中国新聞社 2022年9月29日(木) 22時30分
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漢字は中国内外の交流を促進する役割りを果たしてきた。同時に「美の追及」の対象にもなった。写真は甲骨文字が大量に出土した河南省安陽市にある中国文字博物館。
漢字は中国で生まれた文字だ。表意文字である関係で数が多い上に形が複雑な文字も多く、学ぶことが困難という面がある一方で、それぞれの文字に含意が込められているので、言葉の成り立ちについて深く考察しやすい。また多様な造形から、芸術分野としての「書」が成立した。清華大学の黄徳寛教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、漢字が持つ特徴や生命力について説明した。以下は黄教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■古代四大文明で発明された文字中、漢字だけが使われつづけている
漢字は中国文化の象徴だ。そして極めて長い歴史を持つ。中国以外ではエジプト、現在のイラクとその周辺のメソポタミア、さらにインドの一部で、世界の古代四大文明が発生した。いずれの文明でも文字が発明されたが、漢字以外の文字は滅んでしまった。漢字が長く続いていることは、文明そのものが続いていることに関係している。中国文明が途切れることなく続いたことは、漢字の発展に豊かな土壌を提供することにもつながった。
漢字の出発点は物事の形状や様子の描写だ。言葉とは物事そのものと言語音を結びつけるものだ。初期の漢字は、物事を記号化することでこの問題を解決した。語尾変化などがない中国語の特徴も、漢字の利用には有利だった。このことも、漢字が使われ続けた原因の一つだ。
中華文明の大きな特徴は多元性と一体性が同時に存在していることだ。漢字は異なる方言区の人が意思疎通をするための、ひいては異なる民族の人が意思疎通をするための共通の道具になった。中国語の歴史を見れば発音の大きな変化もあったが、漢字で書かれた古い書物を読めば、さまざまな先人の思想や知恵を知ることができる。読み方に関係なく意味を理解することができるからだ。漢字は歴史上、広く奥深い中華文明の伝承や発揚、さまざまな民族で構成される中華民族共同体の維持と強化に、大きな役割を果たしてきた。
ただし漢字そのものや使用法は、完全に固定されたものではなかった。漢字システムは中華文明の発展の過程の中で自己完備と自己革新を繰り返した。漢字の永続的な生命力は、漢字と中華文明、漢字と中国語、漢字システム自体の発展が共に作用したことに由来する。
■漢字の美しさは、形状によるものだけではない
漢字の出発点は物事の図形描写だった。しかも、漢字の形については図形としてのバランスをとることが追求された。従って漢字の造形は、美の追求と結びついた。
初期の甲骨文や金文の時代には、漢字は刀を用いて骨や金属に刻まれたが、時代が下ると柔らかい毛筆が使われるようになった。そうなれば、筆を操る際の力の加減や筆先を移動する速さなどが、書かれた文字にはっきりと示されることになる。そのため、人々は漢字についてより強固な美意識を持ち、文字としての美しさを追求するようになった。このことで、芸術の一分野である「書」が成立した。
世界の他の文明でも、文字の美しさを意識することはあるが、漢字ほど豊かで高度な芸術分野を出現させた文字体系はない。漢字は単なる表記のための記号ではなく、審美の対象となった。漢字の美とは、中華文明が持つ典型的な美の一つだ。
漢字は思考対象についての生き生きとしたイメージを内包している。たとえば「字」という漢字は本来、「屋根のある家屋に子がいる」ことを示す。つまり子を産んで大切に育てることだ。それが後に、現在の「字」という意味で使うようになった。つまり「字」とは子に対するのと同様に、大切に扱い育む対象というイメージがあった。このような考え方は、すべて先人の思想と知恵の結晶であり、漢字の美しさには、形としての美しさだけでなく、人々の知恵の美しさも含まれる。
■文化文明の伝播と交流に役立つ漢字、中国人としては環境整備を
漢字はまず、中華文明内部においての記録と意思疎通に貢献した。そして漢字は、中華文明を外の世界に伝える最も重要な担い手になった。日本や朝鮮半島、ベトナムなどはいずれも、中華文明の影響を強く受けた。
これらの国の人々は、漢字文献を通じて中国文明への理解を深め、さらに漢字を用いる文章で記録や伝達を行った。日本では独自の表記システムが編み出されたが、漢字は放棄されたのではなく、表記上の重要な構成要素として使用され続けた。
近代以降は、華人が世界各地に移り住むようになった。華人とともに漢字を含む中華文化が世界各地に伝えらえた。最近では、中国と世界各国の経済や貿易、文化、科学技術の協力交流がより頻繁かつ広範になり、それによって国際的な中国語学習ブームが出現した。
文明の交流と相互参照は人類社会の発展の必然的な選択だ。中国が世界第2位の経済大国になったことで、世界各地で「中国をもっと知ろう」という動きが強まった。漢字は中国と中国外の交流にとって、重要な懸け橋になった。各国の人々は、漢字を通じて中国文化をさらに理解しようとしている。
われわれは、さまざまな国や民族の人々が中国語を、そして漢字を学ぶことを積極的に支援し、支援するための条件づくりに努めねばならない。中国の多くの大学がこの方面でのプラットフォームの構築に努めている。世界で中国語や漢字を学ぶ人が増えれば、中華文化を理解する人も増える。これは中華文明と世界文明が交流して互いに参考にしあい、「美」を共有することに役立つはずだ。
われわれは、漢字をいかにしてよりよく伝えるべきなのか。まず研究者は、漢字について正しい説明をして、漢字文化の内容をしっかりと伝えねばならない。次に、漢字に関連する読み物や教材を提供せねばならない。そして中国語教師の養成も必要だ。現代中国語について教えられるだけでなく、古い文書の研究成果も踏まえて、外国人学習者により多くの指導と援助を与えられる教師を育成せねばならない。
さらには、デジタル時代ならではの中国語や漢字の教材や読み物の開発に力を入れることも考えられる。外国人読者や学習者が、デジタル・コミュニケーションを通じて漢字についての知識をより手軽に得ることができ、中国文化をよりよく理解できるような状況を生み出すことが可能なはずだ。(構成 / 如月隼人)
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Record China
2022/9/26
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