愛知県の中部国際空港が中国の空港を見習ってほしいたった1つのこと

関上武司    2021年3月13日(土) 11時20分

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中部国際空港は地元愛知県の観光地のPRが乏しいので、中国の空港を見習ってほしい。

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結論から先に述べると、中部国際空港は地元愛知県の観光地のPRが乏しいので、中国の空港を見習ってほしい。中部国際空港を利用したことがない読者は「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、同空港は主に中華圏からインバウンドを推進するために昇龍道プロジェクトをプッシュしている。ちなみに昇龍道とは中部・北陸地方(富山・石川・福井・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀)を「龍」に見立てた観光ルートとなっている。

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筆者が海外から帰国して空港の入国審査場までの通路を眺めると、昇龍道の解説パネルと無数の三重県松阪市の宣伝ポスターが貼られていた光景には疑問を感じた。愛知県の写真は名古屋城と名古屋市栄にあるオアシス21のたった2枚(以前は紅葉で有名な足助の香嵐渓の写真もあった)だけだったからだ。

別に愛知県の空港が他県の観光PRをすることは否定しないが、筆者が見たところ、中国の空港は他の地域の観光PRはしていない気がする。例えば、山西省太原市の太原武宿国際空港の場合、到着してから入国審査場までの通路には山西省の偉人(霍去病、関羽、司馬光といった人物)や地元の食事といった文化の紹介パネルが展示されていた。ゴーストタウンで有名な内モンゴル自治区オルドス市のオルドス空港は、到着すると構内にモンゴル族の衣装を着用したマネキンの展示は好印象だった。空港の目の前に廃墟ビルがあったので仰天させられたのだが…。

中部国際空港の構内にも戦国時代の甲冑が展示されているのだが、キャッチコピーは「このまち、まるごと、古戦場 関ヶ原町」となっていた。関ヶ原町は岐阜県である…。戦国時代には愛知県で桶狭間の戦い、長篠の戦い、小牧・長久手の戦いといった有名な戦いがあり、古戦場になっているのだが、そういった地域のPRは確認できなかった。

以前は同空港1階に中部武将館という施設があり、中部地方の武将の紹介や甲冑が展示されており、他県の友人からも好評だったが、いつの間にか閉鎖され、コンビニになっていた。そもそも同空港へ鉄道で訪れた旅行客は通常、3階のチェックインカウンターに向かい、帰国の際は2階から駅へ移動するので、中部武将館の認知度は低かったのかもしれない。

上海浦東国際空港のターミナル2出発ロビー90番ゲート近くには浦東機場博物館という展示スペースがある。小規模なので、フライトの待ち時間を潰すには最適で、空港側のこういった心遣いには嬉しくなる。中部武将館も出発ロビーで運営するべきではなかったのだろうか?

3階のチェックインカウンター周辺で目立つのは、SAMURAI×NINJA Airportといったキャッチコピーで、忍者のマネキンが多数、天井からぶら下がっていたりする。忍者といえば、三重県の伊賀市とかを連想し、愛知県というイメージではない。

山西省運城市は関羽の出身地ということで、鉄道駅の運城站には関羽の騎馬像、高速鉄道駅の運城北站には関羽の立像が屹立している。しかも市内の運城張孝空港は運城関公(関羽)空港とも呼ばれている。いっそのこと、中部国際空港も名前を信長・秀吉・家康空港にしてはどうだろうか?

愛知県は製造業が活発で、人口が多いことから、生活しやすい土地柄と言える。しかし県内に世界遺産はなく、修学旅行の旅行先として人気はあまりない。中部国際空港は使い勝手はいいが、地元の観光PRが下手なのはそういった事情が反映されているようだ。

愛知県のお城は名古屋城だけでなく、国宝の犬山城や岡崎城も有名ではないだろうか?県内には神社仏閣も多く、県民にも意外と知られていないのが、大仏が多いことだ。名古屋市には名古屋大仏、北大仏、江南市には布袋大仏、新生大仏(犬山市)、聚楽園(しゅうらくえん)大仏(東海市)、刈宿の大仏(おおぼとけ)(西尾市)、薬師如来涅槃像(岡崎市)といった大仏が県内にあるので、「意外と大仏が多い愛知県」といったキャッチコピーができる。

日進市の五色園や犬山市の桃太郎神社は仏教説話や物語の登場人物を等身大以上のコンクリ像で再現しているので、インパクト大だろう。小牧市の田縣(たがた)神社で毎年3月15日に開催される豊年祭は巨大な男根をかたどった神輿で有名で、外国人観光客も大勢、訪れる。ちなみに豊年祭は広東省韶関市にある中華性文化博物館でも紹介されている。

検索をすればわかるが、愛知県内にはテーマパーク・動植物園・水族館も充実しており、ジブリパークも建設中だ。名古屋では毎年、世界コスプレサミットも開催されているので、そういったPRを空港内で見た記憶がないのも愛知県民としては理解ができない。

今年の2月に出版された『名古屋の富士山すべり台』牛田吉幸著・大竹敏之編集 風媒社を読むと、名古屋市内の公園には富士山のような形状をしたすべり台(正式名称はプレイマウント)が非常に多く、他県ではほとんど見られない遊具が紹介されている。空港内にキッズスペースを設けて、小型化した富士山すべり台を設置すれば愛知県のPRにならないだろうか?突拍子もないことも述べてみたが、中部国際空港はもう少し地元愛知県の観光PRに力を入れてもらいたいし、中国の空港の良い部分も見習ってほしいところだ。

■筆者プロフィール:関上武司

1977年の愛知県生まれ。愛知大学経営学部卒。中国で留学や駐在員としての勤務経験あり。日本や中国のB級スポットを紹介するブログ・軟体レポートの管理人。中国遊園地の取材で中国の全省、全自治区、全直轄市へ訪問。会社員の傍ら、「中国遊園地大図鑑」シリーズを執筆し、メールマガジンのロードサイダーズ・ウィークリーにて「ROADSIDE CHINA 中国珍奇遊園地紀行」を連載中。このほかイベントも開催している。

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