村上直久 2022年9月4日(日) 10時0分
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ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、第二次世界大戦以来、欧州で最大の陸上戦を引き起こした。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、第二次世界大戦以来、欧州で最大の陸上戦を引き起こした。軍事侵攻が始まって8月24日で6カ月が経過。国連の発表によると、侵略されたウクライナでは5000人超の民間人と9000人超の将兵が犠牲となった。一方、ロシア軍の死傷者数に関しては諸説あるが、米国防総省は7万~8万人と推定。ウクライナにおける物的損害も大きく、復興費用には7500億ドル(約105兆円)かかると試算されている。
◆ウクライナ経済の復興コスト、7500億ドル超に
国連はウクライナ戦争で少なくとも5614人の民間人がウクライナで殺害されたと発表したが、同時に国連関係者は実数はこれを大幅に上回ると言う。アゾフスターリ製鉄所をめぐって激しい攻防が続いた南部の都市マリウポリでは、目撃者の証言や衛星画像などから民間人の死者は2万2000人に上るとウクライナ政府関係者はみている。
難民や国内避難民となることを余儀なくされたウクライナ人も多い。国連によると、外国に逃げて難民となった市民は670万人、国内避難民は660万人に上る。さらに、戦闘地域で道路や橋が破壊されたり、手元が不如意で逃げられず、戦闘地域に留まっている市民が1300万人に上ると試算されている。米紙ニューヨーク・タイムズが伝えた。
一方、ウクライナでは2月24日に侵略が始まって以来、ロシア軍による砲撃やミサイル攻撃で、18万戸の建物が破壊された。その中には11万5000戸の個人住宅、2290の教育施設、934の医療施設、1991の商店、27のショッピングセンター、715の文化施設、511の行政施設、28の石油貯蔵所、18の民間空港が含まれる。さらに、311の橋が破損、18万8000台の自家用車が破損するかもしくは押収され、2万4800キロに及ぶ道路が破損した。ウクライナにおける建物やインフラの被害総額は1136億ドルに上ると推定されている。
ウクライナ政府は、住民への基本サービスを維持し、経済を回していくためには毎月50億ドル必要だとしており、この数字は秋から冬にかけて増加し、いずれウクライナ経済の復興コストは7500億ドルに膨れ上がるとみている。
◆軍事支援は米英が突出
こうした中で西側諸国はウクライナへの軍事支援を継続しており、金額では米英が突出している。米国は最近、29億8000万ドルと過去最高となる新規援助を発表し、累計額は日本円換算で1兆円を超える。英国が続き40億ドル、3番目が欧州連合(EU)諸機関で25億ドル、4番目がポーランドで18億ドル、5番目がドイツで12億ドルとなっている。ただ、西側はプーチン政権を過度に追い詰めないために、ロケット砲などの射程をロシア領に届かない距離に制限したり、戦車や戦闘機などの供与は控えている。
ところで、戦争はウクライナの農民やアグリビジネスに230億ドル分の利益機会の逸失や、農業機械の破壊、余分の輸送コスト負担に直面させている。ロシア軍による黒海封鎖で、ウクライナでは約2000万トン分の穀物が輸出できずに港湾施設などで滞留している。国連とトルコの仲介により、8月初めから穀物輸送船の黒海の港からの航行が再開され、8月中に100万トン超の穀物が運び出されたが、今後も輸送が順調に進むのかどうか予断を許さない。
ウクライナ戦争が始まって半年、欧州で第二次世界大戦後、最大規模の戦争となったが、戦況は膠着状態が続き、終わりは見えず、長期化が懸念される。
■筆者プロフィール:村上直久
1975年時事通信社入社。UPI通信ニューヨーク本社出向、ブリュッセル特派員、外国経済部次長を経て退職。長岡技術科学大学で常勤で教鞭を執った後、退職。現在、時事総合研究所客員研究員。学術博士。
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