〈新疆の世界遺産6〉交河故城:東西古代文明の交流を伝える重要遺跡

小島康誉    2022年3月12日(土) 16時30分

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柳葉状台地に築かれた交河故城の空撮写真、手前の建物は資料館や管理棟(小島ほか編『新疆世界文化遺産図鑑』日本僑報社より)

コロナ禍で旅行も不自由な今、「一服の清涼剤」になればと、レコチャとの有難い縁をえて新疆ウイグル自治区の世界文化遺産を紹介中。キジル千仏洞・スバシ故城・クズルガハ烽火台を終え、今回は交河故城。参観済みの方は思い起こされ、未参観の方は旅行先候補にお加えくだされば幸いです。

交河故城は天山山脈の東部分南麓・トルファン盆地北辺のトルファン(吐魯番)中心から西約10km、ヤルナイズ溝に所在している。紀元前2~14世紀の長きにわたり西域交流の要衝であった。紀元前後は車師前国、640年には唐王朝が安西都護府を置き、天山南麓一帯を掌握するための行政・軍事・交通・文化の中心だった。最盛期5~7世紀中葉。

交河故城の一角、炎天下の参観にはミネラルウォーターが必需品(撮影:筆者)

交河故城は冒頭の空撮写真のように柳葉状の高さ約30mの台地上に築かれ、自然の要塞をなしている。東南から西北に広がり、全長約1750m、最も広いところの幅約300m、周囲約4100m、面積約37万平方メートル。柳葉状の中央を道が貫いている。遺構は住居区・官署区・寺院区・倉庫区・墓地区など機能別に分かれている。建築方法として、土を叩き固める、壁を残し台地を掘下げる、土を積上げる、土煉瓦造りが用いられているという。南門・東門・西門があった。中央の仏塔は周囲約58m、高さ約10m。

交河故城仏塔で世界平和と文化遺産保護を小僧ながら祈願する筆者(撮影:楊新才氏)

交河故城では東洋と西洋の文化が交流していた。車師人・漢人・匈奴人・鮮卑人・ソグド人・吐蕃人・回鶻人・蒙古人などが相次いで生活し、漢語・サンスクリット語・トカラ語・突厥語・回鶻語・西夏語・チベット語などの文書や題記が出土している。この地域では祆教・仏教・マニ教・景教・道教・イスラム教など多くの宗教が順次信仰された。『史記』『漢書』『唐書』などにも記載され東西古代文明の交流を今に伝える重要遺跡である。1961年中国第1次「全国重点文物保護単位」(日本の「特別史跡」相当)に指定され、保護研究が行われている。日本がユネスコを通じて1992~98年資金を拠出し中国側の保護修復を支援した。なお近くに「カレーズ」(天山の雪融け水をオアシスまで流す地下水路)があり、合わせて観光することが多い。

ご参考:小島ほか編『新疆世界文化遺産図鑑』(日本語版・本田朋子訳・日本僑報社2016)では多数の写真で新疆の世界遺産を紹介している。

■筆者プロフィール:小島康誉


浄土宗僧侶・佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表・新疆ウイグル自治区政府文化顧問。1982年から新疆を150回以上訪問し、多民族諸氏と各種国際協力を実施中の日中理解実践家。
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