重慶市内に化石が特異な集中場所、「進化の歴史が書き換えられた」の声も

中国新聞社    2023年12月18日(月) 23時0分

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重慶地質鉱物研究院一所の陳陽氏(写真中黄色い衣服を着用の男性)はこのほど、重慶市秀山トウチャ・ミャオ族自治県で大量に発見された化石が、脊椎動物の進化を知るために重要であるかを解説した。

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人の進化の歴史をさかのぼれば魚に至る。これは科学界で広く認められている定説だ。では、「魚から人に至る進化の過程で、最も画期的だって変化は何か?」という質門にはどう答えるか。多くの人は「陸上生活への移行」と言うのではないだろうか。もちろんそうだが、まだ魚として水中生活をしていた時期に、それに匹敵する大変化があったという。顎の獲得だ。そして中国には、現在知られている中で、最も早く顎を獲得した魚が世界でも多く集中する場所がある。その出土状況はどうなのか、また、顎の獲得がどうしてそれほど重要なのか。重慶地質鉱物研究院一所の陳陽チーフエンジニアはこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、そのあたりを説明した。以下は陳氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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太古の魚が顎を持った時、ヒトの体の基本も決定された

人は魚から進化してきたというのは、科学者の共通認識だ。ただし、今日の魚が進化して人になったわけではない。今日の魚と人には4億年以上前の共通の祖先があるわけだ。この共通の先祖は水の中に住んでいて、体の形は今日の魚に比較的近い。もちろん魚から人への進化は一足飛びに進んだのではない。この進化は何億年にも及び、その間に何度も重大な「進化の事件」が発生した。

生物の進化史には、進化系列が存在する。一般的な理解では、無脊椎動物から無顎(むがく)魚類が発生し、無顎魚類から有顎魚類が発生し、有顎魚類の中の1系列が陸地に上がって両生類が発生し、さらには爬虫類が進化し、その中の1系列が哺乳類に進化した。

地球上に現存する脊椎動物の99.8%は顎骨(上顎と下顎)を持っており、有顎脊椎動物あるいは有顎類と総称される。有顎類の出現と台頭は「魚から人へ」という脊椎動物の進化史における最も重要な飛躍の一つだ。ヒトの体の多くの重要な器官と身体内の配置はすべて有顎類の進化の初期にさかのぼることができる。

研究の空白を埋めた「重慶特異埋蔵化石バンク」

しかし、この有顎類への躍進はどのようにして起きたのか。この問題は古生物学界を悩ませてきた。この問題を扱った中国科学院院士(中国科学アカデミー会員)の朱敏氏が主導した「重慶特異埋蔵化石バンク」に関する研究成果は2022年、国際的にトップクラスの学術誌の「ネイチャー」の表紙論文に採用された。

「重慶特異埋蔵化石バンク」は重慶市秀山トウチャ・ミャオ族自治県の一帯で、極めて古い化石が集中して発見されている場所だ。その中には、われわれが「奇跡秀山魚(シュウシャンオステウス・ミラビリス)」と呼んでいる魚の化石もある。奇跡秀山魚は今から4億3600年前に生息していた魚で、現在までに発見された、最も早い時期の顎を持った魚だ。

「重慶特異埋蔵化石バンク」では、蠕紋沈氏棘魚(シェナカンサス・ベルミフォルミス)も発見された。これは、現在発見されている中で最も古い軟骨魚類で、大型の有顎魚類だ。状態のよい化石が発見された。シェナカンサス・ベルミフォルミスの体表は硬い甲羅状で、板皮類(ばんぴるい)と呼ばれる。現在の軟骨魚の代表にサメやエイがある。これらの魚はしなやかな運動するイメージがあるが、その祖先は体を曲げにくかった板皮類であることは興味深い。

重慶特異埋蔵化石バンクは澄江生物群、熱河生物群に続き、中国で発見された「生命の樹」の進化の重要な節目にある「特異埋蔵化石バンク」だ。同発見はシルル紀(約4億4370万年前-約4億1600万年前)の初期の有顎類化石の空白を埋め、有顎類の最も早期の台頭と放射状分化に初めて確実な証拠を提供し、有顎類の最も早期の分化や重要な器官と身体の配置の進化などの重要な科学問題の探索に新たな情報を提供した。世界の生命進化史の従来の認識が塗り替えられた面がある。

同化石バンクの発見は、長期的な調査と発掘作業を経て行われた。朱敏氏は2019年に中国全国の地質調査の成果を分析し、秀山に注目した。ここのシルル紀初期の地層は連続しており、長江が中流に入って流速が低下する部分であるために、沈降物が多い場所だ。この場所では1960年代にすでに、無顎魚類化石が発見されていた。朱氏は、シルル紀の有顎脊椎動物化石研究の新たな突破口になる可能性があると考えた。

重慶市計画・自然資源局は朱氏の同作業を重視し、支持した。中国科学院古脊椎動物・古人類研究所と重慶地質鉱物研究院は共同調査チームを結成し、詳細かつ系統的な調査研究の作業を進めた。そのことが、多くの重要な発見につながった。

世界的にも「進化の歴史がほぼすべて書き換えられた」との評価

重慶特異埋蔵化石バンクでは、2021年6月に体長がわずかセンチほどの魚の化石が見つかり「袖珍辺城魚(ビェンチェンイクティス・ミクロス)」と命名された。これはシルル紀後期にいた有顎魚だ。世界でも、シルル紀の有顎魚の完全な化石が発見されたのは、重慶を含めて2カ所だけだ。その他にも22年3月には浜海涌洞魚(「ヨンドンガスピス」)が、同年9月にはシルル紀初期の霊動土家魚(トゥジアアスピス)が発見され、発見が相次いだことで、重慶特異埋蔵化石バンクはますます注目されるようになった。

ネイチャーには、朱氏のチームの科学研究成果を紹介する論文が4本掲載された。うち2本は重慶特異埋蔵化石バンクに関連するものだ。ネイチャーのような国際的にトップクラスの学術誌が2本もの関連論文を掲載したことは、学術における重慶特異埋蔵化石バンクの重要性に対する認識が反映されたものと言ってよい。

もちろん、中国内外の多くの研究者が、重慶特異埋蔵化石バンクにおける研究成果を高く評価した。例えば、各国の学者が参加する古脊椎動物学会の会長を務めたこともあるオーストラリア・フリンダース大学ジョン・ロング教授は、「これは確かに、進化の枠組みを変える驚くべき化石発見だ。有顎脊椎動物の初期の進化の歴史をほぼすべての面が書き換えられた」と寄稿した。(構成 / 如月隼人


※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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