厳しい中国経済、消費をどう牽引するか=専門家は「国民への給付金支給」を提案

Record China    2023年11月4日(土) 6時0分

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中国のポータルサイト・捜狐に1日、現在の景況と今後の経済成長の原動力は何かについて、中国の著名なエコノミストで万博新経済院院長の騰泰氏が分析した記事が掲載された。写真はハルビンの市民。

中国のポータルサイト・捜狐に1日、現在の景況と今後の経済成長の原動力は何かについて、中国の著名なエコノミストで万博新経済院院長の騰泰(テン・タイ)氏が分析した記事が掲載された。

内需拡大は国民所得の構造改革でのみ解決可能

騰氏によると、中国において消費需要を拡大しようとするならば、まず所得分配の問題を解決しなければならない。世界各国のGDPに対する平均投資比率を20~25%と仮定して計算すると、中国のGDPは2022年度が121兆元であるため、年間20~30兆元の投資額が標準的数値となる。ところが昨年度の中国の投資総額は57兆元に上り、少なくとも20兆元は非効率な過剰投資ということになる。騰氏はこの過剰投資分を給付金や手厚い社会保障制度の構築など国民の所得に割り当てることで、消費拡大に転化することができると分析する。国民所得の構造改革を進めることで、中国が長期にわたり直面してきた内需不足を解決することができるという考え方である。

騰氏は可処分所得にも注目する。中国国家統計局が発表したデータによると、2022年度の中国人の一人当たりの平均可処分所得は3万6800元(約76万円)、同総額は52兆元(1073兆6000億円)となり、GDPの43%を占めるにすぎない。一方米国やインドにおけるGDPに占める可処分所得の割合はそれぞれ80%、70%であり、中国は世界最低のレベルにあるという。

乗数効果で見た場合、仮に中国の各省が財政予算から100元(約2064円)を投資に回した場合、ほとんどの省で100元のGDPを創出することはできず、全国の財政支出における投資乗数は1以下となる。一方この100元をたとえば消費券などに代え国民に給付した場合、市場調査結果によると300元(約6200円)以上の経済効果が見込まれ、3倍以上の乗数効果があれば中国の消費総需要を押し上げることが可能になる。

伝統的な意思決定に必要な発想の転換

内需拡大に対する騰氏の理論は極めてシンプルであり、国民所得の構造改革を行い、国民の可処分所得を向上させればよいと指摘する。ところが中国の伝統的な意思決定は、投資により経済成長を促すという考え方に偏りがちである。たとえばビルやプロジェクトへの投資は需要と供給を創出し、目に見える政治的な成果となり、関係部門の利権も絡むことから、伝統的な投資主導モデルを変更することはなかなか難しい。騰氏はまた、中国では国民に給付金を与えて消費を促進させた実例がない点にも着目している。総合的に見て、海外では一般的な消費促進のロジックや社会的な意思決定のコンセンサスが中国では形成されていないと騰氏は分析する。「国民に給付金を与えて消費を促すことは、経済発展の究極の目標である。よりよい生活を求める人々のニーズは、消費により実現される」と騰氏は述べている。

日本の不景気を教訓にできるか

1990年代以降、日本経済は「失われた30年」と呼ばれる不景気に陥り、金融・不動産市場の縮小、人口の高齢化などさまざまな要因が日本経済の長期的な停滞を招いた。こうした外国の経済活動における教訓には警戒を高める価値があると騰氏は述べている。たとえば日本の著名なエコノミストであるリチャード・クー氏は景気後退によるバランスシートの縮小に着目しているが、騰氏も同様に、2017~2018年頃から始まったと見られる中国の企業や一般家庭のバランスシートの縮小に注目している。不動産価格や株価の下落、収入の減少は、家計の消費控えを招き、全体的な需要不足を加速させるからだ。

経済発展は経済の自立的な法則を尊重しなければならない、と騰氏は言う。中国は経済構造全体が変化することに伴い、一部の需要不足や伝統産業の生産力過剰問題に直面している。特にインフラ、不動産、建設資材、家電などの産業は伸び率が下降し、伝統的な消費や衣食住、燃料、自動車産業などは常に供給過剰の状態である。全般的に供給過剰な不動産業界においては、家族構成の変化に伴い、若者の購入需要が減少し、10カ月以上のマイナス成長と需要不足が深刻化する一方であるという。

AI技術革命がもたらす明るい未来

現状において、中国の景気の行方はかなり悲観的といわざるを得ないが、騰氏は技術革命の新たな波がすぐそこまで来ていることを見逃してはならないと指摘する。なぜならば、20年前には人々が想像もしなかったインターネットが、AIやメタバースの技術革命により、私たちの生活や働き方を完全に塗り替える可能性があるからだ。AIやメタバースの新たな技術が経済サイクルに与える影響は、50年を景気循環の目安とするコンドラチェフ・サイクルにとどまらず、GDPでは推し量れないほど生産様式が変わると予想されており、ゴールドマン・サックスは今後10年間でAIの市場規模は7兆ドル規模に達すると予測している。

騰氏は、こうした世界的な技術革命がもたらすチャンスを中国のすべての業界は検討しなければならないとの見解を示した。(翻訳・編集/榊原)

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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