中国のキームン茶はなぜ西洋人にも愛されるのか―技術伝承者が多面的に解説

中国新聞社    2022年6月18日(土) 20時0分

拡大

安徽で生産されるキームン茶は、中国人だけでなく西洋人も高く評価する茶だ。幅広いファン層を持つ秘密とは何なのだろうか。写真は安徽省で生産される紅茶。

(1 / 3 枚)

キームン紅茶、あるいはキームン茶は、中国安徽省黄山市内の祁門(中国標準語では「チーメン」に近い発音)県で生産されてきたことにちなむ紅茶の品種名だ。キームン茶は世界三大紅茶の一つともされ、紅茶好きとして知られる英国人もキームン茶を極めて高く評価している。中国国家級無形文化遺産プロジェクトの一つであるキームン紅茶製造技術伝承の事業における伝承者の一人に指定されている王昶氏はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じ、キームン茶の魅力と国際交流において果たしている役割について語った。以下は王氏の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

その他の写真

■世界三大茶のウバ・ダージリン・キームン、その性格の違いとは

英国では、キームン茶が「紅茶の女王」ともされている。トルコの詩人アーメド・ヒクメット(1870-1927年)は、キームン茶を「中国の香り高き茶に、かぐわしき春を見た」と詩につづった。中国にはキームン茶以外にもさまざまな紅茶があるが、キームン茶の香りは格別とされている。

世界の三大茶とされるのは、インドのダージリン茶、スリランカのウバ茶、中国のキームン茶だ。この3種の茶は風格が全く異なる。

キームン茶には東洋の女性をも連想させる、優雅で清らかな甘い香りがある。バラの香り、果実の香り、蜜の香りがあふれ、蘭の香りも帯びており、味わう人にしっとりとした優雅な感じを与える。

ウバ茶には鋭く豪快な香気がある。その香りの中には、さわやかなスズランの香りと濃厚なジャスミンの香りの成分が含まれている。

ダージリン茶の香りには麝香(じゃこう)の成分が含まれゴージャスだ。香りの位置づけとしてはキームン茶とウバ茶の中間とも言え、ふっくらとして張りがある。

「三大紅茶」と称されるのは、この3種の紅茶が他の紅茶では得られない、心地よい感覚体験をもたらしてくれるからだ。

中国の茶の歴史は長い。そして時代を追うごとにさまざまな飲み方が発生した。茶はさまざまな文化と融合した。隋・唐の時期には例えば、茶は寺院の中に入り「禅茶」の風習ができた。宋代になると「点茶」という技能も登場した。これは抹茶を点(た)てた際に、表面に文字や絵を浮き出させることだ。「点茶」の名人は書画の名人と同様に尊敬された。

中国茶は種類が豊富であり、緑茶、ウーロン茶、黒茶、紅茶、黄茶、白茶に大別される。キームン茶は、紅茶の中で極めて重要な茶だ。

写真は安徽省で生産される紅茶

■キームン茶には「包容力」があるから中国人にも西洋人にも愛される

キームン茶には「包容力」という特徴がある。中国人が茶に最終的に求めたのは、茶葉本来の風味だ。しかし西洋では茶にさまざまなもの、例えば砂糖やミルク、あるいは果物のジャムなどを加えることを好む人が多い。いわば調合茶だ。キームン茶は茶葉の純粋な風味を楽しむのにも、調合茶として楽しむのにも適している。

キームン茶は、発酵茶としてはもっと穏やかで控えめであり、人の生理と精神のケアのために、とても適している。

キームン茶は、国際市場で高く評価される中国茶のブランドだ。中国茶が国際化していく道の、最初の窓口とも言える。キームン茶の茶樹の個体群は、中国で国から初めて認められた茶樹の優良品種でもある。これまで数十の国と地域が、キームン茶の茶樹の枝を導入し、挿し木などの方法で増やした。

■キームン茶をめぐる現状と、次の発展の方向性とは

祁門県がある安徽省黄山市は2021年末に、「万里のティーロード」の保護と世界文化遺産の登録を目指す都市連盟のメンバーになった。「ティーロード」は「シルクロード」に続いて、ユーラシア大陸で勃興したもう一つの重要な国際交易ルートだ。キームン茶は「ティーロード」を通じて、ドイツ、英国、米国ロシアなど80余りの国と地域に輸出された。

祁門県は現在、自らが「世界紅茶の都」となるべく努力している。生産基地、ブランド性、品質面、事業のけん引、文化との融合という五大向上プロジェクトに力を入れ、茶園の安全と茶葉ブランドの確立に重点を置き、茶文化と観光の融合を深化させ、地元のキームン茶文化旅行産業の成長を促している。

キームン茶はこれまで何度も、中国の外交活動において「国事礼茶」に指定された。茶葉が外国要人に贈呈されたことも多い。

例えば今年になってからは、第3回アフガニスタン隣国外相会議や「アフガニスタン隣国+アフガニスタン」外相対話会など一連の外交活動が黄山市内で開催された。そして中国内外から集まった要人をもてなす茶として、キームン茶が使われた。キームン茶はこのことで、改めて国際舞台で注目されることになった。

キームン茶の文化はは常に開放的な交流の文化であり、東西文化の往来や、各国交流の強化に一定の役割を果たしてきた。外国からのお客様をキームン茶のような素晴らしい茶でもてなすのは、まさに「茶礼」であり、礼節の国である中国の風格や中華の優秀な伝統文化を示すことだ。中国のことをよりよく知ってもらう場に登場させるのに、キームン茶はまさにうってつけだ。(構成 / 如月隼人

写真は安徽省で生産される紅茶

※本記事はニュース提供社の記事であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。すべてのコンテンツの著作権は、ニュース提供社に帰属します。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携