北京市シンボルのアマツバメ、3万キロ飛翔のルートも解明―専門家が解説

中国新聞社    2022年8月28日(日) 12時0分

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アマツバメは歴代王朝が建設した古い建物に巣を作るなどで、北京を象徴する動物の一つだ。ツバメとは異なる種で、飛翔に特に適応した体だ。冬はアフリカ南部に生息し、3万キロを飛んで初夏までに北京にやってくる

北京では毎年、初夏に差し掛かったころになると、アマツバメが飛び交う姿を見るようになる。外観はツバメとやや似ているが別の鳥だ。アマツバメは移動距離が長い渡り鳥で、アフリカ大陸南部から北京などにやってくる。アマツバメは北京住人にとりわけ親しまれている鳥であり、2008年の北京夏季五輪大会のマスコットの一つもアマツバメを元に創作された。ところで昨今の北京市は急速に変貌しつつある。アマツバメはこれまでと同様に北京に生息できるのか。北京アマツバメ調査プロジェクトの責任者である史洋氏はこのほど、中国メディアである中国新聞社の取材に応じて、北京とアマツバメの関係や現状について説明した。以下は史氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■飛ぶことに特化した鳥、着地は可能な限り避ける

アマツバメは全世界に広く分布する。中国では東北や華北、西北の各地方に多く飛来するが、その他にも飛来地がある。中国では北京に飛来するアマツバメを「北京雨燕(北京アマツバメ)」と呼ぶ。この名は、英国人鳥類学者のロバート・スウィンホー氏が北京市内で初めてアマツバメの亜種を採取し、Apus Apus Pekinensis(アプス・アプス・ペキネンシス)というラテン語学名をつけたことに由来する。

アマツバメはツバメとはかなり異なる鳥だ。ツバメの足の指は3本が前側に、1本は後ろ側に伸びている。アマツバメは人の足の甲に相当する部分が短く、指は4本とも前に伸びている。そのため、地上で体を支えることが難しく、平らな地面を歩き回ることもできない。他の鳥のように飛び立つ時に足でける力を利用することもしない。

そのため、アマツバメは可能な限り着地を避ける。アマツバメが崖や大木の枝に降りるのは通常、幼鳥を育てるときだけだ。

アマツバメの翼は細くて長く、時速100キロを以上で飛ぶこともある。くちばしが短く、他の鳥類のように虫を「捕まえる」のではなく、飛翔中にくちばしを大きく広げて空中を飛ぶ虫を「網に入れる」ようにして捕獲する。水を飲む場合には、くちばしを開けて水面をかすめる。

■アフリカから飛来して北京の歴史的建物に好んで巣作り

アマツバメは春にやってくる。北京では正陽門城楼、頤和園廓如亭、北海公園九龍亭などの周辺を飛び交うアマツバメをよく見る。そのため、北京っ子はアマツバメを「楼燕」とも呼んでいる。アマツバメが大きな古い建築物を好むのは、軒が高くて梁や棟木、垂木が縦横に交錯して「人工洞窟」のようになっているからだ。これはアマツバメの理想的な繁殖の場所であり、天敵の襲撃を避けることもできる。また、アマツバメは足が弱いので、高い場所から落下して速度がついてから翼を使って自由に飛翔できるので都合がよい。

古い建築物を周囲を飛ぶアマツバメの小さくてしなやかな姿は、とても「映える」。アマツバメは古都である北京の生態系のシンボルだ。特に夕方に群がって飛ぶアマツバメは、北京を代表する光景の一つだ。

北京の街の「進化」に伴い、アマツバメの生活様式も変化している。過去数年間の調査により、アマツバメは現代的な橋や高層建築にある隙間にもすむようになったことが分かった。最近の調査によれば、北京市では現代的な建築に生息するアマツバメの数は古い建築に生息するアマツバメより多い。

また、近年では郊外の高い空を飛ぶアマツバメも多く目撃されるようになった。このことは、北京においてアマツバメの生息範囲が拡大していることの傍証だ。北京のアマツバメの個体数は1万羽以上に達し、10数年前より明らかに増加していると推定されている。

中国内外の専門家が14年に行った調査では、北京市内でアマツバメ数十羽を捕獲して、背中に超小型センサーを取り付けてから再び放った。その結果、アマツバメの移動状況を確認することができた。北京を飛び立ったアマツバメは内モンゴルを飛び、天山山脈や紅海を超え、37カ国の上空を飛んでアフリカ南部に到達して越冬することが分かった。移動距離は約3万キロだ。

面白いことに、アマツバメが移動する国の大部分は「一帯一路」の沿線国だ。そのためアマツバメは「一帯一路の生態大使」と呼ばれるようになった。

アマツバメは主に大陸の上空を飛んでおり、海を渡ることは少ない。移動の途中にはいくつかの休息地がある。主にコンゴ盆地、紅海南西岸、カスピ海南岸地区だ。

■北京市では総合的な生態環境づくりの一環としてアマツバメも重視

アマツバメは研究対象として特に人気がある種(しゅ)ではない。また、絶滅危惧(きぐ)種でもない。その点では、人々の関心を呼び起こす要素が多い鳥ではない。しかし生態学の立場では、「普通の種」であっても重要性に変わりはない。

北京市が取り組んでいるのは、総合的な生態環境の構築だ。市は多様化した植生と生態環境を形成し、複数の生息地を結ぶ「生態回廊」を形成することで、生態系の連結性と完全性を促進している。また、都市部に森林を作り、さまざまな規模と種類の自然保護地79カ所、総面積36万8000ヘクタールを次々に建設した。その結果、市全体の90%以上で国と地方の重点野生動植物と生息地が効果的に保護されるようになった。

北京市野生動物救護センターは17年、北京野生動物保護協会、北京市宣武青少年科学技術館と共同で北京アマツバメ科学調査プロジェクトを立ち上げ、アマツバメが分布する30カ所での調査を始めた。調査に参加している多くのボランティアは自発的に応募したボランティアだ。

アマツバメの「北京への旅の経路」や餌を探す範囲をもっと知りたい。アマツバメが夜をどこで過ごすかを知りたい。われわれは、より軽量な測位機やアマツバメの人工巣穴を使用するなどの、より多くの先進的な科学技術手段により、アマツバメの詳しく正確な観察を実現したい。アマツバメの生存を脅かすリスクを低減し、効率の高い保護活動を行うことができるようになるはずだ。

私を含め野生動物の研究者は、北京アマツバメが古都の雰囲気を伝える使者になるだけでなく、北京アマツバメの存在を通じて国民がより多くの野鳥に注目し、より多くの野生動物に関心を持つようになってほしいと思っている。多くの人の理解と支持を得ることで、生物多様性が実現した都市としての北京の建設がさらに進むことを希望している。(構成 / 如月隼人

※記事中の中国をはじめとする海外メディアの報道部分、およびネットユーザーの投稿部分は、各現地メディアあるいは投稿者個人の見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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