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アリババグループ成長の秘訣は女性にあり?女性役員比率30%、スター役員を輩出

高野悠介    2023年5月24日(水) 6時0分

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アリババは創業以来、女性が活躍してきた。その系譜をたどり、今後を展望してみよう。

アリババの張勇CEOは3月末、事業の6分社化を発表した。阿里雲(クラウドコンピューティング)、淘宝天猫商業、本地生活、国際デジタル商業、菜鳥(物流)、文化・娯楽の6部門をそれぞれ独立運営する。注目は張CEOが直接率いる阿里雲と祖業であるネット通販を統括する淘宝天猫商業だ。この部門のトップは載珊氏という女性だ。アリババは創業以来、女性が活躍してきた。その系譜をたどり、今後を展望してみよう。

■創業メンバー…女性3分の1

アリババには「十八羅漢」と呼ばれる18人の創業メンバーがいる。そのうち女性は彭雷、張瑛(馬雲夫人)、蒋芳、載珊、金暖影、韓敏の6氏で、全体の3分の1を占めている。

最も有名なのはアント・グループを大成功に導いた彭雷氏だろう。1971年生まれで、浙江工商大学で経営管理を学んだ。夫の孫彤宇氏も十八羅漢の一人だ。

彭雷氏は、後に創業者・馬雲(ジャック・マー)氏の右腕、女馬雲などと呼ばれるが、創業時は何の専門性も持たない月給500元の雑務係だった。その後10年間は人事を担当し、有能な人材の採用に貢献している。馬雲氏は2010年に彭雷氏を支付宝(Alipay)のCEOに据えた。しかし、彼女には金融や決済の知識はまるでなかった。当時の支付宝は多くの苦情や問題を抱えていた。しかし、彼女の学習能力は極めて高かった。ポイントを素早くつかみ、業務報告した部下に強い印象を与えた。そして、ネット通販プラットフォーム・淘宝の決済ツールから脱却し、新収益モデルの確立を打ち出す。その目標はQRコード決済としてのAlipayで、MMFの「余額宝」、小口金融の「花唄」「借唄」、信用スコアの「胡麻信用」などに次々に実現していった。いずれも大成功を収め、中国人の生活を一新した。2016年に中国人民銀行の主導で「中国互聯網金融協会」が設立されると、副会長に選出される。翌2017年には胡潤女性企業家ランキング6位に選出された。2014年にアリババから分離したアント・フィナンシャル(現アント・グループ)はいつの間にか世界最大のユニコーン企業となっていた。目もくらむ大成功だった。

■利益相反…拼多多もアリババ系?

彭雷氏は2016年にアントのCEOを外れ、2018年には会長職からも退いた。これには理由がある。彭雷氏の夫、孫彤宇氏は淘宝の初代CEOを務め、淘宝の父とも呼ばれていたが、馬雲氏と意見が合わず、2008年にアリババを退社した。その後、拼多多の主要エンジェル投資家となる。拼多多は2015年の創業以来、共同購入型ネット通販として急成長を遂げた。創業者の黄錚氏は、孫彤宇氏の理念は拼多多の成功に大きな影響を与えたと述べている。隠れアリババ系とも言える。とにかく夫がアリババと利益相反の関係になった。彭雷氏がアントの会長を辞した2018年、拼多多は創業わずか3年で米国ナスダック上場を果たしている。

彭雷氏は、その業績の大きさに比べ、経歴の最後は尻すぼみになった印象だ。このような事情から、仕方なかったのかも知れない。

■載珊氏…ネット通販事業の王道を歩む

そして現在、最も注目されている女性は同じく十八羅漢の一人、載珊氏だ。アリババ最大のプロフィットセンターである淘宝天猫商業のCEOとなった。

ネット辞書に出身地や生年の記載はないが、馬雲氏が教師をしていた時代の生徒だったようだ。杭州電子科技大学で工程学を専攻し、1999年にアリババの創業グループに参加した。2000年代は顧客サービスや広東省の責任者など営業の第一線にいた。2013年には彭雷氏と同様、人事の責任者となる。2017年にB2B事業群とAli Express(国際版淘宝)の責任者、2022年に新設のデジタル商業部門の責任者となる。そして今回の6分社化に伴い、淘宝天猫ビジネスグループのCEOに就任した。ネット通販のあらゆる経験を重ね、王道を歩んできた。

■アリババ史上最大の変化…コンテンツ変換

載珊氏はさっそく動き始めた。これまでの淘宝は商品がコンテンツだったが、これからはコンテンツを商品にする。そのため、史上最大規模の投資を行う。商品、ショートビデオ、ライブ放送を充実させ、全国的な生活総合サービスアプリを志向する。商品、ショートビデオ、ライブ、種草(商品推奨)コンテンツを淘宝の街区(テリトリー)と位置付け、今後5年間で数千万の販売者、1億を超えるクリエーターを集める。販売者をコンテンツクリーターに変えていく作戦だ。

その目的のため、すでに「好物研究所」「態棒」などのアプリをローンチしていたが、効果は限定的だ。次の一手として、種草コンテンツの宝庫「小紅書」との提携もうわさされる。重大な経営判断が次々に迫っており、手腕の見せどころだ。

■成功の秘訣…従業員の49%、役員の30%が女性

日本企業の取締役会はゴマ塩頭の中年男ばかりという景観は一向に変わらず、とても多様な価値観を取り込めるとは思えない。彼らは異論を排除し、守りに入りやすい。日本の小売大手の女性役員は、いなきゃまずいから、と取って付けたような印象が強く、彭雷氏、載珊氏のように企業の屋台骨を背負い、広く世に知られた女性役員は見当たらない。かつて創業者の馬雲氏は、アリババ成功の秘訣を問われて、従業員の49%、役員の30%が女性だからだと答えた。これは真実を表しているに違いない。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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