香港はどこに向かうのか、どこに向かうべきか―シンガポールの大学准教授が解説

中国新聞社    2022年9月6日(火) 19時30分

拡大

香港(写真)は、自らの何に立脚して発展を目指すべきなのか。なにを目指すべきなのか。シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策学院の顧清揚准教授が解説した。

香港が世界の金融、ひいては世界経済にとって極めて重要な都市であることは、多くの人が知っている。中華人民共和国の一部であるが、中国大陸部とは制度が異なることも知られている。反当局の大規模な政治運動が発生したことも事実だ。香港はこれからどこに向かうのか。そして「自らが持つ有利な条件」を活用しようとするならば、どこを目指すべきなのか。シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策学院の顧清揚准教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、香港が持つ条件や状況について解説した。以下は顧准教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■香港は背後に大陸部があるからこそ「明るい未来」を描ける

香港について、まず国際的な金融センターとしての強みを語ろう。最も重要なことは、中国本土の発展と世界の発展を結び付ける懸け橋の役割を担っていることだ。中国大陸部では経済発展に伴い、企業の資金需要が大幅に増えた。多くの中国企業が、香港の金融機構を通じて資金を調達した。

香港が中国に返還されたのは1997年だった。それから約25年、香港の金融業の規模と競争力は、比較的良好に保たれた。その主たる原因は、中国本土の経済が急成長したからだ。香港が返還後も市場経済の柔軟性や経済の効率性を維持してきたことも、重要な原因だ。

また、「滬港通(上海・香港ストックコネクト)」や「深港通(上海・深センストックコネクト)」「債権通(ボンド・コネクト)」などの仕組みも作られた。これらにより、香港を通して中国大陸部と国際的な資本市場、株式市場、債券市場がより効率的に結びつけられた。

その結果、一部の国際資本は香港への依存度を高めた。すなわち、香港に資金を蓄えてよいチャンスがあれば中国大陸部市場に進出しようという戦略だ。

香港の金融センターとしてのもう1つの巨大な強みは、人民元の国際化の重要な通路であることだ。これは、他の金融センターとは大きく異なる。香港はオフショア人民元の最大の決済センター・取引センターだ。このことは、香港に非常に多くの金融面での発展の機会をもたらしている。

逆に言えば、中国大陸部との密接なつながりは、香港の経済や金融の発展にとって、ある種の制約でもある。つまり香港の経済発展の前途は、必ず大陸部の経済発展と結びつくことになる。香港はそうしてこそ、持続可能な競争力と生命力を持つことができる。

■「一国二制度」はやはり、「歴史が残した問題」解決の賢明な選択だった

以上により、香港の発展については、現地に適した実務的な発展戦略をとることが非常に重要だ。西側には価値理念とイデオロギーの角度から香港と中国本土のことを語る人もいるが、これは香港現地の発展の実際に合致していないと思う。

香港は英国統治下で、中国本土とは大きく異なる道を歩むことになった。中国本土とは異なる経済や仕組みが確立された。これは、香港の本土返還に際して直面を余儀なくされた「歴史が残した問題」だった。

「一国二制度」はこの問題を解決するための非常に実務的で独創的な方式だった。中国中央政府は、抽象的なイデオロギーの立場から解決方法を選択したのではなかった。「一国二制度」は、中国政府が実務性と柔軟性を備えていたことが反映されたものだ。「一国二制度」は実際に、香港の長期的安定を維持するための良好かつ実行可能な選択だった。

私は「一国二制度」の最大の利点の一つとは、異なる政治モデルと経済モデルを香港で実践し、革新し、香港と大陸部の交流に適した最適なモデルを探求することが可能な事と考えている。このことは、二つの異なる制度や異なる発展モデルを相互に補完・結合し、互いに長所と短所を補い合うことで、香港の発展に合った最適なモデルを作り出すことに結びつく。

中国中央政府の大きな強みとは、全体的な計画と統一的な計画調整の能力だ。これらは香港の発展を外部から支える良好な環境を提供している。われわれは実際に、香港が世界的な経済・金融面での大問題に直面しても全体的に安定を保つことができることに、中央政府と大陸部が香港に対して与える政治と経済、金融面の支持が大きく奏功していることを見た。

中国中央政府と中国大陸部は、香港の地元経済の発展を促進するための重要な「護衛」の役割を果たしている。典型的な事例の一つは、例えば1990年代末に直面することになったアジア通貨危機からの、香港の立ち直りだ。

香港の側から見れば、香港は完全な財産権保護と自由市場経済を維持し、内部統治権、法律上の権限、司法権限の面で国際的な基準に対応している。これらの制度は、香港経済により柔軟な革新性と競争性を持たせ、国際社会との連結を容易にしている。つまり、「一国二制度」は香港の発展により安定した大きな環境をもたらし、香港独自の強みを発揮しやすい状態にしている。

■中国と西側諸国の対立の影響を軽減するためにも、イノベーションが不調

しかし現在香港は高度に外向型で国際化された経済体であるため、外部環境がもたらすいくつかの不安定な要素による試練を突き付けられている、中で最も重大なことは、米国と一部の西側諸国が中国の発展モデルに対して否定的な評価を与え、民主、自由、人権などの価値体系を根拠に、中国の発展に不利な戦略的環境を形成したことだ。

香港は中国の一部であるため、こうした衝突による悪影響は避け難い。こうした地政学的な駆け引きは、香港と外部世界との経済的なつながりにも影響を及ぼす。香港内部でも社会の矛盾は際立っており、産業の転換、経済の転換という矛盾にも直面している。香港は非常に重要な発展段階にある。リスクを軽減するにはどうするか。私は、安定とイノベーションが発展のための最重要な要素の1つだと思う。

世界の金融・産業開発センターを見れば、その発展の最も主要な前提条件の一つは安定だ。安定した基盤の上に正しい政策を立案し、実行することが重要だ。香港は地理条件の有利な場所にあり、経済体制が優れている。専門的なレベルも高い。その上で大陸部との経済や金融のつながりを強化すれば、香港に外部からもたらされる問題への対抗力を底上げできる。

また、世界のどこでも、ビジネスのどんな分野でも、科学技術の刷新が極めて重要なテーマだ。技術力の向上により、ビジネスモデルも大きく転換することができる。香港は、自らの革新能力を向上させ、制度の整備を強化することで、現在の世界の科学技術とビジネスモデルの大転換の中でチャンスをつかむことができるはずだ。(構成 / 如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携