ドイツメディアのドイチェ・ベレは11日、香港で同日、改正「電影検査条例（映画検査条例）」が施行された話題を取り上げた。記事は、映画の上映前の審査員は「中国を批判するシーンが絶対に出現しないようにせねばならない」ことになると紹介した。

同条例の施行により、映画作品は上映前に、香港国家安全維持法に抵触する部分がないか、より厳しく審査されることになった。

香港政府は同件について、「映画が国家の安全あるいは安全の維持に危害をもたらす可能性があるならば、映画審査員は、上映は不適当との結論を出さねばならない」、「審査員は映画中に国家安全に危害を加える犯罪や国家安全を維持するための特区（香港特別行政区）の行為や活動を損ねる可能性がある描写や表現などを注意深く気に留めねばならない」などと説明した。

香港商務及経済発展局は「映画審査制度は、個人の権利と自由の保証および合理的な社会的利益の確保の間のバランスに基づいて構築されている。映画上映についての発表の自由などの基本権利の享受は尊重されねばならないが、同時に法で定められた合理的な目的を達成するために必要な規則によって制限される」と表明した。

記事は、「香港では2019年、逃亡犯条例改正案反対運動が長期にわたり続き、暴力的衝突も発生した。中国政府は20年に香港国家安全維持法を打ち出し、民主化運動を挫折させた。今回の『映画検閲条例』の改正は、香港当局が中国政府に協力して定めた、反中感情や異論を封じ込めるための最新の措置だ」と評した。

香港ではすでに、逃亡犯条例改正案反対運動を描いたドキュメンタリー映画が香港国家安全維持法に違反しているとして、テレビでの放送が禁止された事例なども出ている。

記事は、「香港映画にはかつて、百花斉放の時代があった。文化への重要な影響力があった」と指摘。具体的には「1970年代には、香港のカンフー映画が、中国のカンフーを西側諸国の観衆の視野に入れた」、「80年代から90年代にかけても、香港映画は映画監督や俳優がハリウッド入りするステップボードだった」と論じた。

記事はさらに、「香港には現在も多くの映画関連会社があり、多くの著名な映画監督の出身地であるなど、香港の映画産業は力強く発展している」と紹介した上で「しかし今では、アジアの映画市場は徐々に、中韓両国のコストをかける大作映画に主導されつつある」と指摘した。

記事は最後の部分で、「香港の映画審査機関は従来、中国中央より寛容な審査の態度を採用していた。中国中央は映画の上映許可について、厳格な制限を設けてきた」と改めて論じた。（翻訳・編集/如月隼人）