Record China 2022年1月31日(月) 12時0分
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新型コロナウイルス感染症は、国境を越えた文化交流をも阻害している。そんな中で、中国の上海明珠美術館は開催中の特別展を、日本人向けにVRオンライン公開している。
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上海明珠美術館では現在、ダンテ没後700年周年を記念するダンテの代表作である「神曲」と中国の古い地理書の「山海経」にそれぞれに関連する歴史ある文化財や、「神曲」や「山海経」からインスピレーションを得て創作されたイタリア人および中国人芸術家による現代作品を集めた「『神曲』と『山海経』の対話」という特別展が開催されている。
上海明珠美術館は日本人向けに同特別展をVR鑑賞できるページを制作し、オンライン公開する試みも始めた。構内をそぞろ歩く感覚で会場や展示品を鑑賞することができ、中国語、日本語、英語、イタリア語による展示品の解説を読むこともできる。
上海明珠美術館の建設にあたっては、国際的な巨匠建築家とされる安藤忠雄氏が設計を担当した。鑑賞目的で多くの人が訪れる美術館という施設に対する安藤氏の理念や発想を体感できることも、VR鑑賞ならではだ。
同館のキュレーターなども務める李丹丹館長はオンライン公開にあたって、日本人に向けて動画メッセージを寄せた。まず、デジタル技術の発展により、日本にいる人にも地理上の距離に関係なく、特別展で紹介している文学や芸術、思想や想像力を伝えられることを喜び、同館は安藤忠雄氏の設計によるなど日本とは深いつながりがあると説明。また、同館は書店と合体した美術館という特徴があり、美術館を訪れれば15万冊の書物が並べられた美しい光の空間を体験することになると紹介し、上海に来る機会があれば、同美術館にも足を運んで、上海の魅力をより強く感じてほしいと呼びかけた。
李館長はさらに、宋代儒学者の朱子(1130-1200年)が美しい池について述べたとされる「この池はなぜ、これほどまでに澄んでいるか。それは水源から絶えず、新鮮な水が送り込まれるからだ」との言葉を引用し、芸術や読書とは人々の暮らしに送り込まれる水源からの清らかな水であり、「想像する」ことこそが人類文明の最たる高みとの考えを示した。また、中国が2月1日に春節(旧正月)を迎えることから、動画視聴者に「新春大吉でありますように」などとあいさつをした。
上海明珠美術館で開催中の特別展のテーマの一つである「神曲」は、ダンテ・アリギエーリ(1265-1321年)の代表作だ。ダンテはイタリア文学最大の詩人で、「イタリア語の父」などと呼ばれている。また、その後のイタリアで勃興し、世界史に大きな影響を与えたルネサンスの先駆者ともされている。
もう一つのテーマである「山海経」は、古代中国人の地理認識を幻想を交えて集大成した書物だ。秦の始皇帝による中国統一(紀元前221年)までには形作られていたが、その後も数百年をかけて内容が追加されていったと考えられている。
中国もイタリアも、とりわけ長い歴史を持つ国だ。両国の現代芸術家が、自国の古い文化芸術からどのようなインスピレーションを得て創作に励んでいるかを知ることができることも、同特別展における興味深い点だ。(構成 / 如月隼人)
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