【観察眼】ゾウの北上を「野次馬見物する」以外に何ができるか

CRI online    2021年6月4日(金) 18時30分

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野生のアジアゾウが今までの生息地を離れ、北上を続けていることが注目されている。

このほど、野生のアジアゾウが今までの生息地を離れ、北上を続けていることが注目されている。アジアゾウは中国の一級重点保護野生動物で、主に雲南省の西双版納(シーサンパンナ)、普洱、臨滄の三地域に分布する。地元では、30数年の救助と保護を行った結果、アジアゾウの数は1980年代初期の193頭から現在の300頭にまで増えた。今回北上するのはラオスやミャンマーと国境を接するシーサンパンナ国家級自然保護区内に生息していた野生アジアゾウの群れである。当初の群れは合わせて16頭で、北上が始まったのは昨年3月に遡る。ゾウは太陽河自然保護区を沿って北上し、普洱市に入り、1頭の赤ちゃんゾウの誕生後は玉渓市へ移動。2日には昆明市の郊外に入った。

野生アジアゾウの「家出」の原因について、リーダーが迷子になったことやエサ不足、太陽活動の異常により移動の本能が発動したことなど、ネットでは様々な憶測があったが、中国野生動物保護協会の厳詢チーフエンジニアは、慌ただしく北上したようで、リーダーには何らかの問題が起こったようにみられるとの見解を示した。

この群れのゾウが移動する過程において、地元では「謹んで世話を見る」と言っていいだろう。一部のネットユーザーからは「ゾウの観光ツアー」と揶揄されている。人々のこのような姿勢の裏には、動物保護意識の向上により動物、特にアジアゾウのような保護動物には害をもたらしたくないといういきさつがある。したがって、今回の対応の中心は「なるべくゾウと人間ともに傷害をもたらさないこと」だった。ゾウが人出の多い地域に入ろうとする際、障害物や食べ物などで適切な場所へ誘導し、人出の少ない場所では、警報を出して住民の疎開を呼びかける方法を取っている。

実は、今回は地元住民と野生ゾウの初めての近距離コンタクトではない。雲南省生息のアジアゾウが分布する11の自然保護区のうち、10保護区は森林生態系保護パターンに属し、保護の拡大により森林の林冠密度が高まったが、アジアゾウの食べ物は逆に少なくなった。そのため、ゾウが保護区を出て、畑や村に入り、農作物を食べたり、家屋を壊したり、人にけがをさせたりし、ひいては人の死を招くこともあった。これを解決するため、シーサンパンナや普洱などアジアゾウの出没の多い地域では、一部の土地を手配して「野生ゾウの食堂」を設け、アジアゾウが好む食べ物のトウモロコシ、サトウキビ、バショウなどを栽培している。普洱市ではアジアゾウ保護に関する長期計画が打ち出され、アジアゾウの補給用の食べ物の栽培、フェンス建設、太陽灯の設置などを推進すると共に、人力とドローンによるモニタリングを強化して、即時にゾウの到来を周辺住民に知らせることも含まれている。また、保護計画には野生動物の保護費の投入と野生動物による一般損害賠償責任保険の枠の向上も含まれ、経済作物の補償基準は市場価格と同等、死者が出た場合、2016年の20万元から現在は60万元に引き上げるなど定めている。

人間と動物は調和を取りながら共に生きる関係にあるが、決して「混居」ではない。最も理想的なのはお互いに一定の距離をおいて関与しないことだ。近年、野生動物が人間の居住エリアに入ることが多々見られる。最近でも、アムールトラ、ユキヒョウ、イノシシが村に入る報道があった。これらの保護動物がまだ見られることに歓びを感じる一方、環境容量や生物多様性保護、人間の自然との付き合い方などの面で多くの課題に直面していることも感じさせられる。(CRI日本語部論説員)

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