Record China 2022年9月19日(月) 17時0分
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英エリザベス女王の国葬の日。1980年代にロンドン特派員を務めたので、様々な思い出がよぎった。英国で日本企業の着工式や開所式を取材したが、女王をはじめ王室の賓客が参列した。
2022年9月19日、英エリザベス女王の国葬の日。筆者は1980年代前半の5年間、ロンドン特派員を務めたので、様々な思い出がよぎった。当時は日本経済の発展期。英国でも日産自動車をはじめ工場の着工式や開所式を現地に行って数多く取材したが、どのセレモニーでもエリザベス女王をはじめとする王室の賓客が参列、テープカットした。「日本に学べ」とのサッチャー首相の「号令」の下、英国ぐるみの熱の入れようだった。
ソニーのウェールズ・カラーテレビ第2工場の開所式では、ダイアナ妃がソニーの帽子を被って「王室広告塔」として愛嬌を振りまいていた。私の横に立っていたダイアナ妃は大きな碧い眼で微笑みかけ、些細な我々日本人記者の問いかけにも気さくに答えていた。
松下電器の英国工場のセレモニーに参列したエリザベス女王は、さすがに帽子は被らなかったが、優雅な「女王スマイル」を絶やさなかった。誰にも相手の眼を見て優しく応対する立ち振る舞いは多くの人に感動を与えていた。
エジンバラ公フィリップ殿下(エリザベス女王の夫君)はロンドン市内でのパーティで私が日本人とわかると声をかけてくれ、「日本は素晴らしい国。イギリスにない管理システム、技術を持っている。かつての日英同盟の精神で協力していきたい」と穏やかな口調で話した。
国葬に参列された天皇陛下は英王室と親交を深め、特にエリザベス女王に可愛がられた。筆者は天皇陛下(浩宮さま)の英国オックスフォード大学留学時代(1983〜1985年)に、浩宮さまを代表取材した。度々同大学を訪ねたほか、英国王室との交流やヨーロッパ王族を訪ねる旅行や登山にも同行。若き日のプリンスのお考えに接した。
当時浩宮さまは世界の多くの若者と交流し、協調と平和友好の精神を学ばれた。パブや寮の食堂などで学友と談笑することも多かった。欧州各地を旅行し、多くの民族との交流を通じて、平和主義と民族多様性を尊重すべきであることを認識された。
欧州で暮らすと世界を東西南北、グローバルかつ多角的に見渡す目が養われる。特に覇権国家だった英国には各地域の情報が集中し、世界中の学者や留学生、ビジネス関係者が集まる。これらの人たちとの交流を通して、地球市民という理念を共有され、民族多様性、平和友好などの課題を地球的規模で捉えておられた。立憲君主制の模範国・英国での2年半はかけがいのない貴重なご体験になられたようだ。
エリザベス女王には特に目をかけられ、バッキンガム宮殿やウィンザー城、スコットランドのバルモラル城などに招待され、英国の宝物や文献について説明を受け、多くの想い出深いひと時を過ごされた。エリザベス女王が自ら淹れた「ティー」でもてなしされたことや、スコットランドに数日間滞在した際は、王室メンバーとピクニックランチやバーベキューを楽しまれた。女王が運転する車の助手席に陛下が乗られたこともあったという。浩宮さまの多様性と平和を志向する誠実なお人柄が高く評価されたと思う。
「寮の部屋ごと、記念に持って帰りたい心境です」―。1985年10月、留学を終えられた日の浩宮さまの率直な感想である。エリザベス女王をはじめ多くの人たちと交流したことを想起し、「かけがえのない想い出だった」と、心から感じておられることがうかがえた。(八牧浩行)
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