中国にも東南アジアにも伝わる青銅製の打楽器とは―インドネシアの華人研究者が紹介

中国新聞社    2024年1月7日(日) 23時0分

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中国南部から東南アジアにかけて、青銅製の打楽器が古くから使われてきた。世界的に有名な民族音楽のインドネシアのガムランでは、青銅製の「ガムラン・ゴング」が主要楽器だ。

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世界に伝わる伝統音楽、いわゆる民族音楽のファンならば、「ガムラン」の名を聞けば、どのような響きの音楽なのか、ご存じだろう。ガムランはインドネシアに伝わる伝統音楽の体系で、2021年にユネスコの無形文化遺産としても認められた。そしてガムランを知る人ならば、「中国南部には古くから青銅製の打楽器が伝わっている」と聞けば、「ガムランとのつながりはあるのか」と思うだろう。なぜならガムランの主要楽器は青銅で作られた、ガムラン・ゴングなどと呼ばれる打楽器だからだ。青銅製の打楽器は中国では「銅鼓(トングー)」と呼ばれる。紀元前に作られた楽器の出土品もあり、チワン族のように現在も儀式の際に銅鼓を奏する民族もある。

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インドネシアの4代目華人で、バタム国際大学言語文化教育学部部長のハーマン(中国語名は唐根基)氏は、インドネシアの青銅製楽器の文化や来歴の調査を長年にわたり続けてきた。ハーマン学部長はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、インドネシアの青銅の打楽器(以下、「銅鼓」)を中心に説明した。以下はハーマン学部長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

中国や東南アジア各国に広く伝わる青銅製の打楽器

中国で銅鼓が登場したのは約2700年前だ。銅鼓は中国南部の広い地域とベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシアなどで用いられてきた。インドネシアは多民族国家であり、さまざまな民族が銅鼓を使ってきた。しかし、かつては信頼性の高い統計や記述がなかった。そこで中国の広西民族大学民族研究センターとインドネシアのバタム国際大学が2017年8月と2018年1月に、インドネシアのさまざまな島を巡り十数カ所で共同調査を行った。このことで、インドネシアの銅鼓文化とその歴史の理解がさらに深まった。

インドネシアに銅鼓の神秘を語るさまざまな言い伝え

大まかな統計によれば、インドネシアで博物館や収集家が所蔵して文字情報もそろっている銅鼓は約490点だ。さらに王族や族長が受け継いできた銅鼓もあり、中には「空から降ってきた」という伝承があるものもある。新たに発見されたものとしては、田の土の中、山の上、洞窟や木のほら、森の中、さらには漁師が海底からすくい上げたものもある。2018年1月に調査したアロール島のある族長の一族は258点の銅鼓を所有していた。彼らは、かつて王として君臨した祖先から伝わるものと説明した。

インドネシアの青銅製の打楽器

インドネシアでは、地方によって銅鼓のとらえ方が異なっていた。銅鼓を太陽の神と月の光の神と考える人々もいれば、先祖の魂を呼び子孫に幸福と安泰をもたらすと考える人々もいた。支配者にとっては権威や地位の象徴で、冠婚葬祭では楽器として用いられる。副葬品として使われる場合もあった。銅鼓は、天候を順調にして豊作をもたらし、争いごとを鎮め、人々の意識を結び付ける力があると考えられ、支払いや賠償、縁組の際に使われる地域もあった。パプア島のソロンの街にある湖のほとりでは、地元の人々が銅鼓3点を現地語で「神器」に相当する言葉で呼んでいた。「老母」と呼ぶ人もいた。

銅鼓文化はバリ島、アロール島、クパンなどにも残っており、民族によっては今も銅鼓を尊びつつ使用している。バリ島のジアンヤルでは1705年に発見されたとされる大きな銅鼓が、地元の高台にある寺院に安置され、「月の女神」と呼ばれている。地元の人々は毎朝、線香を焚いてこの銅鼓を拝み、年に1度は例大祭を行う。

由来は今も不明だが、中国との関係を示唆するさまざまな言い伝え

インドネシアの銅鼓の由来については判明しておらず、諸説がある。中国由来説もある。インドネシアのセリヤー島などの伝説では、文明が初めて出現した時期に、人倫道徳を作り出した男が、妻と3人の子を伴って中国に渡り、中国の皇帝から大きな銅鼓を贈られたとされる。男は帰国してから王となったという。

逆に、セリヤー島にやってきた中国の王子がある娘を一目見て恋に落ち、その娘と結婚するための結納品の一つが銅鼓だったとする伝説もある。それ以外にも、「インドの向こうにある国から海を渡ってもたらされた」との伝承もある。私は「インドの向こうの国」とは中国を指すと考えている。

中国南部の人々と東南アジアの人々は、長い歴史を通じて独特で豊富な銅鼓文化圏を形成してきた。インドネシアの人々が銅鼓を好きなのは、文化上の価値と宗教上の価値を認めるからだ。祖先が残した楽器であり、儀礼や祭礼には欠かせないと認識する人もいる。神が宿る楽器と考える人もいる。これらの信仰は今も、一部の地方と民族に残っている。

しかし銅鼓文化は次第に弱まり、伝承は危険な状態に近づいている。一部の有識者はこの状況を憂慮し、近年になり知識人や定年退職した役人などが、さまざまな保護や振興の活動をするようになった。銅鼓を収集して収蔵館を建てたり、観光に組み込んだり、関連書物を著すなどで銅鼓文化の保護と発揚のための努力を続けている。私は、銅鼓を通じて、現代社会で伝統文化をどのように伝承し発展させていくかという普遍的な問題を、人々に深く考えていただきたいと考える。(構成/如月隼人

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