パンダはどのように中国国際交流の「最善の使者」になったのか―保護研究センター副主任が解説

中国新聞社    2022年6月10日(金) 19時0分

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国際交流における「パンダ効果」とは、愛くるしい姿で多くの人を魅了するだけではない。飼育や保護に努力する専門家の国際的な交流も、大いに促進している。

ジャイアントパンダ(以下、組織名など固有名詞部分を除き「パンダ」と表記)の様子を見れば、ほとんどの人が愛くるしいと思うのではないか。「よくもまあ、このような動物が地球上に出現したものだ」とも思ってしまう。パンダは一方で、個体数の少なさから入念な保護の対象になっている。パンダ保護は、人類にとって地球を「持続可能な状態」に保つ努力の象徴としても意味がある。中国ジャイアントパンダ保護研究センターの李徳生副主任はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、パンダが中国の国際交流に果たしてきた役割りと意義を解説した。以下は李副主任の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■きっかけはニクソン訪中だった、パンダを媒介に両国専門家が交流

1972年にニクソン米大統領が訪中したことを受け、中国政府は雄雌パンダの「リンリン(玲玲)」と「シンシン(興興)」を贈った。ワシントンに到着した同年4月16日は雨だったが、米国国民8000人が出迎えた。初月だけで100万人以上が2頭を見るために、飼育されているワシントンのスミソニアン国立動物園を訪れた。「リンリン」と「シンシン」が米国に贈られたことで、中国と外国のパンダ保護のための科学研究協力は新たな段階に入った。

「リンリン」と「シンシン」は1990年代に死んだ。子も生まれたが、当時の飼育技術レベルでは成長させることができなかった。米国は改めて、中国にパンダを求めた。2000年にはパンダの「メイシァン(美香)」と「ティエンティエン(添添)」が米国に渡ることになった。中国からはパンダの専門家も渡米して、米国人専門家とパンダ保護の研究を行った。2005年には「メイシァン」と「ティエンティエン」の人工授精による子が生まれた。このパンダには、中国五山の一つである「タイシャン(泰山)」という名がつけられた。

■米国で、人ならば70-80歳に相当するメスパンダが出産

実は「タイシャン」は、初の「米国生まれパンダ」ではない。私は1999年春に渡米して、サンディエゴ動物園で飼育されていた「バイユン(白雲)」の人工繁殖と妊娠期間中の管理の仕事に加わった。「バイユン」は同年8月21日、赤ちゃんを出産した。この赤ちゃんは、中華の「華」と、中国語で米国を表す「美国」の「美」の文字を取って「ホワメイ(華美)」と名づけられた。「ホワメイ」は中国以外で生まれて育った初めてのパンダである点でも、その後になり初めて中国に戻ったパンダである点でも、極めて象徴的な意義を持つ1頭だった。「バイユン」はその後も次々に出産した。「バイユン」はまた、米国で初めて自然交配により妊娠して出産した雌パンダでもある。

新型コロナウイルス感染症はパンダの飼育にも深刻な影響をもたらした。パンダの主な餌は竹だが、感染症の影響で一部の国の動物園では新鮮な竹の入手が困難になったのだ。そのため、カナダで飼育されていた「ダーマオ(大毛)」と「アルシュン(二順)」は予定を切り上げて中国に戻った。

米国で飼育されていた「メイシァン(美香)」は2013年に出産し、2020年にも出産した。2020年の出産の時、「メイシァン」は22歳だった。人にすれば70-80歳に相当する超高齢出産だった。子パンダは投票により命名すると発表されると、5日間で全世界から13万人のパンダファンが投票した。投票数が最も多かったとして選ばれた名は「シァオジージー(小奇跡)」だ。

現在のところ、中国国内で飼育されているパンダは673頭だ。すでに遺伝子多様性などが確保されている個体数だ。パンダについては種として健全で活力があり、持続可能な個体群が形成された。また、飼育されているパンダを自然に戻す試みも積極的に行われている。

■「絶滅危惧種指定」のランクは緩和されたが、保護の手は緩められない

中国国内のパンダ自然保護区はかつて15カ所だったが、現在までの67カ所に増やされた。面積は139ヘクタールから258ヘクタールに増やされた。パンダ生息地の53.8%、野生パンダ個体群の66.8%が自然保護区に組み入れられて効果的に保護されている。

世界自然連合(IUCN)は2016年、「レッドリスト(絶滅のおそれのある世界の野生生物のリスト)」の改訂によって、パンダの状況をそれまでの、「絶滅危惧(きぐ)種」(EU)から、状況が1段階だけ緩和されたことを示す「絶滅危急種」(VU)に変更した。このことは、中国政府のパンダ保護に対する努力と積極的な成果創出を反映したものだ。1970年代から80年代にかけては1100頭余りだったパンダの総頭数は、1864頭にまで増加した。

しかし中国国内のパンダのランク付けは国家1級保護野生動物で変更されていない。このことは、中国が今後もパンダ保護の力を緩めず、強化していくことを意味する。

誰もがパンダの様子を見れば、無邪気で愛くるしいと思う。パンダを好きになる気持ちは国境を越える世界の「共通言語」なのだ。これが、パンダが中国と外国の「友情の使者」である理由であり、パンダが世界の懸け橋になれる理由だ。

それだけではない。これまでに18カ国の22の動物園が中国とパンダ保護協力研究プロジェクトを展開してきた。また、ジャイアントパンダ国家公園希少動物保護生物学国家林業・草原局重点実験室も数十の国内外の保護研究機関・組織と科学研究協力関係を結んでいる。

つまりパンダは、国際的な学術交流を促進している。そして全世界が生命の多様性を確保するために、人類としてなすべきことを考え、実行することを促している。パンダはこの意味においても、中国と外国の国際交流を活性化する「最善の使者」なのだ。(構成 / 如月隼人

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