中国で密かなブーム「ネット遺言状」、ただし法的効力なし―中国メディア

Record China    2014年5月20日(火) 18時23分

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19日、武漢市で医療業界に身を置く楊氏は昨年11月、聞いたこともないウェブサイトからの電話を受けた。電話の相手は、「2カ月前に交通事故で亡くなられた奥様が、ご主人に『ネット遺言状』を残しておられました」と彼に告げた。写真は中国の墓地。

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2014年5月19日、武漢市で医療業界に身を置く楊(ヤン)氏は昨年11月、聞いたこともないウェブサイトからの電話を受けた。電話の相手は、「2カ月前に交通事故で亡くなられた奥様が、ご主人に『ネット遺言状』を残しておられました」と彼に告げた。新華網が伝えた。

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楊氏は「電話を受けた時は本当に驚いた。その後、彼らから受け取ったアカウント番号と暗証ナンバーを使って遺言状の内容を見てみると、亡くなった妻が銀行口座情報、淘宝モールのアカウント番号と暗証番号などを私に遺してくれていることが分かった。私はこのウェブサイトにとても感謝している。この遺言状のおかげで、亡き妻についてより深く理解できたし、多くの重要な現実的な事柄も妻から引き継ぐことができた」と話した。

楊氏の奥さんが生前利用していたのは、中国では出来たばかりの「ネット遺言状」を呼ばれるサービスだ。同サービスの内容紹介によると、「ネット遺言状」は航空機の「ブラックボックス」にも似た情報保管箱のようなものだという。ユーザーは個人の重要情報をこの保管箱に入れ、「指定連絡人」を特定する。万が一ユーザーが死亡した場合、運営サイトはこの箱に入ったすべての情報を指定連絡人に伝える。

楊氏が連絡を受けたウェブサイトの統計データによると、2009年の創設以来、ユーザー数は30万人を上回った。サイト創設者の李佳(リー・ジア)氏はサイト開設に至るまでの経緯について、「飛行機で雲南省に行った時に、サイトを立ち上げるヒントを得た。その時、乱気流に巻き込まれ、飛行機が激しく揺れ、墜落するのではないかと一瞬思った。危険なことが何も起こらない平常時に、万が一の時に備えて、私は何も残しておらず、何の対策も講じていなかった。緊急事態に見舞われた時、大切な人に言っておくべき事項や自分の気持ちなどを、形にして残しておかなければならないと強く思った」と述べた。

サイトで紹介されている「サービスの流れ」によると、ユーザーは、「アクセス間隔(次のアクセスまでの期間)」を設定しなければならない。その期間内にユーザーが1度も同サイトにアクセスしなければ、サイト側はユーザー本人に連絡を取る。その時、もし本人と連絡が取れない場合は、指定連絡人に連絡を取る。その時、ユーザーが死亡していることが判明すれば、指定連絡人はユーザーの死亡証明書あるいは所轄の派出所が発行する関連証明書をサイト側に提出する。その後、遺言状の内容が指定連絡人に引き渡される。

李氏は、「私は自分が考え出したサービスを大変誇りに思っている。私自身、指定連絡人に連絡が入る日が訪れることなど望んでいないが、その日が来れば、その人への思いやりや心配りを形にしたい」と話した。

しかし、このようなサービスを疑問視する人もいる。これに関する論議が中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で盛り上がった時、「支持しない」という意見の人が割と多かった。「ネット遺言状は法的保護の対象とはならない上、安全性についても非常に疑わしい」というのがその理由だ。

あるネットユーザーは、「この種のネット遺言状はまともに検討すべき対象ではない。結局は法的保護は得られず、安全性も保障されない。もしハッカーがサイトに侵入し、遺言状の中身を書き換えても、誰にもわからない。極めて厳粛な遺言状が中途半端な気持ちで取り扱われることは断じて許されるべきではない」と投稿した。

同サイトは、「ユーザーのデータとプライバシー保護」を名目に、北京の具体的なオフィス所在地について明らかにせず、オフィスに行って直接取材したいという記者の申し出に対してもノーコメントだった。

広東創基弁護士事務所の趙紹華(ジャオ・シャオホア)弁護士は、「法律が定める5種の遺言タイプには、ネット遺言状は含まれていない。その形式が法律の規定を満たしていないだけではなく、遺言状そのものの真偽についても判断が難しい。このような遺言状から紛糾が生じる可能性は極めて高い」との見方を示した。

その一方で、趙弁護士は「残された人に気持ちを伝える、情報を保管する、などの点から見ると、このサイトは一部の人々のニーズに完全に見合うものだ。もっとも運営サイトがユーザーのプライバシーを保護する上で、ある程度の技術力を備えていることが前提条件だが」と指摘した。(提供/人民網日本語版・翻訳/KM・編集/武藤)

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