米軍は中国人民解放軍と建設的な関係構築=米国は世界のリーダーだが警察官ではない―米元統合参謀本部議長

八牧浩行    2014年7月30日(水) 6時30分

拡大

29日、自衛隊と米国軍の元制服組トップ4人による「日米同盟を考える」と題したパネルディスカッションが開催された。この中で、米国側は日米関係強化の重要性を指摘した上で、「中国とは建設的な関係を築きながら、紛争になるのを避けなければならない」と強調した。

(1 / 6 枚)

2014年7月29日、日本の自衛隊と米国軍の元制服組トップ4人による「日米同盟を考える」と題したパネルディスカッションが、日本記者クラブで開催された。この中で、米国側は日米関係強化の重要性を指摘した上で、「中国とは建設的な関係を築きながら、紛争になるのを避けなければならない」と強調した。また、「日米中は経済で強い相互依存関係があり、冷戦時代とは全く異なる。リーダーたちがリーダーシップを発揮して、問題を(軍事的な手段ではない方法で)解決しなければならない。米国は世界でリーダーであり続けるが、警察官ではない」と語った。

その他の写真

これに対し日本側は中国の軍事費の急激な伸びを指摘し、尖閣諸島問題で力で現状を変更するようなことがないよう、中国抑止に力点を置くべきだと訴えたが、中国と信頼性のある関係構築を志向する米側との微妙なズレが目立った。中国の「民兵」による尖閣諸島上陸をいかに抑止するかについても、日米双方の認識の相違が見られた。

毎年、戦略対話を重ね共同軍事演習まで行っている米中間と異なり、日中間には首脳会談も開かれていない現実をまず打開することから始めなければならない。最優先課題として、偶発的軍事衝突を回避するためのメカニズムの構築が望まれる。

パネルディスカッションの出席者は齋藤隆 第2代統合幕僚長・海将、折木良一 第3代統合幕僚長・陸将、リチャード・マイヤーズ 第15代統合参謀本部議長・空軍大将、マイケル・マレン第17代統合参謀本部議長・海軍大将―の4人。

主な発言要旨は次の通り。

マレン元統合参謀本部議長・海軍大将=21世紀はアジア太平洋の世紀であり、この地域の安定を願っている。中国は経済、軍事面で拡張を続け、米国としても苦慮することもある。しかし、中国とは建設的な関係を築きながら、紛争になるのを避けなければならない。その抑止には日米関係が要(かなめ)になる。日本国民にとっても世界全体にとってもいいことだ。

マイヤーズ元統合参謀本部議長・空軍大将=米国と中国の関係は複雑だが、経済相互依存関係が高まっている。サイバー、宇宙、東シナ海、南シナ海などをめぐる問題もあるが、中国に関与し、透明で信頼性のある関係を構築していく。

折木・統合幕僚長・陸将=中国の軍事費は10年間で4倍になり、海軍、空軍の近代化も進展している。2008年〜2009年が転換期だと思う。どのように向き合うかだが、軍事的な対抗ではなく、日米関係強化による抑止に力点を置く必要がある。尖閣問題などでは、力で現状を変更することがないよう、守るべきは守っていかなければならない。

◆グレー事態には米軍隊は出動せず、日米の認識にズレ

齋藤・元統合幕僚長・海将=中国との関係はグレーな事態をどうするか、ホットな戦争状態にならないよういかに抑止するかが重要だ。尖閣は有事になる前に(外交努力も含め)どう抑止するかだ。日米は連携を強め、共同で対処すべきである。

マイヤーズ氏=日米同盟は堅ろうであり、尖閣は日米安保第5条の適用対象だ。ただグレーゾーン事態に米軍が対処することはない。米国では海岸警備隊が責任を負うものであり、軍隊は出動しない。

中国人民解放軍とは軍事交流を重ねている。米中軍事対話は、米軍機による駐ユーゴ中国大使館誤爆事件やEP3事件(中国海南島の南の空域で、米軍の電波情報機EP3と中国空軍のF−8戦闘機が接触、米軍機が墜落した)などにより紆余曲折があったが、互恵性を尊重し、関係が途絶えることはなかった。

マレン氏=米中軍関係は良好だ。中国海軍が初参加したリムパック(米海軍主催の太平洋共同軍事演習)の直前に米司法省が中国人民解放軍要員3人をサイバー攻撃容疑で起訴したにもかかわらず、予定通り実施された。中国は国際ひのき舞台でプレーヤーになっている。どの国も中国を関与させなければならない。

 米国は今後ともグローバルパワーであり続けるが、中東やウクライナ問題にも対応せざるを得ない。予算が削減されている中で全体のバランスも考慮する必要がある。

マレン氏=日米中の間には経済で強い相互依存関係があり、冷戦時代とは全く異なる。リーダーたちがリーダーシップを発揮して、問題を(軍事的な手段ではなく)解決しなければならない。米国は世界でリーダーであり続けるが、警察官ではない。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携