米国人VS中華料理、「新たな食の世界」を築けるか―米大学教授が現状分析と将来予測

中国新聞社    2022年2月2日(水) 19時20分

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米国には計4万軒もの中華料理店が存在する。現状での大きな課題は、高級店として認められる店が少ないことだという。写真は、高級ファストフード・チェーンの地位を確立したジュンズキッチン(君子食堂)。

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米国は移民の国だ。だから、さまざまな国の料理も到来した。中華料理もその一つだ。しかし米国における中華料理の現状には理想的と言えない点があるという。イェール大学で長年に渡り食にまつわる歴史を研究してきたポール・フリードマン教授は、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、米国における中華料理が置かれた状況を分析した。以下はフリードマン教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

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■米国全土に普及した中華料理だが、米国人が受け入れがたい点も

米国にさまざまな国の料理が本格的に入って来たのは19世紀末だった。中華料理が到来したのもその時期だった。ただ米国では、さまざまな料理が米国人の好みに合わせて変化した。中華料理の場合には例えば酢豚がある。本来なら酸味と甘味が共存するわけだが、米国式の酢豚は甘味だけが残った。米国はとても甘いデザート類を好むのだが、それが料理の味にも反映されることになった。

米国では、約4万軒もの中華料理店が各地で営業している。しかし中華料理の普及は未発達な面がある。自宅で見事なイタリア料理やメキシコ料理を作る米国人は多いが、きちんとした中華料理を作れる人はわずかだ。その意味で、中華料理は米国の食文化に部分的に溶け込んだだけだ。

米国で生まれ育った米国人の場合、本格的な中華料理を食べたいと思っても、障壁が発生する場合がある。例えば、動物の内臓は本来ならば極めて美味な部位だが、米国人には受け入れられない。私の教え子はみな米国生まれで米国育ちだ。「変わったものを食べるのが好き」と自称していて、外国に滞在することがあれば、必ずその土地の料理を試してみる。ただ実際には、レバーのような食材にも腰が引けてしまう。

米国人は、本場の味を求める一方で、心理面での衝突は好まない。米国内の中華料理店はその点を踏まえて、使う食材を米国人が安心して受け入れられるものに置き換えることが一般的だ。「本場の味」と「客の安心感」のどちらかを選ばねばならないなら、私は「安心感」を選ぶべきと思う。

■高級店化に成功した事例もあるが、それでも残る問題点

米国における中華料理で画期的だったのは1960年代にサンフランシスコで開業したマンダリン(福禄寿餐庁)だ。中華料理飲食店は安さが売り物だった。しかしマンダリンを創業して2020年に100歳で他界したセシリア・チャン(江孫芸)さんは、室内装飾などにも意を尽くして東洋の雰囲気を演出した。彼女は出来る限り本格的な店を作ろうとした。

マンダリンの功績には、それまでは広東系の料理一辺倒だった米国の中華料理に、中国北部や上海の料理を導入したこともある。私もマンダリンで初めて、北京ダックを食した。そしてマンダリンの登場により米国人も、中華には非常に高級な料理もあると知ることになった。

最近では、米国式のチェーン展開をする中華料理企業もある。例えばジュンズキッチン(君子食堂)だ。決して安価ではないが、高級料理店ほどには高価でない。高級ファストフードと言える。

写真はジュンズキッチン(君子食堂)

中国系米国人である経営者の中には、他にも高級店を目指した人がいる。成功例も多い。料理はいずれも本格的だ。ただ、これらの店に来る客はほとんどが中華系住人だ。したがって中華料理はまだ、広範な米国人から「高級な料理」との評価を得られとは言えない。

■米国で成功するためには、米国文化に従うことが有効

米国で高級中華料理店が成立しにくい原因には、文化の違いという面もある。中国人は大勢で食事をすることを好み、大皿の料理を分け合って食べる。店内の様子が宮殿のように荘厳でも、静かな環境で料理に集中するのではない。店内は騒がしい場となる。このような雰囲気は、異文化を体験したいと思う少数の客は強く引き付けるが、それ以外の多くの米国人は、70ドル(約8000円)とか150ドル(約1万7000円)もの費用をかけてまでその店に行こうとは思わない。

現状では、米国にある中華料理店の95%が、低価格を売り物にしている。高級化を図りたいならば店の装飾を工夫し、料理を大皿で出すのではなく、客の一人ひとりに盛り付けて提供するなど、サービスの方法を調整する必要がある。中華料理は多様性や味の豊富さ、質感で世界の料理の中でも圧倒的な存在だ。まだ大きな潜在力があり、その将来を大いに期待することができる。(構成 / 如月隼人

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