米商務省、ファーウェイに巨額の輸出許可、日本のサプライヤー企業は蚊帳の外か?

高野悠介    2021年11月17日(水) 11時50分

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16日、米中オンライン首脳会談が開催された。対中制裁も話し合われたに違いない。その内容は大いに気になる。それはファーウェイの件があるからだ。写真は深センのファーウェイ本社。

2021年11月16日、米中オンライン首脳会談が開催された。成果より開催すること自体が目的だとする報道が多い。しかし、通商問題には時間をかけたようだ。対中制裁も話し合われたに違いない。その内容は大いに気になる。それはファーウェイの件があるからだ。

米商務省は、2020年11月~2021年4月の間、制裁の象徴、ファーウェイ向け部品に614億ドルの輸出許可を与えていた。莫大な金額だけに、各方面へ衝撃が走り、日本の“蚊帳の外感覚”は強まった。日本企業はどうすればよいのだろうか。

■ファーウェイの上半期業績…B2C事業半減

ファーウェイの2020年の売り上げは8914億元(14兆円)、純利益は646億元、純利益率は7.2%だった。構成比は、B2Cが54.2%、キャリア(基地局関連)が34.0%、法人ITC(B2B)が11.3%。また、売り上げに占める中国比率は65.6%と3分の2を占める。

2021年上半期の売り上げは3204億元、前年同期比29%の減少だった。そのうちB2Cは46.9%減とほぼ半減した。ただし、純利益率は9.8%と、2020年を上回っている。

構成比は、B2Cが42.3%、キャリアが42.7%、B2Bが13.4%と変化し、キャリアがB2Cを上回った。B2Bは18%増と最も伸びた。

子会社ハイシリコンの設計になるKirinチップの生産は、2020年9月に停止した。米国企業、米国製製造装置を使う工場が、受託生産をやめたからである。最先端のチップを手配できない影響は甚大だった。2021年2Qのスマホ売り上げ(世界)は74.6%減、シェアは首位から8位に落ちた。昨年は、国民の声援を背に受け、スマホ売り上げは絶好調だったため、2021年の反動は大きい。にもかかわらず、利益体質は強固なまま維持している。

■ファーウェイのコア・サプライヤー…日本は11社

ファーウェイは2018年10月、優秀サプライヤー92社を表彰した。これらがコア・サプライヤーとされる。日本企業は下記の11社である。

・富士通…ハードディスク

・ヒロセ電機…コネクター

・村田製作所…フィルター、

・ソニー…カメラモジュール

・住友電工…光通信デバイス

・キオクシア…HD、SHHD、SSD、フラッシュメモリー

・古河電工…光ファイバー、ビデオエンコーダー

・NTTエレクトロニクス…光ファイバー、ビデオエンコーダー、電線、ケーブル

・住友大阪セメント…LiNb03調整器

・三菱電機…電気機器

パナソニック…電子材料、電池、電気部品

半導体関連はキオクシアのみ。これに対し、米国のコア・サプライヤーは33社、そのうち半導体関連は下記の10社である。残念ながら日本は、半導体では勝負にならない。

・インテル…マイクロプロセッサ

・ザイリンクス…ファブレス半導体

・マーベル…ファブレス半導体

・クアルコム…ファブレス半導体

・TTMテクノロジーズ…PCB基盤

・シノプシス…人工知能チップ

・スカイワークス…RFチップ

・コルボ…RFソリューション技術

・インファイ…半導体モジュール

・テキサス・インスツルメンツ…DSPチップ

■日本企業…蚊帳の外に置かれる?

米商務省の許可した614億ドルが、実際にいつ輸出された(される)のかはわからない。仮にこれを1年分とすれば年間約7兆円となる。一方、日本企業からの製品サービスの調達額は、2019年がピークで1兆600億円。2020年は2割減の8800億円となった。桁違いのスケールである。

コア・サプライヤーの日本企業も輸出申請を行っている。しかしやはり本丸は半導体である。周辺部品が多く、スケールも小さい日本企業が、自らの手で状況を動かすのは難しい。このようにあきらめムードが漂っていた。さらにバイデン政権は2021年3月中旬、過去の輸出許可条件を厳格化し、5G関連部品については輸出を禁止した。

それにもかかわらず、巨額の輸出許可を与えていた。この間、米商務省への申請は169件あり、そのうち承認は113件、差し戻しが48件、却下は2件だけである。差し戻し分が復活すれば、さらに莫大な金額となるかもしれない。日本の預かり知らぬところで、米国勢だけでよろしくやっているのではないか。日本企業はどうすればいいのか、再考の必要がありそうだ。

■ファーウェイ・ジャパン…研究開発に注力

そのヒントとして、2005年に設立された日本法人、ファーウェイ・ジャパンの活動に注目してみたい。スマホの日本国内シェアは、一時、アップルに次ぐ2位に躍進した。しかし、制裁により、グーグルアプリが使えなくなったため急失速した。しかし、今年10月末には、一斉に新製品の発売を発表し、日本市場へ再攻勢をかけている。スマートウォッチ、イヤホンなどウエアラブル端末は好調のようだ。基地局関連は前年並み、法人ICTは増収と、日本法人も全体の傾向と変わらない。

従業員は1000人弱、大部分は日本人である。そのうち300人は技術者で、研究開発兼地域調達センターの側面が強い。4つの研究所があり、コア11社や、大学などと共同研究を進めている。研究成果を自社で取り込むことはせず、長期安定のパートナーシップとウインウインの関係を重視する。そして調達新時代3.0を迎えたという認識から、日本の中小ベンチャー企業にサプライヤー登録を促している。先端ハイテク産業だけでなく、“潜在的”技術アドバンテージがあれば、従来型産業でも登録は可能だ。ここは日本企業のノウハウが厚い部分で、大いに期待したい。実際に、粘着剤のベンチャー企業と共同開発を進めているという。

■状況は流動的…細かな情報にも注意

9月25日、孟晩舟副会長の“凱旋帰国”は国民的ニュースとして大々的に報道された。それ以降、ファーウェイの企業活動の熱量は明らかに上昇している。B2B事業では「煤砿」「智慧公路」「海関と港口」「智能光伏」「数居中心能源」の“5軍団”を編成、今後の狙いを明確化した。

スマホ関連でも話題は豊富だ。ファーウェイから分離独立した、かつてのサブブランド栄耀(Honor)が、第3四半期になり中国市場で急速にシェアを拡大した。さらに10月中旬、海外向けスマホにGoogle搭載が可能となった。これは大きな追い風である。

また、ファーウェイ製品以外なら搭載可能なKirinチップを、香港メーカーのスマホに供給した。これも今後の動向を占うトピックだ。

状況は刻々と変化する。もはや孟副会長の拘束理由など誰も覚えていないだろう。米国が対中制裁の看板を引っ込めることはなさそうだが、現実は非常に流動的で、先行きは読みにくい。細かな情報にも十分な注意を払いつつ、ジャッジと行動は迅速に行いたい。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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