民衆から追悼の声「中年危機の神」「恋愛を学んだ」=渡辺淳一作品が中国で愛された理由(2)

Record China    2014年8月2日(土) 17時21分

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渡辺氏は『失楽園』で、愛の頂で死を選ぶことだけが、唯一愛が永遠のものになると我々に伝えたが、時に死こそが生命の最高潮で、愛と同様に永遠に存在しうることを教えてくれた。写真は08年6月23日、上海で行われた渡辺氏の新作発表会。

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渡辺氏は『失楽園』で、愛の頂で死を選ぶことだけが、唯一愛が永遠のものになると我々に伝えたが、彼は自身の死をもって、時に死こそが生命の最高潮で、愛と同様に永遠に存在しうることを教えてくれた。80歳でこの世を去った渡辺淳一の訃報は、5月6日に中国に届き、人々は渡辺の作品を探し読み始めたのである。中国各地の大型書店では、渡辺の作品は即座に目立つ位置に並べられた。渡辺がかつてサイン会を開催した上海の書店では、特別に「渡辺淳一の名著」コーナーが設置された。渡辺淳一の『失楽園』『男というもの』などの作品は10年以上の間、常にベストセラーであったが、現在その売り上げが急増し、時には一人で数十冊もの渡辺作品を買っていくこともあるという。

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◆「愛」は日中共通 常にベストセラーに

渡辺作品は1984年に中国で初めて出版されたが、当時は流通経路が大きく乱れ、海賊版が至るところで販売されたため、その正確な販売データはない。2005年に渡辺氏は自著の著作権保護のため代理人を立て、計画的に中国に進出した。渡辺氏の300以上の作品のうち、現在40余りの作品の著作権が中国で取得されている。そのうち33作品の著作権を持つ出版社によると、現在、中国では『事実婚 新しい愛の形』『熟年革命』『無影燈』『何処へ』など16作品が出版されているが、売れ行きが最も良いのは渡辺の最後の作品ともいえる『愛ふたたび』である。本書は2014年1月に販売されるとすぐに数万部を売り上げ、現在通販サイトAmazonの売上ランキングで50位近くまで浮上し、出版社は増刷を急いでいる。まだ出版されていない17作品も次々と登場する予定だ。

作者の死によるブームは通常一時的なもので、作家の多くは死去後時の経過とともに、作品の売り上げは減少傾向をたどるが、渡辺作品においては、その主題は永遠に「時代遅れ」になることはなく、長年にわたり読まれると言われている。

2014年日中関係が冷え切っている今日、中国メディアが一人の日本作家の死去にこれほど関心を寄せるのも多少奇妙なように思える。政府広報文書や外交政策を扱う公式メディアも渡辺淳一氏死去のニュースを報道し、渡辺氏に対し「日本知識人の良心」との評価を表した。戦争の時代を生き、日本軍が中国人労働者を奴隷のようにこき使うのを目の当たりにした渡辺氏は、政府首脳による靖国神社参拝はアジアの人々の感情を傷つけると、一貫して反対していた。

◆女は『男というもの』を読み、男を理解する

厳粛な公式メディアと対照的だったのは、中国民衆から聞こえる声だった。商業メディアは芸能スターと同じ扱いで渡辺氏の死を報道した。彼らは方々で渡辺氏と接したことのある人物を探し、そのエピソードを尋ねた。

サイン会で渡辺氏に会った女性は、渡辺氏は筆に墨をつけ、一人ひとりの読者のためにゆっくりと丁寧にサインを書き、それに両手を添え読者に手渡し、その間も常に笑顔を絶やさなかった、と述べた。

渡辺作品の編集経験のある独身男性は、渡辺氏から「恋愛の失敗を気にするな、男は女に振られ捨てられるもので、それにより強く成長し、最後には愛を手に入れる」ということ学んだ。

ある販売責任者は、「渡辺さんがホテルでテレビ局のインタビューを受けた後、渡辺さんは自分から一杯飲みにいかないかと誘った。しかし、誘われたのは皆、美人の編集者と記者で、あまりの忙しさに疲労困憊だった私たち男の編集者と営業には、ただ一言『お疲れ様でした』と言っただけだった」と語る。

渡辺氏に会ったことのない人々も、様々な方法で感想を発表している。ある人は、インターネット上に「神様は中年の危機に直面した。そのため愛の巨匠・渡辺を呼び寄せたのだ」と書き込んだ。ある女子大学生は、「男はシモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』を通して女を理解し、女は渡辺淳一の『男のいうもの』を読み、男を理解する。この本で私も多くのことを学んだ」と述べた。

さらに「渡辺の中国での成功は偶然であった。『失楽園』が中国で出版されるのが、もし10年早ければ審査に通らなかったのは目に見えるし、もし10年遅ければ、見聞豊かになった中国人は、『失楽園』に驚き騒ぎ立てることはもうなかっただろう」と語る人もいる。

40歳になってから『失楽園』を再び読み直した読者は「ある程度の人生経験がある人だけが渡辺作品を読み取ることができる。彼の言葉は人を惑わし、失望することは百も承知でありながらも、自分の奥底の感情が見たいがために思わず読んでしまう」と述べた。(続く)

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