凌星光 2023年7月3日(月) 11時30分
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沖縄県の玉城デニー知事が訪中する。日本国際貿易促進協会訪中団の顧問として北京で中国の要人と会う予定だ。その後、個別に福建省を訪問し、沖縄県と福建省の経済文化交流を促す。写真は福建省福州市。
沖縄県の玉城デニー知事が3日から7日にかけて訪中する。日本国際貿易促進協会訪中団の顧問として北京で中国の要人と会う予定だ。その後、個別に福建省を訪問し、沖縄県と福建省の経済文化交流を促す。玉城知事肝煎りの、沖縄の平和の声を発する地域外交の一環としての重要なステップである。
玉城知事は今年3月に訪米し、辺野古基地建設再考を訴えると同時に、中国脅威論と台湾有事が議論される中、平和的外交による緊張緩和の重要性を訴えた。4月には地域外交室を設置し、東アジア諸国に向けて積極的な平和外交を展開する意思を表明した。そのスタートとして、6月初めに照屋義実副知事(台風襲来により知事に代わって参加)が韓国の済州島を訪問し「グローバル平和都市連帯」会議に出席した。
玉城知事の今回の訪中は、三つの大きな意義があると考える。
一つは米中対立の緩和である。米国の対中抑止政策による世界の分断は誰の利益にもならない。それは米国自身の利益を損なうことにもなり、壁にぶつかることは目に見えている。にもかかわらず、対中抑止力強化の名のもとに、G7サミット会議で対中圧力強化の声明を発表し、沖縄はそのあおりを受けて軍事基地化が進み、対中前線基地と化しつつある。沖縄の平和と安全は、米中の対話と緊張緩和によってのみ確保されると訴える玉城知事の主張は理にかなっている。
二つ目は日中関係の改善である。先月末の県議会で、ある議員の「領海侵入について抗議すべきだ」との挑発に対し「発言しないことも一つの対応」と答弁し、尖閣について触れない姿勢を示した。「係争棚上げ、共同開発」に戻ることが尖閣問題解決の根本策であるが、当面、これは望めないからであろう。また、6月23日の「慰霊の日」追悼式で、昨年12月に閣議決定した安保三文書に懸念を示し、「対話による平和外交」を求めた。追悼式前の岸田首相との会話では、地域外交推進の趣旨を説明し、首相から「沖縄の良さを発信していく意味で非常にいい」と評価されたとのことだ。今回の訪中が、日本政府の対中対話による「建設的で安定的な関係構築」に結びつくことが期待される。
三つ目は両岸関係の平和的発展促進である。「中国脅威論」、「台湾有事」、「今日のウクライナは明日の東アジア」はつくられたものである。中国のGDPは米国に近づいているが、軍事費は米国の3分の1である。軍事費の対GDP比が米国は4%近く、中国は1.3%足らずであるからだ。いわゆる中国の軍事費膨張は虚像である。軍事演習についても台湾独立勢力と外部勢力の挑発への対抗措置であって、平和統一方針は一貫している。玉城知事の台湾、福建、沖縄三地域経済協力システム構築の考えは台湾海峡の緊張緩和に寄与するであろう。
ここで一言触れておきたいのは沖縄地位未定論の論議である。確かにカイロ宣言では台湾の中国返還は明記されているが、沖縄の地位については不明確である。そのため、10年前に尖閣所属問題に絡めて、沖縄地位未定論が中国で議論された。最近、日本の台湾問題での内政干渉に絡めて、再度この論議が盛り上がったようだ。しかし、それは非公式のSNS上のことであり、正式に取り上げられることはないだろう。中国の人類運命共同体理念に相反するからだ。
ただし、沖縄の特殊性を活かして、独特の役割を発揮させることが考えられる。沖縄の人たちは琉球王国時代に東アジアの交流の場として栄えた歴史をよく語る。「万国津梁の鐘」の復活である。それはまさに21世紀の平和と繁栄の国際政治に見合った沖縄の進むべき道を示している。日本の南端にある沖縄が、東アジアの中心にある地理的利点を生かし、超特区として地域創世の先端を歩む。それは日本全体の再生を促すものであると同時に、東アジア共同体、東アジア運命共同体の構築につながるものとなる。
玉城知事は24日、「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」大会に出席し、「平和的な外交・対話による緊張緩和や信頼醸成に向けた」企画を称え、沖縄が今後も末永くこのような役割を果たしていく意思を述べた。今回の訪中がこれに弾みをつけることを期待したい。
■筆者プロフィール:凌星光
1933年生まれ、福井県立大学名誉教授。1952年一橋大学経済学部、1953年上海財経学院(現大学)国民経済計画学部、1971年河北大学外国語学部教師、1978年中国社会科学院世界経済政治研究所、1990年金沢大学経済学部、1992年福井県立大学経済学部教授などを歴任。
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