日本の対ロ制裁はクリミア危機の時とまるで異なる―香港メディアが理由を分析

Record China    2022年5月9日(月) 8時20分

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香港メディアの香港01は、2014年のクリミア危機発生時には日本は対ロシア制裁に力を入れず、現在はロシア制裁を強力に推進する理由を分析する記事を発表した。

香港メディアの香港01は6日付で、ウクライナに侵攻したロシアに対する日本の姿勢は、2014年のクリミア危機の時に比べて段違いに厳しいと指摘して、日本の考えを複数の階層に分けて分析する記事を発表した。以下は、クリミア危機について若干の補足説明をした上で、香港01記事の主要部分の要旨をまとめたものだ。

■クリミア危機に際して日本はロシア制裁をむしろ避け続けた

クリミア危機は14年、ウクライナ南西部にありロシア系住民の多いクリミア自治共和国とセバストポリ特別市が独立を宣言したことなどで本格化した。両地域では独立派と反対派が衝突した。ロシアは軍事介入して独立派を支援した。独立派が勝利した後、両地域はロシア連邦に編入されることになった。米国をはじめとする西側諸国はロシアを強く非難して、厳しい制裁措置を発動した。

しかし日本は、対ロシア制裁にあまり意欲を示さなかった。米国やEUの指導者は14年2月にロシアのソチで開催された冬季五輪大会の開会式への出席をボイコットしたが、当時の安倍晋三首相は開会式に出席し、プーチン大統領と会談した。安倍元首相はその後、イタリアのミラノで開催されたアジア欧州会議や北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC会議)でも、プーチン大統領と単独会談を行った。また、安部元首相は同年10月7日にプーチン大統領への電話で62歳の誕生日を祝った。

当時の日本は米国が求めるその他の対ロシア制裁を発動することにも積極的ではなかった。日本が実施した経済制裁は、対ロシアの新規投資の凍結などの比較的軽い措置だけだった。今回のウクライナ危機についての、ロシアの国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を支持するなどの強硬な姿勢とは比べ物にならない。

■ウクライナ問題では打って変わって強硬な制裁措置を連発

今回のロシア・ウクライナ問題に対して日本は、半導体など先端技術製品の輸出禁止、ロシアに政財界要人とロシア中央銀行の在日資産の凍結、ロシアからの石炭などの輸入禁止などの措置を次々に繰り出してきた。

また、岸田文雄首相、岸信夫防衛相、林芳正外相は日本内外で西側諸国やアジア各国の要人との会談を繰り返し、西側諸国とはウクライナ問題についての結束を確認し、アジア諸国には協力を要請するなどをし続けている。

日本の姿勢が14年当時から大きく変化したのはなぜか。まず当時は米中関係が現在ほど緊迫しておらず、米中対立は「制御可能な範囲内」と考えられていた。またロシアは日本に対して関係改善のラブコールを送り、経済における中国への過度な依存を緩和したいと考えていた。

日本の安倍首相は北方領土問題での前進や、日本の北部地域の安全を向上させたいと考えていた。クリミア問題を相手国との関係に影響させたくないとする、日ロの思惑は合致していた。

しかしその後、米中の対立は激化し、米ロの関係も修復されなかった。米国に、日本による独自の対ロシア政策を認める余裕はなくなってきた。日本も中国の台頭をより深刻視するようになった。一方で、日ロ関係がもたらす利益はほぼ失われた。したがって日本にとっては、米国による自国の安全保障をさらに確実にした方が、国益にかなうことになった。

■日本はバイデン新政権の外交手法の転換を好機とみなした

米国のトランプ前大統領の外交には、ある特徴があった。かなり強硬な主張をしつつも、日本を含む西側同盟国に米国への追随を強く迫ることは、あまりしなかった。むしろ、各同盟国の反応を「値踏み」して、米国の相手国に対する態度を決めていく手法だった。

しかし現在のバイデン大統領は日本を積極的に「取り込もう」としている。日本はバイデン大統領による外交手法の転換を、日米が連帯してインド太平洋の安定維持に取り組むきっかけと認識している。

日本がウクライナ問題について米国に追随しているのは、米国向けの一種のポーズであり、そのポーズを示すことで、米国にインド太平洋により大きな力を注がせることを狙っている。また、日本自身も、ロシアを弱体させることで中国を孤立させることを期待している。現在の中ロは関係が極めて良好であり、中国と西側諸国の間のさまざまな問題でロシアは中国を支持すると考えねばならない。ロシアの発言力が弱まれば中国にとっては不利、別の言い方をすれば日本を含む西側諸国に有利になる。

以上により、日米の利益は現在、かつてないほど一致している。これらの状況が、日本のロシアに対する姿勢が14年時点と全く異なる根本的な理由だ。

■ロシアの戦争発動で、日本の安保理常任理事国入りのチャンスが拡大

また、日本国内ではこれまで、憲法第9条の改正に対する抵抗も強かった。しかし「平和への脅威」を強調することは自民党勢力などにとって、日本国民に憲法改正についての理解を得ることにつながる。岸田首相は最近になり自民党の会合で、憲法改正の主たる目的は第9条の改正であり、実際の行動を進めると表明した。岸田首相はさらに、安倍政権時代に自民党がまとめた憲法改正草案を採用し、自衛隊関連を憲法第9条に盛り込む意向を示した。

日本ではロシアがウクライナに侵攻してから、米国との核兵器共有の議論が盛んになった。自民党は同問題でも、内部で議論を進めることを決めた。日本はロシアを積極的に制裁することで、米国からより多くの承諾を得ようとしており、同時に国際情勢を利用して国内における制度面の制約を解除することを準備している。

国連安保理の常任理事国であるロシアが戦争を発動したことによって日本には、国連安保理の改革を求める機会がもたらされた。ロシアは国連安保理常任理事国たるに十分な経済力をすでに失っている。また、政治や外交面での地位も疑問視されるようになった。日本はかねてから、国連安保理の常任理事国入りを願っていた。日本が「戦争発動は許されない」という道徳的な立場に立ってロシアを制裁することは、安保理常任理事国入りのチャンスを拡大したい日本にとっての外交的利益に合致している。(翻訳・編集/如月隼人

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