「春節経済」が注目される理由と新たな側面とは―専門家が「クリスマス経済」と比較

中国新聞社    2023年2月5日(日) 14時0分

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国際的にも「春節経済」が注目されるようになった。以前から存在する「クリスマス経済」とはどう違うのか。写真は春節期の電飾で輝く江蘇省南京市内の夫子廟。

2010年を過ぎたころから、国際的にも「春節経済」に対する注目度が高まった。国際貿易や中国経済、国際経済協力などを研究する華中科技大学の陳波教授は、「春節経済」以前にも「クリスマス経済」という同様の現象が存在すると指摘した。ただし「春節経済」には新たな側面もあるという。陳教授はこのたび、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、「春節経済」について説明した。以下は陳教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

中国人の購買力が向上したことで「春節経済」に注目集まる

世界的な「ショッピングシーズン」と言えばクリスマス期だった。クリスマス期が非キリスト教国からも注目されたのは、西洋が繁栄しており、輸入量の増加により世界経済全体が恩恵を得るからだった。一方で、中国人および全世界で生活する中国系住民にとって、最も重要な祝日は春節(旧正月。2023年は1月22日)だ。しかし、かつては中国人の消費水準は世界的に見て相対的に低かったので、「春節経済」の影響が及んだのは、基本的に中国国内だけだった。春節経済の影響力はクリスマス経済と比べればはるかに小さかった。

しかし今や、中国のGDPは世界第2位を維持し、中国人1人当たりのGDPは1万2000ドルを超えた。中国は中所得国の一員になった。庶民は所得が向上したことで生活の質の向上を求めるようになり、生活必需品だけでなく高級商品への需要も旺盛になった。

一般家庭が春節時に求める商品についても、高級消費財や輸入品の占める割合が上昇を続けている。そのため、春節が全世界にもたらす経済波及効果は増大しつつある。

春節期の江蘇省南京市内の夫子廟

「春節経済」が世界の“書き入れ時”を2倍に延長した

中国の通販サイトでは、「洋貨下郷(舶来品を農村へ)」「閃購全球(全世界を電撃買い)」など、さまざまな春節セールが行われるようになった。多くの海外企業が、春節というチャンスを利用して大きな利益を得るようになった。例えばドイツの場合、春節期のセールによってドイツ車や食品、化粧品などの人気が高まった。

世界のショッピングシーズンには、すでに「クリスマス+春節」の構造が現れ始めている。従来型の西洋主導のショッピングシーズンは、11月末の「ブラックフライデー」に始まり、クリスマスを経過して元旦には終わった。一方で、中国の春節ショッピングシーズンは、基本的に元旦に始まり、春節を経て旧暦1月15日の元宵節まで続く。年によって違うが、多くの場合には2月上旬までだ。つまり、春節経済の世界的な台頭は、世界的なショッピングシーズンの期間を2倍に伸ばした。

現代マクロ経済学の父と呼ばれるジョン・メイナード・ケインズ(1883-1946年)は、「需要が供給を決める」と唱えた。まずは貨幣支出の裏付けのある需要が発生してこそ、経済は動き出すとの考え方であり、今もこの説を信奉する人は多い。春節経済による新たな有効需要の出現が、全世界における供給の動きを活発にし、より多くの雇用を創出、世界経済の活力を増やしたと言える。

春節期の江蘇省南京市内の夫子廟

中国の国家戦略も関連、経済を背景に春節が世界の祝日に

春節経済は、「買い手」としての中国の地位を高めた。中国はしばらく前に、世界一の「売り手」になった。中国製品の恩恵を受けた流通関係者や消費者は多いが、世界の全てが「笑顔」になったわけではない。多くの国が中国製品との厳しい競争に直面し、貿易赤字に不満を言う国も増えたからだ。そこで中国は、「中国は世界から買う、中国は世界に売る」という、新たな方式の貿易発展戦略を打ち立てた。その象徴が上海輸入博覧会だ。従来は輸出に重点を置いた広州交易会も、輸入促進に力を入れるようになった。

これらの動きによる効果は、貿易のバランスを是正することだけでない。中国に商品を売り込もうとする業者は、中国の品質基準や文化や習慣、中国人の好みを念頭に置くようになった。そして国際的に、生産や事業計画において春節経済を念頭に入れる製造業者が増えることになった。

また、クリスマス経済は従来型の商取引によって発達したが、春節経済には電子商取引(EC)が普及するのと時を置かず成長した状況がある。そのため、春節経済の取り引きではECの比重が大きい。結果として、春節経済は越境ECなど貿易のデジタル化も後押しすることになった。

春節経済については、中国人の海外旅行も見逃せない。コロナ発生前の2019年に海外旅行をした中国人は延べ1億5500万人に達し、海外における消費額は1338億ドル(19年12月の為替レートで約14兆6000億円)を超えた。いずれも世界第1位の規模だ。海外の関連業者は、中国文化や中国人の消費習慣を重視することになった。

これらの状況により、中国の春節は世界的な祝日になったと言える。今では多くの国の指導者が春節を祝賀する。また、春節が国や地域の正式な休日になったケースも目立つようになった。春節経済のグローバル化は、世界に向けて中国の歴史や文化、中国の伝統などをアピールすることにつながる。春節経済の国際化は、中国人がより多く世界についての見聞を広げ、外国人がより広く深く中国を理解することにつながっている。

新型コロナウイルス感染症は過去3年間、各国の経済協力および文化交流に深刻な変化をもたらした。中国も大きな影響を受けた。しかし中国の感染管理・抑制措置が最適化されるにつれ、中国と世界の交流は急速に回復しつつある。中国の春節経済は再び世界の注目を集めることになった。春節経済はこれからも、世界に喜びと繁栄を共有する機会を提供し続ける。(構成 / 如月隼人

春節期の江蘇省南京市内の夫子廟

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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