今年も話題沸騰のライブコマース、TikTokと快手は前年比2倍の計画、当局は規制強化へ

高野悠介    2021年5月17日(月) 18時50分

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中国のライブコマース観衆は30億人、視聴回数は延べ60億回、新しくデビューしたライバーは1118人、ライブ回数は80万回、新商品は45万件に上ったという。

今年に入っても中国では、ライブコマース(直播電商)の話題に事欠かない。iiMediaによれば2021年2月、中国のライブコマース観衆は30億人、視聴回数は延べ60億回、新しくデビューしたライバーは1118人、ライブ回数は80万回、新商品は45万件に上ったという。小売業の主役となりつつあるライブコマース。最新の動向から、今後の展開を占ってみよう。

■5年間で63倍の急成長…淘宝、抖音(TikTok)、快手の3強

ここ5年間のネット通販売上高(中商情報網)とライブコマース売上高(iiMedia)の推移を比べてみよう。ネット通販全体は1.9倍なのに対し、ライブコマースは63倍に激増している。

2017年…7兆1751億元 190億元

2018年…9兆0065億元 1330億元

2019年…10兆6300億元 4338億元

2020年…11兆7601億元 9610億元

2021年…13兆7593億元 1兆2012億元

また、2021年3月のライバー別売上トップ50が発表され、トップ3は以下の通りとなった。

1位 薇[女亜] 34億元 淘宝

2位 辛巴 21.5億元 快手

3位 李佳[王奇] 17億元 淘宝

トップの薇[女亜]は、日本円で約574億円を売った。これを12倍すると、従業員2.9万人のイトーヨーカドーの年間売上の約70%だ。3月は、盤石だった薇[女亜]、李佳[王奇]の淘宝直播2トップに、快手の辛巴が割り込み、話題となった。辛巴は後述するトラブルからの復活である。トップ50では、淘宝16人、抖音12人、快手は22人だった。その他、あらゆるデータが、淘宝、抖音、快手の3強に集中している。

■抖音・快手…2倍目標でアリババを捉える

アリババの2020年の全体GMV(成約総額)は18兆6500億元、そのうち2016年にスタートしたライブコマース「淘宝直播」は4000億元を超えた。抖音の全体GMVは5000億元、快手は4000億元とアリババに比べればまだまだだ。しかし、ライブコマースに限れば、もう目前に迫っている。

経済メディア「晩点」によれば、今年の抖音のGMV目標は、1兆元(約16兆9000億円)である。そのうち自前のライブコマースプラットフォーム「抖音小店」で40%、4000億元を達成する計画だ。抖音小店への出店者は、抖音小店だけでなく、抖音、抖音火山版、西瓜視頻、今日頭条など、バイトダンスの超有力アプリを、販促に活用できるという。抖音だけでもユーザーは6億人、大きなアドバンテージだ。目標はブランドや、優良産業からの出店を募り、1億元店を1000店以上にすることだ。

快手の2021年、ネット通販GMV目標は、8000億元(約13兆5000億円)と、やはり昨年の2倍に設定した。そのうち60%、4800億元をライブコマース「快手小店」での達成を目指す。快手は昨年5月、京東と戦略提携した。出店者は自社商品に加え、京東の直営商品をライブすることも可能となった。目標は、ブランド品の構成比を70%、(昨年は50%)に引き上げることにある。快手ユーザーは、抖音には劣るが4億人いる。これらのユーザーに高品質の商品と、消費体験を提供していくという。

■規制強化の流れ…新法を施行

ネット通販の主流になりつつあるライブコマースだが、数々の問題点が浮上している。ニセモノ商品の横行、虚偽宣伝、アフターサービスの欠如などに“遭遇”した消費者は多い。そして最大の障害は、ライブコマースの責任主体が不明確なことにある。“三大主体”のプラットフォーマー、商品経営者、ライバーにとどまらず、MCNなどその他の関係者が複雑に絡み合っている。国家市場監管総局は2020年11月、指導意見を公布し、“相関主体”にも法律責任があることを明らかにした。

象徴的事例となったのは、“辛巴燕の巣事件”である。トップライバーの1人、辛巴は10月下旬、高級食材、燕の巣を使った飲料のライブを行った。

すると翌11月中旬、某ユーザーから、燕の巣成分はなく、大部分は砂糖水だ、という指摘が寄せられた。調査の結果、実際に燕の巣成分はほとんどなかった。辛巴は11月27日に声明を出し、誇大広告を認めた。12月、辛巴には90万元、発売元の広州融●貿易(●は日の下に立)には200万元の行政処分が下った。

こうした流れを受け、「網絡直播営銷管理辯法」が5月末から施行される。違反したライブコマース運営者に対し、警告、機能制限、ライブ中止、アカウント抹消、再登録禁止などの措置をとる。同時に同法は、ネットワーク管理者に対し、ライバーアカウントの登録と抹消、情報管理、営業規定、未成年者保護、消費者権益保護、個人情報保護、ネットとデータの安全、に関する規範の確立を求める。

■抖音・快手が優位

当局は「網絡直播営銷管理辯法」について、ライブコマースという新分野の発展を目指すものであり、“百利あって一害なし”と述べている。とはいえ実際には規制強化に違いない。規制との整合性を保ちながら、ライブコマースの高成長は続くのだろうか。

iiMediaによれば、ライバーは職業型の有名ライバーによるライブから、出店者が主体的にライブコマースを運営する時代となりつつあるという。素人の工場長や商店主が直接ライブを行うイメージだ。淘宝直播は、薇[女亜]、李佳[王奇]を始めとする、スターライバーの活躍に依存する体制だった。それが国民総ライバー時代となり、大量の投稿者を持つ、抖音・快手に、有利に働き始めた。

しかし膨大な数の投稿者が一斉にライブコマースに進出すれば、問題は増えざるを得ない。抖音・快手も強気の目標一辺倒では、反動が大きそうだ。新法の運用が注目される。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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