TikTok運営のバイトダンス、断捨離の一方で生活総合サービスを構築、ターゲットは美団か

高野悠介    2021年3月18日(木) 22時40分

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TikTokを運営するバイトダンスの話題が途切れない。米国での集団訴訟9200万ドルで和解、事業の断捨離、生活総合サービスで「美団」に挑戦など、目を引く見出しが並ぶ。かつてのアリババ並みの注目度だ。

抖音(海外版・TikTok)を運営する字節跳動(バイトダンス)の話題が途切れない。直近でも、米国での集団訴訟9200万ドルで和解、事業の“断捨離”、生活総合サービスで「美団」に挑戦など、目を引く見出しが並ぶ。かつてのアリババ並みの注目度だ。それらの記事から断捨離と生活総合サービスを中心に、今後の動向を探ってみよう。

■設立8年で世界的企業に成長…トランプ前米大統領の標的に

2020年3月、バイトダンスは設立8周年を迎えたのを機に、創業者・張一鳴はグローバルCEOに就任した。国内事業とは距離を置き、世界市場に専念するはずだった。しかし7月末以降、TikTokに逆風が吹く。インドでは利用禁止、米国ではトランプ前大統領に米国事業の売却を迫られた。

しかしインドを除けば、環境は改善傾向にある。欧州では従業員がこの半年で1600人から3000人に増加した。中心はロンドンで850人が働く。2012年2月、世界のTikTokダウンロード数は5600万、米国でも順調だ。

国内では、ニュースメディア・今日頭条、ショートビデオ・抖音の看板事業以外へ、積極的に進出した。ネット通販、教育、ゲーム、ビジネスツール、モバイル決済などである。アリババの支付宝、テンセントの微信支付を追い、明らかにスーパーアプリを目標している。

大手証券会社の推測によれば、バイトダンスの2020年の営業利益は70億ドルとみられる。前年40億ドルの1.8倍に拡大した。広告収入を中心に絶好調である。今年度中の上場もうわさされている。

■張一鳴の断捨離…ハード縮小

そんな中、テンセント系メディア・騰訊網は、「張一鳴の断捨離」という記事を掲載した。それによれば、上場の噂に呼応するかのように、事業整理に創業者・張一鳴が大ナタを振るっているという。

2021年1月に以下のサービスが停止された。

・有料知識提供プラットフォーム「好好学習」の運用を停止。 ・問答プラットフォーム「悟空問答」の運用を停止。 ・買収した「堅果手機」のスマホ事業を暫定的に停止、スマホやモニターの研究・開発は行わないと表明。スマホ事業は教育関連のハードウエア事業に吸収。

■生活総合サービスへの野心…美団を目標

その一方、バイトダンスは同じ1月に、内部呼称“新業務創新団隊”を設立させた。騰訊網は別記事で「バイトダンス、生活総合サービスへの野心隠さず」とも伝えている。バイトダンスは2018年以降、生活総合サービスへの布石を打ってきた。今年は、本腰を入れて取り組む。標的は、生活総合サービスの「美団」だ。

美団は2010年、共同購入サイトとしてスタート。今では、飲食店口コミ、フードデリバリー、生鮮O2O、配車アプリ、シェアサイクル、シェア電動アシスト付き自転車、ホテル旅行、映画予約、娯楽など200以上のサービスを全国2800の市、県、区で展開している。看板事業のフードデリバリーは、ライバル餓了蘑(アリババ系)を大きく引き離し首位に立つ。この強大な美団に挑もうというのだ。

■自前の通販プラットフォーム構築…アリババに挑戦

まずネット通販の自前プラットフォーム構築を目指す。この部門は抖音のライブコマースを中心に発展してきたが、淘宝直播(アリババ)や快手には遅れをとっていた。それを取り戻すため、1800人に拡大したネット通販の研究開発部門と運営部門を上海へ移転する。さらに杭州市のアリババ淘宝城の対面にサブチームを配置、挑戦の意思を明らかとした。そして2021年GMV(成約総額)目標を4000億元と前年の2倍に設定した。

中国ネット界では若者を中心に、特定の製品を推奨して、グループでシェアし、他人の購入意欲を刺激する“種草”が流行している。自らの提案が、首尾よく成功すれば、大きな達成感を得られる。若者文化の新潮流だ。そのためのプラットフォームとして選ばれる必要がある。それも「淘宝」「快手」「小紅書など」強敵を差し置いてである。簡単ではないが、何しろ抖音には6億のユーザーがいる。新しい風を起こすことは不可能ではないだろう。

■オフライン店の取り込み

さらに、2021年に入り、オフライン店舗へ大攻勢をかけ始めた。江蘇省の例では南京市と無錫市に拠点を建設し、位置情報サービス、生活総合サービスの営業を進めている。抖音の企業アカウントへの登録と運営をサポートしていく。オフライン店舗は、理髪店、美容院、レストラン、ペット関連などサービス業が多い。

某レストランでは、2021年2月、バイトダンスから提携の“招待状”が届いた。企業アカウントの“装飾”、共同購入への参加、O2O化、インフルエンサーの紹介、優秀な店には動画撮影サービスも行う。いずれも費用負担はないため、参加店舗は順調に増加している。生活総合サービスへの本気度を感じさせる。

■三方を敵に囲まれるが

バイトダンスの張一鳴(1983年生まれ)と美団の創業者・王興(1979年生まれ)は、今や中国IT界を代表する経営者だ。しかも2人は同じ福建省・龍岩市の出身である。さらに2007年には、王興の創業した飯否網(ツイッターのマネサイト)で一緒に働いていた。手の内はわかっている、ということだろうか。

これまでバイトダンスの主敵はテンセントとされていた。実際に両者間では訴訟合戦がやまない。そしてネット通販でアリババ、さらに同郷の王興まで標的に加えた。三方みな敵である。今年もIT界の主役を張るのは間違いなさそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介 1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。 著書 2001年「繊維王国上海」東京図書出版会 2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会 2007年「中国の人々の中で」新風舎 2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle

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