Record China 2022年7月20日(水) 8時0分
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中国国営新華社通信系の雑誌「環球」は17日、「日本の自動車はノキア式失敗に直面するのか」と題する記事を掲載した。著者は日本企業(中国)研究院執行院長の陳言氏。
中国国営新華社通信系の雑誌「環球」は17日、「日本の自動車はノキア式失敗に直面するのか」と題する記事を掲載した。著者は日本企業(中国)研究院執行院長の陳言(チェン・イエン)氏。以下はその概要。
フィンランド企業・ノキア社製の携帯電話は、多くの若者にとっては聞いたこともないかもしれない。しかし、携帯電話の販売台数で世界1位の座に何年も君臨し、その世界シェアは一時70%近くに達したこともある。しかし、アップルなど多くのブランドが登場すると、ノキアはモバイルインターネットの波の中で急速に没落していった。
日本には「富士フイルム」という企業がある。同社は電子産業の日進月歩を目にして、いち早くデジタル写真技術の開発に取り組んだ。フイルム市場で世界シェアの半分を占めていた企業は、転換が早かったからこそ、デジタルブームの波を乗り切った。しかし、同業の米コダック社はノキアと同様、今ではあまり知られていない。
今、自動車業界にテクノロジー革命の波が押し寄せ、かつて世界最大の自動車生産国だった日本は後れを取っている。日本の自動車メーカーは電気自動車(EV)の研究開発、生産、販売などの各方面で後れ、2021年に日本全国で販売された純EV車は中国の一部の省の1カ月の販売台数にも満たなかった。新しい波の中で、日本の自動車メーカーはノキア式の失敗を経験するのだろうか。
■トヨタは保守的?
広汽トヨタはトヨタ初のEV SUVモデル「bZ4X」を発表したが、6月17日の発売会は突然中止された。トヨタ側の説明では、サプライチェーンに不確実性が生じており、ユーザーの利益を確保するために消費者により優しい価格を設定しているというが、ちまたでは技術的欠陥を理由に発売延期を決めたのではないかとの疑惑も浮上している。新型コロナウイルス流行前、筆者はすでにモーターショーでトヨタのbZ4Xを見ていたが、同じ価格帯のテスラのEVと中国国産EVを比較すると、性能パラメーターも車両仕様も差があるように感じた。
トヨタのEVのコンセプトは、従来のガソリン車をベースに、エンジンやトランスミッションをバッテリーなど電子制御に交換するもの。しかし、トヨタ自体は電池メーカーではなく、ハイブリッド車の開発では一定の電池技術の蓄積はあるものの、純EVの分野ではトヨタの“輝き”は少なくなっている。
トヨタは新エネルギー車への転換に積極的ではないとの見方が広がる中、トヨタもEVへの保守的なイメージを変えようとしているようだ。2021年12月14日、トヨタの豊田章男社長は、自動車発表会で16種類のEV車を一挙に発表し、30年までにEVの年間生産台数を200万台から350万台に引き上げると公言した。150万台という引き上げ量は、トヨタがEVへの転換に取り組んでいることをうかがわせる。
しかし、自動車の年間販売台数が1000万台を超えるトヨタにとって、350万台のEV生産計画はまだ十分ではなさそうだ。35年ごろに欧州、米国の大半の都市でハイブリッド車を含むガソリン車の販売が認められなくなるためだ。
■トヨタの固執
現実的に見ると、トヨタの固執は非常に分かりやすい。EV車は日本では基本的に政府の補助金で運営されており、政府が少しでも多く補助すれば企業はその分もうけられるが、補助金が減れば企業は利益が減るか、まったく利益が出ないことになる。ガソリン車もハイブリッド車も販売台数は好調で、企業収益も高いトヨタが、どうして今の稼ぎ頭のガソリン車やハイブリッド車を手放すことがあるだろうか。
すでにガソリン車分野で長年経営してきた企業は生産ラインに大金を投じており、多くの労働者の生計を担っている。トヨタは軽々しく転換することはできず、特にEV車への転換は容易ではない。ガソリン価格が高騰する中、ハイブリッド車の市場見通しはますます良くなってきている。特にロシア・ウクライナ戦争の勃発後、エネルギー価格がさらに上昇しても、ハイブリッド車の需要は急成長しており、既存の設備を活用してハイブリッド車を大量生産し、省エネ車に対する市場の需要を満たすことが、トヨタにとってより利益になることは間違いない。
トヨタの多くの技術者は、現在のEVの電池は蓄電能力、充電速度、電池の安全性に多くの潜在的なリスクが存在していると考えており、彼らは全固体電池の開発をより好んでいる。全固体電池はリチウムイオン電池に比べて航続能力が2倍、充電速度が3倍速くなるとされる。
中国の寧徳時代(CATL)は6月23日、第3世代CTP(Cell To Pack)技術を用いた「麒麟電池」を正式に発表し、この新製品を来年量産するとした。寧徳時代の新しい電池と比べてトヨタの全固体電池がコストや性能などの面で優位性を持っているかどうかはまだ分からないが、全固体電池は間違いなく、トヨタの力の入れどころになっている。
東京工業大学科学技術創成研究院全固体電池研究センターがトヨタと共同で全固体電池の研究開発を行うと表明したことも、電池分野で中国に追いつき追い越すという目標と決意が透けて見える。
豊田氏は21年12月14日のトヨタの発表会で、「私たちはこの26年間、1兆円近い投資をし、1900万台以上の自動車に電池を搭載してきた」と語った。ここでは主にガソリン車、ハイブリッド車で使われるバッテリーの話をしている。EV電池については、「今後さらに2兆円を投資して、より先進的で経済的な電池を研究していきたい」と続けた。トヨタが将来を固体電池分野に賭けていることが分かる。
■トヨタは次の「ノキア」に?
6月17日にトヨタが発表会を突然中止したことからも、トヨタのプレッシャーと挑戦は日に日に大きくなっていることが分かる。
外部環境を見ると、6月8日、欧州議会は35年から欧州連合(EU)全域でガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するという欧州委員会の提案を可決し、プラグインハイブリッドや合成燃料を含む過渡的な案は否定された。
デンマークのファンド「アカデミカーペンション」やノルウェー最大の年金基金KLPをはじめとする欧州の年金基金は、トヨタの株主として、トヨタが内燃機関を完全に放棄しない電動化戦略を疑問視してきた。彼らは、トヨタのライバルたちが全面的な電動化に移行しているのに、豊田氏はまだ純EVは過度に騒がれていると強調しており、このことが将来の自動車業界におけるトヨタの競争力を弱体化させることにつながると考えているのだ。
もっと多くの挑戦は中国から来るかもしれない。比亜迪(BYD)の「DM」を代表とする新型ハイブリッド技術はトヨタに対して強い脅威となっている。「DM」は電気駆動を主とし、エンジンを補助とするハイブリッドシステムで、本質的には純電気システムである。一方、トヨタはエンジンをメインとし、モーターをサブとするハイブリッドシステムで、本質的にはガソリン車のままだ。両者を比較すると、「DM」の方がより未来の発展の流れに合致する。
トヨタは2年連続で世界の自動車販売台数ナンバーワンになったが、ノキアの携帯電話もかつては業界のトップだった。企業は往々にしてピークになればなるほど、重大な戦略的ミスを犯しやすくなる。豊田氏は真剣にノキアの浮沈の歴史を復習する必要があるかもしれない。(翻訳・編集/北田)
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