〈新時代の新疆ウイグル自治区4〉タクラマカン沙漠一周鉄道2712km完乗で、生活向上を実感

小島康誉    2023年11月2日(木) 17時30分

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新疆の更なる発展の大動脈・タクラマカン沙漠一周鉄道2712km完全乗車し、人々の生活向上を実感(乗車券の個人情報部分一部シール貼)

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新疆の南部に広がるタクラマカン沙漠は実に広い。日本の総面積の約9割に相当し、サハラに次ぐ世界第二の大沙漠。古より「死の海」と称されてきた。往来が困難で、泉もなく植物も生えておらず、高さ数m数10mの砂丘が延々と連なり、強烈な太陽が照り付け、方向感覚は鈍り落命した旅人なども少なくない。沙漠奥地に残存するニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡で長年にわたり調査してきた筆者は沙漠の恐ろしさを熟知し、沙漠初心者に必ず「トイレでも遠くへ行かないように」と注意するほど。沙漠のない日本で沙漠の過酷さを理解するのは容易ではない。

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タクラマカン沙漠は南新疆の発展の足かせとなっていた。沙漠北縁に所在するコルラ(庫尓勒)までは40年ほど前に鉄道開通。順次延長工事が行われ、アクス(阿克蘇)・カシュ(喀什)・ホータン(和田)まで営業していた。またコルラからルオチェン(若羌)経由で青海・チベットなどへの路線も営業していた。ホータンとルオチェンを結ぶ「和若鉄路」825kmが昨年6月16日に開通し、タクラマカン沙漠一周鉄路2712kmが完成した。大沙漠一周の世界初の鉄路である。筆者はレコードチャイナで「熱烈祝賀!タクラマカン沙漠一周鉄道開業」を発信(22/6/25)した。

沙漠一周鉄路概念図と「和若鉄路」計画図(「新疆網」より)

「和若鉄路」の一部区間は高架線(楊新才氏提供)

今回の新疆各都市視察に際して、人々の生活を知るためにコルラ・ルオチェン・チエモー・ミンフゥン・ホータン・カシュ・アクス・コルラを時計回りで乗り継いだ。人々の生の姿が確認できた。ほぼ満席の乗客にギスギス感はなく、移動を楽しむ姿に生活は正しく向上していると感じた。列車は区間により鈍行・快速があり、座席は数種あるようだが、筆者は「硬座」3段ベッドが向い合せにある6人席を利用した。車内販売も回ってくる。給湯器もあり即席麺を楽しめる。トイレはいわゆる「和式」で高齢者には辛い。車両によっては「洋式」もある。乗車時に車掌が中国人は身分証、外国人はパスポートを確認。車中で鉄道警察にパスポート確認を求められることも。列車内は禁煙だが、デッキで喫煙する人も少なくない。

9月17日コルラ16:33発でいよいよ一周開始

硬座3段ベッド6人席・通路・休憩用椅子

18両編成で、3+2椅子席車両もある

ミンフゥン駅ビルには「五星出東方利中国」、ビックリ!我々日中調査隊が発掘し国宝となった錦の文字

雄大な崑崙山脈や天山山脈、沙漠、鉄路を砂から守る防砂帯、農園、民家、工場などが車窓から楽しめる。会話好きの人々との四方山話も楽しい。中国鉄道系旅行会社が「全線鉄道利用観光ツアー」を3月から始めた。夜間に列車で次の町へ移動し、昼間に観光する「クルーズ型」、数日おきにホテル宿泊。一回あたり530人ほどで1人4000元(約8万円)程度とか。筆者の合計乗車時間は30時間24分、計727元(約1万5000円)。日本の旅行社もツアーを募集しているようだ。

車内販売もQR決済、現金の人は殆どいないとか

線路両側には砂から鉄路を守る防砂帯が延々と

高速道路が並走する所もある

農園も沿線の所々に

都市間には空路が次々と開かれ高速道路も開通しているが、輸送量が格段に多い鉄道の開通は南新疆の発展に大きな役割を果たすだろう。沙漠一周鉄道開通前にはレコードチャイナに「タクラマカン沙漠一周鉄路2700kmの旅」を寄稿(22/2/5)し、テレビ用素人シナリオも書いた。どこかのTV局さん如何ですか?面白い番組になるのでは。新疆政府との仲介は引受けます。各都市視察を終え9月25日20時27分コルラ安着。地元政府により一周祝賀夕食会。筆者は「タクラマカン沙漠一周鉄道2712kmを旅行社ツアーでなく完乗した初の外国人」と方々で言われたが、果たして?なお、ウルムチ~コルラ間やウルムチ~ハミ間も鉄道を利用した。

アクス駅で列車到着を待つ人々

乗客との団欒も楽しい。左2人は漢族、右2人はウイグル族

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
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※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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