勤務する済南市長清区第二初級中学(日本の中学校に相当)の馬勇校長は、当時を振り返った。孫さんの事情は理解したが、やみくもに許可することはしなかった。孫さんの自宅に行って状況を調べた。綿密な聞き取りも行った。馬校長は、孫さんの親孝行は激励されるべきと思ったし応援もしたかったが、校長として、教育活動を最優先する大原則は守らねばならなかったからだ。


調査の結果、韓さんの記憶力は低下していることを確認し、さらに、性格は穏やかでとてもやさしいことも認められた。馬校長は「授業など学校の正常な活動に影響を与えることはないと確認できました。私どもの懸念は払しょくされました」と説明した。

人との交流の増加で病状に一定の改善

孫さんの授業中には、他の教師が韓さんの世話をする。学校の警備員も、いつも韓さんの様子に注意している。一方で、記憶力や判断力が低下している韓さんだが、職員室でじっとしているわけではない。いつしか、雑巾を使って窓や本棚を拭き掃除するようになった。何度も何度も繰り返して拭く。廊下もきれいに掃除するようになった。周囲の人が韓さんに気を使い、韓さんは周囲に気を使うようになった。すると、韓さんの病状がやや改善されたという。


校内では、孫さんに付き添われて校内を移動する韓さんの姿が見られるようになった。段差や階段では、孫さんが手を添える。昼食時には孫さんが韓さんのために料理をよそう。学校の食堂なので、周囲には多くの生徒がいる。生徒は校内で韓さんを見かけると、親しみを込めてあいさつをするようになった。

孫さんと母親の韓さん、さらに学校側の対応を知ったネットユーザーの多くが感動した。「この校長はすばらしい」「よい教師だ」「言葉で説明するより、身をもって示したほうがよい。これは最高だ」「校長が語りかけているのは、教育とは教室だけなく、あらゆる場所でできるということだ」などの書き込みが次々に寄せられた。(翻訳・編集/如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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